公開日:2026年7月18日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「毎月の返済が重くて資金繰りが回らない。銀行に『リスケ』を相談したいが、そんなことを言ったら関係が悪くなるのではないか」。業績が厳しくなった経営者から、こうしたご相談をよくいただきます。返済を止めたいのに、それを口にするのが怖い、という状態です。
結論から申し上げると、リスケは失敗の告白でも、銀行との関係を壊す行為でもありません。金融機関にとっても珍しい対応ではなく、正しい順番と資料をそろえて相談すれば、多くの場合は前向きに検討してもらえます。私は金融機関で法人融資の審査に携わり、条件変更の申し出を受ける側にもいました。この記事では、その審査する側の視点から、リスケの意味・信用情報への影響・断られる理由・相談の進め方を整理します。
結論から言えば、リスケ(リスケジュール)とは、返済が苦しくなったときに、銀行と合意のうえで融資の返済条件を一定期間だけ変える手続きです。多くは毎月の元金返済を一時的に減らす・止める形をとり、約束を破って返さない「延滞」とはまったく別のものです。この記事では、その仕組みと進め方を審査する側の視点で整理します。
リスケ(リスケジュール)とは?銀行融資の何を変える手続きか
リスケとは「リスケジュール(reschedule)」の略で、借入金の返済スケジュールを組み直すことを指します。「返済条件変更」「条件変更」と呼ばれることもあります。
具体的に変えるのは、主に毎月の元金の返済額です。たとえば毎月30万円返している元金を、半年間は5万円に減らす、あるいは元金の返済をいったん止めて利息だけ払う、といった形にします。借入そのものが消えるわけではなく、返すタイミングを後ろにずらして、当面の資金繰りを軽くするのがリスケです。
公的な支援サイトでも、リスケは「一定期間だけ約定返済額を減額するなど返済条件を変更すること」と説明されています(中小機構 J-Net21)。返済額を減らせるので、その分だけ新しくお金を借りたのと同じように手元の現金が残る効果があります。
なぜ「追加で借りる」より「返済を止める」ほうが立て直しやすいのか
資金繰りが厳しいとき、多くの経営者はまず「もう少し借りられないか」と考えます。ですが、返済が重くて苦しいときに借入を増やすのは、多くの場合むしろ傷を深くします。
私が支援したある会社は、営業利益そのものは黒字なのに、過去の借入の返済が大きく、現金が毎月じわじわ減り続けていました。ここで追加の運転資金を借りれば、当座はしのげても翌月からの返済額がさらに増え、「借りては返す」の悪循環に入ります。そこで選んだのが、活性化協議会を使った返済猶予(リスケ)でした。返済を止めれば、止めた分がそのまま手元に残ります。その資金で人の育成と受注体制を立て直し、収益力を上げてから返済を再開する、という順番です。
リスケが向くかどうかは、営業段階で黒字が出ている(または見込める)かどうかが分かれ目です。営業赤字のまま返済だけ止めても、止めた先から現金が残らないため、リスケは対症療法にしかなりません。この場合は事業構造そのものの見直しが先で、そこはリスケとは別の話になります。
リスケで信用情報は傷つく?「ブラックリスト」との違い
相談で最も多い不安が、これです。「リスケをすると、いわゆるブラックリストに載るのではないか」。ここは誤解が多いので、正確に整理します。
リスケは、返済を勝手に止めることではありません。銀行と合意したうえで条件を変える手続きです。約束どおり返す前提を、双方の合意で組み直しているので、約束を破って返さない「延滞」とは扱いが違います。個人のクレジットカードやローンの信用情報がただちに傷つき、カードが作れなくなるといった、いわゆるブラックリスト入りとは別物だと考えてください。
ただし、金融機関の中での「見え方」は変わります。銀行は取引先を内部で格付けしており、条件変更をした先はその評価が下がります。その結果として、リスケ中は新規の融資を受けにくくなります。ここは正直にお伝えすべきデメリットです。信用情報という言葉が指すものを、「個人のカードやローンの履歴」と「金融機関内部での評価」の二つに分けて考えると、混乱しません。
元銀行員として見た「応じてもらえるリスケ」と「断られるリスケ」の違いは?
