財務・経営改善

債務超過とは|銀行が見る「実質」の計算と解消に何年かかるかを元銀行員が解説【2026年】

債務超過とは|銀行が見る「実質」の計算と解消に何年かかるかを元銀行員が解説【2026年】のカバー画像
池田計画合同会社

公開日:2026年10月3日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

債務超過だと、もう銀行からは借りられないのではないか。決算書を見て、そう不安になる社長さんは少なくないと思います。ただ、不安の正体をはっきりさせるには、自社が実質でいくらの債務超過なのか、何年あれば抜け出せるのかを数字にしてみる必要があります。

結論から言えば、債務超過とは、会社の負債の合計が資産の合計を上回り、純資産がマイナスになっている状態のことです。資産をすべて売っても借金を返しきれない、という意味になります。ただし銀行は決算書の数字をそのまま使わず、回収できない売掛金や含み損を差し引いた「実質」の純資産で判断します。帳簿上は債務超過でなくても、実質では債務超過という会社は珍しくありません。

私は元銀行員で法人融資の審査に携わり、いまは中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨を中心に融資や経営改善のご相談に乗っています。この記事では、定義や赤字との違いといった基本に加えて、解説記事の多くが触れていない2つの点を扱います。銀行が実質の純資産をどう計算し直すのか(計算例つき)と、債務超過の解消に何年かかるのかを、公的な基準から逆算する方法です。

債務超過とは?資産をすべて売っても負債を返しきれない状態のこと

債務超過かどうかは、貸借対照表(バランスシート)の右下、純資産の部の合計額を見れば分かります。ここがマイナスなら債務超過です。計算式にすると次のとおりです。

純資産 = 資産の合計 − 負債の合計(これがマイナスなら債務超過。マイナスの金額が「債務超過額」)

法律の定義も同じ考え方です。破産法第16条は、法人の破産手続開始の原因として支払不能のほかに債務超過を挙げ、その中身を「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」と書いています。

よく混同されるのが、利益剰余金(繰越利益剰余金)のマイナスです。利益剰余金がマイナスでも、資本金がそれ以上あれば純資産はプラスに残るため、債務超過にはなりません。

貸借対照表の状態例(単位:万円)債務超過か
利益剰余金がマイナス、純資産はプラス資本金1,000/利益剰余金△600/純資産400債務超過ではない(欠損の状態)
利益剰余金のマイナスが資本金を上回る資本金300/利益剰余金△800/純資産△500債務超過(債務超過額500)

資本金が少ない会社ほど、数年の赤字ですぐに純資産がマイナスへ届きます。創業のご相談で「資本金は1円でも法的には問題ありませんが、金融機関から見ると多いほうが安心材料になります」とお伝えしているのは、このためです。

赤字と債務超過は何が違うのか?黒字なのに債務超過の会社があるのはなぜか?

赤字は1年間の成績(損益計算書)の話で、債務超過はその年度末時点の財産の状態(貸借対照表)の話です。見ている書類が違います。資金ショートは、さらに別の現金の話です。

状態見る書類意味すぐ倒産するか
赤字損益計算書その年の費用が収益を上回ったしない
債務超過貸借対照表過去の赤字の累積などで純資産がマイナスしない(資金が回る限り事業は続く)
資金ショート資金繰り表支払期日に払う現金が足りない手形の不渡りや支払停止に直結する

債務超過は過去の積み重ねの結果なので、今期が黒字でも、過去の赤字が残っていれば債務超過は続きます。黒字に転じてから純資産がプラスに戻るまでには、累積した赤字の分だけ利益を積む時間がかかります。後半で計算する「解消に何年かかるか」は、この時間のことです。

債務超過でも会社が潰れないのはなぜか?

