公開日:2026年7月28日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「補助金が1,000万円決まりました」とご報告をいただいたあとで、決まって出てくる質問があります。「これ、税金は取られるんですか」。答えは「取られます」です。そして次に出てくるのが「圧縮記帳というのを聞いたのですが」という言葉です。
結論から言えば、圧縮記帳とは「固定資産の取得に充てた補助金について、受け取った年に課税される利益を、その資産の帳簿価額を減らすことで将来へ繰り延べる制度」です。税金が消えるわけではなく、支払う時期が後ろにずれるだけです。そして対象になるのは「固定資産を買った補助金」だけで、広告費や人件費に使った補助金は対象になりません。
私は元銀行員として法人融資の審査に長く携わり、いまは中小企業診断士として補助金の申請から採択後の実務までをご支援しています。その立場で先にお伝えしておきたいのは、圧縮記帳の話でいちばん実害が出るのは仕訳の書き方ではない、ということです。実害が出るのは、税金を払う時期と補助金が振り込まれる時期がずれることに気づかないまま決算日を迎えてしまうケースです。順に整理します。
補助金に税金はかかる?かからなくする方法はあるのか
補助金は受け取った年度の収入(益金)になり、法人税等の課税対象です。そして圧縮記帳は、その課税をなくす制度ではなく、将来に先送りする制度です。
ものづくり補助金の事務局が公表している補助事業の手引きにも、「補助金は経理上、支払を受けた事業年度における収入として計上するものであり、法人税等の課税対象となります」と明記されています。非課税の制度ではありません。
ここで多くの方が引っかかるのが、感覚とのずれです。1,000万円の機械を買って、補助金が667万円入ってくる。手元には667万円が残るように思えますが、税務上は667万円がまるごと利益として立ち上がります。一方、機械の1,000万円は買った年に全額費用になるわけではなく、耐用年数にわたって少しずつ減価償却されていきます。つまり「収入は一度に、費用は分割で」という形になり、初年度だけ利益が大きく膨らむのです。
法人税の実効税率をざっくり30%とすると、667万円の補助金に対して約200万円の税負担が初年度に乗ります。この歪みを均すために用意されているのが圧縮記帳です。根拠条文は法人税法第42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)です。
圧縮記帳とは?「税金が消える」ではなく「先送り」である仕組み
圧縮記帳は、補助金の額だけ固定資産の帳簿価額を減らし、同額を損金に入れることで、その年の課税所得をゼロに戻す処理です。帳簿価額が減った分、翌年以降の減価償却費が小さくなるので、その年数をかけて課税所得が戻ってきます。
数字で見たほうが早いので、先ほどの例で置きます。取得価額1,000万円・耐用年数10年・定額法の機械に、補助金667万円が交付されたとします。
| 圧縮記帳をしない場合 | 圧縮記帳をする場合 |
| 初年度の補助金収入 | 667万円(益金) | 667万円(益金) |
| 初年度の圧縮損 | なし | 667万円(損金) |
| 機械の帳簿価額 | 1,000万円 | 333万円 |
| 毎年の減価償却費 | 100万円 | 33.3万円 |
| 初年度の課税所得への影響 | +567万円 | 0円 |
| 10年間の合計 | 同額(差は生じない) |
10年間を通算すれば、税金の総額は変わりません。変わるのは払う順番だけです。この点は、お客さまに最初にお伝えするようにしています。「節税になりますよ」という説明の仕方をすると、数年後に「話が違う」となるからです。
それでも圧縮記帳を使う価値があるのは、補助金が入る年は設備代を立て替えていて手元資金がいちばん薄い年だからです。その一番苦しい年に200万円の納税を回避し、余裕が出た年に少しずつ払う。資金繰りの平準化のための制度だと捉えると、判断を誤りにくくなります。
どの補助金なら圧縮記帳できる?判定は「固定資産を買ったか」で決まる
法人税法第42条が対象にしているのは「固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金」です。制度名で決まるのではなく、その補助金を何に使ったかで決まります。
競合する解説記事では「ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金は圧縮記帳の対象」と制度名の一覧で説明されていることが多いのですが、この書き方は実務では危ういと感じています。同じ持続化補助金でも、機械装置を買った部分は対象になり、チラシやホームページの制作費に充てた部分は対象になりません。判定の単位は制度ではなく経費区分です。