「銀行リスケ 拒否」で検索する方が多いように、断られることへの不安は大きいものです。審査する側にいた経験から言うと、応じてもらえるかどうかは、申し出のタイミングと中身でかなり決まります。
| 応じてもらいやすいリスケ | 断られやすいリスケ |
| 資金が尽きる前、早めに相談に来る | 返済が止まってから事後報告で来る |
| なぜ苦しくなったかを率直に説明できる | 原因が曖昧で「頑張ります」しかない |
| 営業黒字、または黒字化の道筋と数字がある | 回復の根拠がなく、数字が願望になっている |
| 資金繰り表と経営改善計画をそろえている | 口頭のお願いだけで資料がない |
| 取引のあるすべての金融機関に同じ姿勢で臨む | 一部の銀行にだけ相談し、他行に隠す |
銀行の担当者は、リスケの相談を受けると、それを本部の審査に上げて決裁をとります。このとき担当者は、社長の口頭の説明をそのまま本部に伝えきれません。だからこそ、資金繰り表や改善計画といった「そのまま審査の添付資料になる書面」がそろっているかどうかが、担当者の動きやすさを左右します。数字の計画書に加えて、経営判断の経緯・想定どおりにいかなかった部分・今後の回復の道筋を、社長自身の言葉で文章にして渡すと、審査での心象が変わります。私が同席したバンクミーティングでも、社長の思いを一枚の文章にして各行へ配ったことで、話が前に進んだことがありました。
リスケを銀行に相談する流れと、持っていく書類は?
進め方の基本は、資金が尽きる前に、メインの取引銀行へアポイントを取って相談することです。電話で済ませず、面談の場で資料をもとに話すのが誠実な進め方です。持参する書類は、おおむね次の3点セットになります。
| 書類 | 役割 |
| 返済条件変更依頼書 | どの借入を、いつまで、どう変えたいかを示す申込書。書式は銀行から提示されることが多い |
| 経営改善計画書 | 現状・悪化の原因・改善策・数値計画をまとめた本体資料。リスケの可否はここで判断される |
| 資金繰り表 | 月ごとの入出金を並べ、返済を止めれば資金がどう回るかを示す。改善計画の裏付けになる |
このうち、経営改善計画書と資金繰り表は、銀行から求められなくても自分で必ず用意してください(公的な支援サイトでもこの2点は必須とされています)。経営改善計画書の中身の作り方は「経営改善計画書の書き方」で、資金繰り表の作り方は「資金繰り表の作り方」で詳しく解説しています。数字は楽観的に盛らず、「厳しめに見ても、これなら回せます」と言えるラインで作るほうが信用されます。下振れしても持ちこたえられる余裕を見せるのが、審査する側の安心につながるからです。
リスケのデメリットと、やってはいけないこと
リスケは有効な立て直しの手段ですが、万能ではありません。最大のデメリットは、前述のとおりリスケ中は新規融資を受けにくくなることです。だからこそ、リスケに入る前に「その期間の資金は今の手元で足りるか」を資金繰り表で確認しておく必要があります。
やってはいけないのは、リスケを避けようとして、高金利のノンバンクやファクタリングに次々と手を出すことです。目先の資金は入りますが、調達コストが重く、かえって資金繰りを圧迫します。金融機関に正面から返済猶予を相談したほうが、コストの面でも立て直しの面でも有利なケースがほとんどです。返済に困ったときの相談先を、まず金利の高い調達に向けないこと。これは審査する側から見ても、繰り返しお伝えしたい点です。
リスケ中・リスケ後はどうなる?正常化までの道筋
リスケは、いったん決めたら終わりではありません。多くは半年〜1年といった期間で区切り、改善計画の進み具合を金融機関に報告しながら、更新するかどうかを見直していきます。計画どおりに収益力が戻ってくれば、少しずつ元の返済額に近づけ、最終的に通常返済へ復帰する(正常化する)のがゴールです。
この間に大切なのは、決めた計画を「やりっぱなし」にしないことです。四半期ごとに実績と計画を突き合わせ、ズレていればその理由を説明する。地味ですが、この積み重ねが金融機関の信頼を取り戻し、リスケ後の新規融資の再開につながります。
山梨でリスケ・資金繰りを相談するには?
