公開日:2026年7月10日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「銀行から経営改善計画書を出してほしいと言われたが、何をどう書けばいいのか分からない」「リスケ(返済条件の変更)をお願いしたいが、通る計画書と通らない計画書は何が違うのか」。業績が厳しくなった経営者から、こうしたご相談をよくいただきます。

結論から言えば、経営改善計画書とは、業績が悪化した企業が「現状・悪化の原因・改善策・数値計画」をまとめ、金融機関にリスケや追加融資を相談するために提出する書類です。体裁の良さよりも、数字に根拠があり、改善策が精神論になっていないか。ここを金融機関は見ています。

はじめにお断りしておくと、この記事で扱う経営改善計画書は融資・リスケの文脈の書類です。補助金の申請書とは目的も審査の考え方も別物です(融資は返済可能性を、補助金は政策的な意義や実現性を見ます)。両者を同列に語ると計画がぼやけるので、本記事は金融機関に「これなら支援できる」と思ってもらう計画書に絞り、元銀行員として融資を審査してきた側の視点で解説します。最後に山梨県で相談する場合の話も添えます。


経営改善計画書とは?なぜ銀行に提出するのか

経営改善計画書は、財務上の問題を抱えた企業が、金融機関の理解と協力を得て立て直しを図るための「再建の設計図」です。多くの場合、次のような場面で必要になります。

  • リスケ(返済条件の変更)を相談するとき。毎月の返済が重く、元金の返済を一時的に猶予してほしい、といった相談の裏付け資料として。
  • 追加融資を申し込むとき。業績が落ちているなかで新たに借りる場合、返せる根拠を示すために。
  • 取引金融機関から提出を求められたとき。決算内容が悪化すると、金融機関の側から計画書の提出を依頼されることがあります。

「経営改善計画」と「中期経営計画」「事業計画書」は何が違う?

ここは混同されやすいので、先に交通整理をしておきます。中期経営計画は「成長」を描く計画、経営改善計画は「立て直し」を描く計画。向いている方向が逆です。攻めの投資や売上拡大を語るのが中期経営計画なら、経営改善計画はまず出血を止め、返済できる体力を取り戻す道筋を語ります。攻めの計画の作り方は「中期経営計画の作り方」で別途解説していますので、成長フェーズの方はそちらをご覧ください。

また、金融機関はこの計画書を通じて「経営者が自社の状態を正しく把握できているか」を見ています。数字が悪いこと自体より、悪化の原因を経営者自身が説明できないことのほうが不安視されます。

経営改善計画書には何を書く?基本の構成

要点は、次の5つの要素をこの順番でつなぐことです。特別な様式はありませんが、中小企業庁が事例サンプル(原則版・簡易版)を、日本政策金融公庫が「経営改善計画書策定の手引」を公開しており、迷ったら公的なひな形に沿うのが確実です。

構成要素書く内容審査で見られる点
①現状分析会社概要・沿革・事業内容・過去数年の業績推移・借入と返済の状況自社を客観的に把握できているか
②悪化の原因なぜ業績が落ちたのか(外部環境か、内部要因か)を具体的に原因を正しく特定できているか
③改善策原因に対応した具体的な打ち手(誰が・いつ・何を・いくらで)実行できる具体性があるか
④数値計画損益計画・貸借対照表の将来像・資金繰り計画(通常3〜5年)数字に根拠があるか
⑤返済計画改善後のキャッシュフローで、いつ・いくら返済できるか金融機関が支援を続けられるか

この5つが一本の線でつながっていること、すなわち「①現状の課題」に対して「③改善策」があり、その効果が「④数値計画」に反映され、「⑤返済計画」の裏付けになることが、計画書全体の説得力を決めます。逆に、原因分析と改善策がかみ合っていない計画書は、どれだけ厚くても評価されません。

元銀行員が見る「通る計画書」と「落ちる計画書」の違いは?