会社が止まるのは、支払いができなくなったときです。債務超過は財産の状態を表す言葉なので、借入金の返済や仕入代金の支払いが続けられている限り、事業はそのまま続きます。

法律上も、債務超過になったら自動的に破産するわけではありません。破産法では、破産手続は債権者または債務者の申立てがあって初めて裁判所が開始を決定する仕組みです(第15条・第18条)。実際、中小企業には債務超過のまま長年営業を続けている会社がたくさんあります。社長個人から会社への貸付(代表者借入金)が負債に積み上がり、それが債務超過の大部分を占めている、という形が典型です。

ただし「潰れない」は「問題がない」という意味ではありません。債務超過の影響は、主に新しくお金を借りるときと返済条件を見直してもらうときに表れます。次の節で、銀行の側から見た姿を説明します。

銀行は債務超過をどう見ているのか?決算書の数字ではなく「実質」で見直す

銀行は、決算書の純資産をそのまま使いません。資産の中に、実際には売れない・回収できないものが含まれていないかを確認し、その分を差し引いた「実態の貸借対照表」を作って判断します。銀行の審査では、損益計算書だけでなく勘定科目内訳明細書で売掛金・在庫・貸付金の中身を確認します。

具体的な計算例でお見せします。帳簿上は純資産がプラス300万円の会社です。

項目金額(万円)銀行が見直す理由
決算書上の純資産+300出発点
長期間動いていない在庫△300売れる見込みが乏しい
回収の見込みがない売掛金△200取引先の倒産・長期滞留
事業用の土地の含み損△600帳簿価額より時価が低い
保険積立金の解約返戻金との差額+100帳簿より実際の解約返戻金が多い
実質の純資産△700実質債務超過
(参考)代表者借入金1,000万円を資本とみなした場合+300返済を急がない社長からの借入を自己資本に近いものとして扱う

決算書だけを見れば健全に見える会社が、実態では700万円の債務超過、という結果になりました。逆に、最後の行のように社長からの借入金を自己資本に近いものとして足し戻すと、評価がもう一度ひっくり返ることもあります。

この「足し戻し」は、銀行が一律に認めるものではありません。中小企業庁の経営改善計画策定支援(405事業)のFAQは、実質的な債務超過の算定について評価方法の定めは特にないとし、資産・負債の修正は算定根拠を示して主要金融機関と目線を合わせるよう求めています。中小企業特性についても「加算可能」としたうえで(実務では、代表者からの借入金や代表者個人の資産を実態の評価に織り込むことを指して使われることが多い言葉です)、加算するかどうかは経営者個人の資産状況や保証・担保の状況も考慮して金融機関と相談して決める、という書き方です。同じ決算書でも、説明の材料をそろえるかどうかで実質の数字が動くということです。

なお、社長への貸付金(役員貸付金)は逆方向に働き、資産から差し引かれて実質債務超過の引き金になりやすい科目です。詳しくは役員貸付金とはで解説しています。実質の純資産が銀行内部の評価(債務者区分)にどうつながるかは、債務者区分とはにまとめました。

債務超過だと融資は受けられないのか?

債務超過であることだけで、融資が一律に断られるわけではありません。金融庁が金融検査マニュアルの廃止にあわせて2019年12月に公表した「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」は、過去の検査で当局が実質債務超過を重視して指摘を繰り返したことが金融機関の融資行動に影響したと振り返っています。そのうえで、破綻懸念先かどうかの判定においては、最終的に重要なのは貸倒れに至る可能性が高いかどうかであり、事業の成長性・将来性も勘案した実質的な返済可能性(将来のキャッシュフロー)を重視すべきだとしています。

同じ文書には、中小・零細企業の債務者区分について、財務状況だけでなく技術力・販売力・成長性、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を「総合的に勘案」して判断するとも書かれています。

とはいえ、実務の感覚で言えば、債務超過の会社に新しい融資を出すハードルは確実に上がります。審査側が知りたいのは「いくらの債務超過か」より、何年でプラスに戻せるのか、その間の返済は将来のキャッシュフローで本当に回るのかです。ここを数字で示せる会社と示せない会社で、結果が分かれます。

債務超過かどうかが条件に直接入っている制度もあります。たとえば信用保証協会の「事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度」では、経営者保証を外すための要件の一つが、直前決算で債務超過でないこと、または直前2期の決算で減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと、のいずれかを満たすことです(山梨県信用保証協会)。ほかの要件や保証料の上乗せは経営者保証を外すにはで整理しています。