山梨県内でリスケや資金繰りを相談する場合、窓口はいくつかあります。まずは取引のある金融機関そのもの。地域では信用金庫が中小・小規模事業者に協力的な印象です。公的な相談先としては、地元の商工会議所・商工会が入口として使いやすく、返済猶予を含む本格的な立て直しの局面では中小企業活性化協議会が中心的な窓口になります。
中小企業活性化協議会は、2022年4月に従来の中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合してできた公的機関で、全国47都道府県すべてに設置されています(山梨県にもあります)。収益力の改善から事業再生、再チャレンジまでを幅広く支援し、金融機関との返済猶予の調整も担います。経営改善計画づくりにかかる専門家費用の一部を補助する制度もあり、その入口にもなります(費用補助の仕組みは「経営改善計画書の書き方」で解説しています)。制度の名称や内容は改定されることがあるため、利用前に中小企業庁の公式ページで最新の内容をご確認ください(本記事は2026年7月時点の公表内容に基づきます)。
なお、リスケがいまも金融機関にとって特別な対応ではないのには背景があります。かつて中小企業金融円滑化法(2009年12月施行・2013年3月末に終了)という時限の法律があり、金融機関は条件変更に柔軟に応じるよう促されました。法律自体は終わりましたが、その考え方は金融行政に引き継がれています。焦って一人で抱え込まず、早めに専門家や公的窓口に相談するのが、結果的に一番の近道です。
よくある質問
信用保証協会の保証がついた融資もリスケできますか?
できます。保証協会付き融資の返済条件変更も実務では行われており、この場合は金融機関に加えて信用保証協会の同意も必要になります。手続きは金融機関が窓口となって進めますので、まずは取引銀行に相談してください。保証付き融資とプロパー融資の違いは「プロパー融資とは」で解説しています。
借入のある金融機関が複数あります。1行だけリスケすればよいですか?
原則として、取引のあるすべての金融機関に、同じ内容で足並みをそろえて相談します。1行だけに相談して他行に隠すと、後で発覚したときに一気に信頼を失います。複数行がある場合は、各行に同じ資料を配って公平に説明する「バンクミーティング」の形をとることが多く、ここは専門家の同席が効果的な場面です。
リスケ中でも補助金は申請できますか?
補助金の申請とリスケは別の制度で、リスケ中だから補助金を一律に申請できない、というものではありません。ただし補助金は原則として後払い(先に自己資金で支出し、後から補助される)のため、リスケで資金繰りが厳しい時期に大きな立替が必要な補助金は、資金計画をよく確認してから判断してください。
リスケは何年くらい続けられますか?
期間に一律の上限はありませんが、実務では半年〜1年ごとに計画の進捗を確認して更新していく形が一般的です。正常化の見込みが立つ限り更新は検討されますが、何年も改善が見えないまま更新を重ねる状態は金融機関も望みません。だからこそ、更新のたびに示せる改善の実績が重要になります。
税理士に頼めばリスケの交渉もしてもらえますか?
顧問税理士が試算表や資金繰りの整理を手伝ってくれることは多いですが、金融機関との返済猶予の交渉や、活性化協議会を使った本格的な立て直しは、事業再生や融資支援を専門にする支援機関のほうが対応しやすい領域です。誰に相談するか自体に迷う場合は、認定経営革新等支援機関に一度整理を頼むとよいでしょう。
リスケは、早く動くほど選べる手が多く残ります。返済が重いと感じ始めた今が、実は一番相談しやすいタイミングです。当社は審査する側の視点を知っている元銀行員として、資金繰りの立て直しと金融機関への説明を支援しています。まずは融資・資金調達の支援サービスをご覧いただき、無料相談はこちら(お問い合わせフォーム)からお気軽にご連絡ください。
監修:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査・経営改善支援に従事し、事業計画や決算を「審査する側」として100件超を見てきた経験を持つ。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県で融資・補助金・経営計画の支援を行う。本記事の制度情報は金融庁および中小企業庁の公表内容(2026年7月時点)に基づきます。リスケの可否・条件は各金融機関や個別事情によって異なるため、実際の相談前に取引金融機関・中小企業活性化協議会等で最新の取り扱いをご確認ください。
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