ここが本記事の核心です。金融機関の担当者は、支店で計画書を受け取ったあと、本部(審査部門)へ稟議を上げます。つまり計画書は、目の前の担当者だけでなく、会ったこともない審査担当者にも読まれる前提で書く必要があります。審査する側にいた経験から、評価が分かれるポイントを3つに絞ってお伝えします。

1. V字回復の「絵に描いた餅」は、むしろ信用を落とす

意外に思われるかもしれませんが、楽観的すぎる計画は逆効果です。翌年から売上が急回復してすべて解決する、そんな計画を金融機関は信じません。過去に何度も「達成されなかった計画」を見てきているからです。

私が実務でお勧めしているのは、あえて厳しめの数字で作り、それでも回ることを示すやり方です。あるサービス業の再建をお手伝いしたとき、売上を保守的なラインで見積もり、「下振れしてもこの水準までは耐えられます」という余裕を計画に織り込みました。金融機関の反応は「慎重に見ている会社ほど安心して支援できる」というものでした。強気の数字より、下振れ耐性を見せた計画のほうが通りやすい——これは審査側にいた者としての実感です。

2.「気をつける」「徹底する」は改善策ではない

落ちる計画書に共通するのが、改善策が精神論になっていることです。「経費削減を徹底する」「ミスに気をつける」「営業を強化する」。こうした言葉は、誰が読んでも実行できるか判断できません。

たとえば「ミスを減らす」なら、なぜミスが起きるのか(手入力が多いのか、確認の仕組みがないのか、情報が共有されていないのか)まで掘り下げ、仕組みで起きにくくする打ち手に落とすことが必要です。個人の意思に頼る改善は、半年後に同じ結果を招きます。「気をつける」ではなく「◯◯という仕組みを入れ、△△で効果を検証する」。ここまで具体化して初めて改善策だと考えてください。

3. 数値計画は「経路別に分解」して根拠を示す

「来期は売上を2割上げます」だけでは、根拠になりません。売上目標は、経路別(既存取引先/新規/EC/店頭など)に分け、それぞれ「単価 × 数量」まで分解すると、一気に説得力が出ます。

たとえば月商の目標を、既存取引先でいくら(何社 × 1社あたり)、新規でいくら(何件 × 単価)と積み上げていく。この作業をすると、経営者自身も「その客数は本当に取れるのか」を冷静に検証できます。計画は、審査担当者を説得する前に、まず自分が納得できる数字になっているかが出発点です。

数値計画はどう作る?返済可能性を示す考え方

数値計画で金融機関が最終的に見るのは、たった一つ:「改善後のキャッシュフローで、この会社は返済を続けられるのか」です。ここを外すと、他がどれだけ立派でも支援は得られません。

返済の目安は「簡易キャッシュフローの7割」

返済可能性を自分でチェックする、実務的な簡便法があります。

  1. 簡易キャッシュフロー=営業利益+減価償却費を計算する(本業でどれだけ現金を生めるか)。
  2. そこから役員の生活費など必要な支出を引く。
  3. 年間の返済元金が、この簡易キャッシュフローの7割程度に収まっているかを見る(実務ではこの水準に収まるケースが多い目安です)。9割を占めるような計画は、追加融資はもちろんリスケの説明としても厳しくなります。

なお、この目安は今後の設備投資の状況によっても変わります。設備投資で明確な増収効果が見込め、その効果で返済できるなら一時的に7割を超える設計もあり得ますが、その場合も成長ストーリーは「努力すれば届く水準」にとどめるのが鉄則です。また、運転資金の必要額は季節変動の大きい業種ほど膨らむため、繁忙期の仕入・人件費の3か月分を一つの目安に、資金使途を明確に絞ると計画が締まります。

損益・資金繰り・貸借対照表の3点セット

数値計画は、損益計画(PL)だけでは不十分です。利益が出ていても資金が回らなければ会社は続きません。損益計画・資金繰り計画・貸借対照表の将来像——この3つをそろえ、特に資金繰り表で「月末残高がマイナスにならないか」を必ず確認してください。金融機関がいちばん恐れるのは、計画上は黒字なのに資金がショートする事態です。

経営改善計画書は自分で作る?専門家に頼む?費用は

結論として、金融支援(リスケ等)を伴う本格的な計画は、専門家と一緒に作ることをお勧めします。自社だけで客観的な現状分析と実現可能な数値計画を作るのは負担が大きく、金融機関との交渉も見据える必要があるためです。そして、その費用を公的に補助する仕組みが用意されています。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは

認定経営革新等支援機関(略して認定支援機関)とは、中小企業支援に一定の専門性があると国が認定した税理士・中小企業診断士などの専門家・機関のことです。下記の費用補助制度は、この認定支援機関の支援を受けて計画を作ることが条件になっています。

費用補助の2つの制度(2026年時点)

いずれも中小企業活性化協議会(各都道府県に設置された公的機関)の枠組みで、認定支援機関に支払う専門家費用の3分の2を負担してもらえます。

制度どんな場面か補助(専門家費用の2/3)
早期経営改善計画策定支援
(バリューアップ支援事業)
リスケ等は伴わないが、早めに資金繰りを見直したい段階計画策定支援:上限50万円
伴走支援:上限30万円
経営改善計画策定支援
(405事業)通常枠
リスケなど金融支援を伴う、本格的な立て直しの段階DD・計画策定支援:上限200万円
伴走支援(モニタリング):上限100万円
金融機関交渉費用:上限10万円