債務超過の解消には何年かかるのか?「債務超過額÷5」で先に可否を判定する

解消までの年数に法律上の決まりはありません。ただ、金融機関との調整で事実上の物差しになっている公的な基準があります。中小企業庁の経営改善計画策定支援(405事業・通常枠)のマニュアル・FAQ(令和8年5月1日改訂版)は、計画に次の数値基準を含めるよう定めています。

  • 実質的に債務超過である場合は、計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目処に実質的な債務超過を解消する
  • 経常利益が赤字である場合は、同じ起点から概ね3年以内を目処に黒字に転換する
  • 計画の終了年度(原則として実質的な債務超過を解消する年度)に、有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下になる

この数値基準は2026年5月1日の改定で導入されたものです(中小企業庁「手引き・FAQ等を改定等します」)。業種特性などの合理的な理由がある場合の例外や、小規模企業者向けの特例も同じFAQに定められています。

この基準を自社に当てはめるときに、私がご相談の最初の5分でやっている計算があります。実質の債務超過額を5で割り、毎年必要な税引後の利益を出して、売上と並べるだけです。純資産を増やすのは、最終的に残る当期純利益だからです。

A社(先ほどの計算例)B社(実際にあったご相談を加工)
年商約1億円1億円前後
実質の債務超過額700万円約5,000万円
5年で解消するのに必要な利益(÷5)年140万円年約1,000万円
売上に対する割合約1.4%10%前後
判定黒字化の道筋が立てば射程内直近まで本業赤字の会社では立たない

B社は住宅関連の会社で、活性化協議会の担当者と案件を検討していたときのものです。年商1億円前後の会社が、本業赤字から一転して毎年1,000万円の利益を5年間出し続ける計画は、紙の上では作れても実行の裏づけがありません。その場で私は「このままでは夢物語になってしまう」と率直に申し上げました。

割り算を先にやる理由は、計画を作り込んでから基準に届かないと分かると、その工数がすべて無駄になるからです。しかも、届かない数字を努力目標として置いた計画を出すと、金融機関は履行状況を見て次の支援に慎重になります。届かないと分かったら、次の順で確認していきます。

  1. 例外や小規模企業者の特例に当てはまるか(区分の判定は自己判断せず、支援機関に確認する)
  2. 代表者借入金など、実質の計算で足し戻せる材料がないか(前の節の最終行)
  3. 資本性借入金の活用や、より長い期間での再生を前提にした計画に切り替えるか
  4. それでも届かないなら、事業の譲渡や整理を含めた出口を、資金が残っているうちに検討する

ここまでの割り算は、決算書が2〜3期分あればその場でできます。自社の債務超過額が実質でいくらになり、5年で戻すには毎年いくら必要か。その数字を一緒に出すところまでなら、初回無料の相談で十分お話しできます。

債務超過はどうやって解消するのか?手をつける順番

解消の方法は、純資産を増やすか、負債を減らすかのどちらかです。方法の一覧はどの解説記事にも載っていますので、ここでは実務で手をつける順番として並べます。

順番やること純資産への効き方と注意点
1実態の貸借対照表を作る純資産は変わらないが、すべての出発点。金融機関と同じ物差しで現在地を確認する
2利益を出せる体質にする(値上げ・不採算取引の見直し・固定費の削減)当期純利益の分だけ毎年増える。唯一の本筋で、他の方法はこれを補う役割
3遊休資産を売却して借入金を返す含み損のある資産は売却で損失が確定し、帳簿上は一時的に悪化する。実態の数字では既に織り込まれていることが多い
4代表者借入金の扱いを整理する(資本への振替・債務免除)帳簿上の純資産が増える。債務免除益への課税など税務の論点があるため、必ず税理士と進める
5増資(社長や第三者からの出資)出資額だけ純資産が増える。株主構成が変わる点に注意
6資本性借入金を活用する会計上は負債のままで、帳簿上の純資産は増えない。金融機関の実態評価で資本とみなすことができる