ポイントは、症状が軽いうちは「早期経営改善計画」、リスケを含む本格対応が必要なら「405事業」と、段階で使い分ける点です。なお、これらは返済不要の給付という意味では「補助」ですが、事業拡大のための補助金とは目的が異なります。あくまで計画を作るための専門家費用を軽くする制度だと理解してください。制度の名称・上限額・要件は改定されることがあるため、利用前に中小企業庁の公式ページで最新の内容をご確認ください(本記事は2026年7月時点の公表内容に基づきます)。

山梨で経営改善・資金繰りを相談するには?

まず一番大切なことをお伝えします。相談は、お金がまだ残っているうちにしてください。実務で最も多いのは、資金が尽きる直前に駆け込んでくるケースです。この段階では打てる手が限られます。逆に、早い段階で正直に数字を開示できれば、金融機関にとっても「問題を認識したうえで一緒に改善計画を作る」ほうが、突然「返せません」と言われるより遥かに対応しやすい。早期の正直な相談は、危機をチャンスに変えられます。

山梨県内で相談する場合、窓口はいくつかあります。取引金融機関そのものはもちろん、地域では甲府信用金庫をはじめとする信用金庫が、中小・小規模事業者に協力的な印象です。制度融資(信用金庫経由)は信用保証協会の保証を使うためトータルコストを抑えやすい面もあります(保証協会付き融資の仕組みは「プロパー融資と信用保証協会付き融資の違い」で解説しています)。公的な相談先としては、地元の商工会議所・商工会が入口として使いやすく、リスケを含む本格的な再生局面では山梨県の中小企業活性化協議会が上記の費用補助制度の窓口になります。

当社でも、認定支援機関として経営改善計画の策定・資金繰りの立て直しをご支援しています。「銀行に何をどう説明すればいいか分からない」という段階でも構いません。まずは財務・経営改善のご支援の内容をご覧いただくか、初回無料の経営相談からお気軽にご連絡ください。金融機関への融資・追加融資そのものの審査で不安がある方は、「日本政策金融公庫の審査で落ちる人の共通点」もあわせて参考になります。

よくある質問

経営改善計画書は誰が作成するのですか?

作成の主体は経営者自身です。ただし、客観的な現状分析や金融機関との交渉を伴う本格的な計画は、認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士など)と一緒に作るのが一般的です。専門家費用の3分の2を補助する制度(405事業・早期経営改善計画)も、認定支援機関の関与が条件になっています。

経営改善計画書の作成費用はいくらですか?

専門家に依頼する場合の費用は計画の規模により幅がありますが、中小企業活性化協議会の制度を使えば、その専門家費用の3分の2が補助されます(早期経営改善計画は計画策定支援で上限50万円、405事業通常枠はDD・計画策定支援で上限200万円など、2026年時点)。自己負担を抑えて専門家の支援を受けられる仕組みです。

経営改善計画書はどのくらいの期間で作成しますか?

会社の規模や状況によりますが、現状分析から数値計画・金融機関との調整まで含めると、数週間から2〜3か月程度かかることが多いです。資金繰りが逼迫する前に、早めに着手することをお勧めします。

経営改善計画書と中期経営計画は何が違いますか?

向いている方向が逆です。中期経営計画は成長・拡大を描く前向きな計画、経営改善計画は業績悪化からの立て直し(まず返済できる体力を取り戻す)を描く計画です。金融機関に提出する目的も、前者が投資判断の説明、後者がリスケや支援継続の相談、という違いがあります。

銀行に評価されない計画書とは、どんな計画書ですか?

典型は、①翌期からのV字回復を前提にした楽観的すぎる計画、②「徹底する」「気をつける」といった精神論だけの改善策、③売上目標に経路別・単価別の根拠がない計画、④損益は黒字でも資金繰り表で月末残高がマイナスになる計画、です。数字に根拠があり、改善策が具体的な仕組みに落ちているかが分かれ目になります。


監修:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査・経営改善支援に従事し、事業計画を「審査する側」として100件超を見てきた経験を持つ。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県で経営改善・資金繰り・融資・補助金の支援を行う。本記事の制度情報は中小企業庁の公表内容(2026年7月時点)に基づきます。補助率・上限額・要件は改定される場合があるため、利用前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。