6番目は誤解の多いところです。金融庁の同じ文書は、十分な資本的性質が認められる借入金は、新規融資でも既存借入金の転換でも「負債ではなく資本とみなすことができる」としています。あくまで債務者の実態を把握する場面での扱いで、決算書の純資産が増えるわけではありません。仕組みと条件は資本性劣後ローンとはで詳しく説明しています。

返済が苦しく、利益を積む前に資金が尽きそうな場合は、順番が変わります。まず返済条件の変更(リスケ)で手元資金を守り、その期限を起点に計画づくりや他の支援を組み立てます。銀行に先に相談するのが怖いという場合は、金融機関との間に入って調整してくれる公的機関として、各都道府県に中小企業活性化協議会があります。計画の策定費用には405事業や早期経営改善計画策定支援の補助を使える場合があり、計画書の中身は経営改善計画書の書き方で解説しています。

融資の審査と補助金の審査は、目的も基準も別物です。この記事で扱った実質の純資産や解消年数は、あくまで融資・返済条件の場面の物差しです。共通しているのは、計画の数字に根拠があるかを問われる点だけだと考えてください。

よくある質問

個人事業主にも債務超過はありますか?

言葉としては使われますが、法人とは見え方が違います。個人事業主の決算書(青色申告決算書の貸借対照表)は事業用の資産・負債だけを載せたもので、事業と家計が一体のため、金融機関は自宅や預金など個人全体の資産・負債もあわせて返済力を判断します。事業の帳簿だけで債務超過かどうかを判断しても、融資の場面ではあまり意味を持たないことが多いと考えてください。

期末に社長が会社へお金を入れれば、債務超過は消えますか?

入れ方によります。社長が会社に「貸した」お金は負債(代表者借入金)になるため、現金と負債が同額増えるだけで純資産は変わりません。純資産が増えるのは、出資(増資)として入れた場合です。代表者借入金は、前述のとおり金融機関が実態の評価で資本に近いものとして扱うことはありますが、決算書上の債務超過は解消しません。

債務超過の会社でも、M&Aで売却や事業承継はできますか?

できないわけではありません。事業そのものに価値があれば、債務超過の会社でも買い手がつくことはあります。ただし株式の価格は低くなりやすく、借入金や経営者保証を誰がどう引き継ぐかが交渉の中心になります。株式譲渡か事業譲渡かで債権者との関係も変わるため、早い段階で弁護士・税理士を含めて段取りを組むことをおすすめします。

債務超過を解消すれば、すぐに融資の条件は良くなりますか?

決算書で純資産がプラスに戻れば評価は改善に向かいますが、一度の決算ですぐに条件が戻るとは限りません。金融機関はその利益が一時的なものか、続く体質になったのかを数期分で見るためです。解消の翌期も黒字を続け、計画どおりに進んでいることを試算表で定期的に報告していくと、評価の回復が早まります。


債務超過は、気づいた時点の金額よりも、何年で戻せるかの見通しが持てているかどうかで、金融機関との話の進み方が変わります。当社は決算書を審査する側にいた元銀行員として、実態の貸借対照表づくりから、解消年数の逆算、金融機関への説明の組み立てまでを一緒に進めています。まずは融資・資金調達の支援サービスをご覧いただき、無料相談はこちら(お問い合わせフォーム)からお気軽にご連絡ください。


監修:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査・経営改善支援に従事し、事業計画や決算を「審査する側」として100件超を見てきた経験を持つ。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県で融資・補助金・経営計画の支援を行う。本記事の制度情報は、e-Gov法令検索「破産法」第15条・第16条・第18条、金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(令和元年12月)、中小企業庁「経営改善計画策定支援〈通常枠〉マニュアル・FAQ」(令和8年5月1日改訂版)、山梨県信用保証協会「事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度」に基づきます(2026年10月3日確認)。個別の会計・税務処理は顧問税理士にご確認ください。

資金繰り・経営の数字のご相談はお気軽に

銀行に出す前の資金繰り表や計画の数字を、元銀行員・中小企業診断士がチェックします。初回のご相談は無料です。

無料相談はこちら