| 使い道 | 圧縮記帳 | 理由 |
| 機械装置・器具備品・建物附属設備の購入 | 対象になり得る | 固定資産の取得に充てた補助金 |
| 建物・設備の改修(資本的支出) | 対象になり得る | 固定資産の改良に充てた補助金 |
| ソフトウェアの導入(無形固定資産) | 対象になり得る | 同上 |
| 広告宣伝費・展示会出展費・専門家経費 | 対象外 | 固定資産を取得していない |
| 人件費・研修費への助成 | 対象外 | 同上 |
| 10万円未満で一時に費用処理した備品 | 対象外 | 固定資産として計上していない |
もうひとつ、意外に知られていない論点があります。ものづくり補助金も持続化補助金も、国が直接お金を振り込んでくるわけではなく、全国中小企業団体中央会や商工会議所などの事務局を経由して交付されます。形式だけを見れば「国からの直接交付」ではないので、条文に当てはまらないようにも読めます。
この点について国税庁は質疑応答事例で、「補助金交付団体は国に代わって補助金の交付事務を行っているに過ぎず、実質的に国から直接交付を受けたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当する」との考え方を示しています。基金を通じて交付される場合、地方公共団体の財源をもとに間接交付される場合も同様とされています(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)。事務局経由でも圧縮記帳が使えるのは、この解釈が根拠です。
逆に、対象にならないものとしてはっきり書かれているのが、市町村の工場誘致条例などに基づく奨励金です。法人税基本通達10-2-4は、それが実質的に税の減免に代えて交付されたものであることが明らかであると認められるときは国庫補助金等に該当しない、としています。地方の独自制度を使うときは、県や市に「これは補助金か、税の減免の代替か」を確認しておくと安全です。
いつの決算に載る?「額の確定通知」が先、入金は後という順番
ここが実務でいちばん事故が起きるところです。補助金の入金より前に、税務上の収益計上と圧縮記帳の判定時点が来ることがあります。
法人税法第42条は、圧縮記帳ができるのは「その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限る」と定めています。では「返還を要しないことが確定した」のはいつか。法人税基本通達10-2-1の注が、その答えを書いています。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条《補助金等の額の確定等》の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当する。
つまり基準になるのは、実績報告と確定検査を経て事務局から届く「額の確定通知」です。そして補助金の振込は、その通知のあとに行われます。ものづくり補助金の手引きにも「補助事業実績報告書の提出を受け、補助金額の確定後の精算払となります」と書かれているとおりです。
この順番を時系列に置くと、決算日の位置によって景色が変わることが見えてきます。
| 時期の例 | できごと | 税務上の意味 |
| 2026年6月 | 交付決定 | まだ何も確定していない |
| 2026年12月 | 設備の検収・支払(全額自己負担で立替) | 資産計上・資金は出ていく一方 |
| 2027年2月 | 実績報告・確定検査 | 審査中 |
| 2027年3月10日 | 額の確定通知 | 返還不要が確定=圧縮記帳の判定時点 |
| 2027年3月31日 | 決算日 | この期の申告で処理する |
| 2027年5月 | 補助金の入金 | お金が届くのは申告書を作っている最中 |
3月決算の会社で確定通知が3月に届いた場合、お金は5月にしか入ってこないのに、税務処理は3月期のものとして考えることになります。もし圧縮記帳の適用を失念していれば、入金前に納税だけが先に来ます。設備代を全額立て替えて手元が薄くなっている時期に、まだ入っていない補助金への税金を払うという、いちばん避けたい形です。
私が面談で必ず確認するのは、決算日と、確定通知の見込み時期です。実際に「注意が必要なのが、補助金の上限の税抜きの金額に対する三分の二なので、消費税は自己負担になります」「システムを今回購入されるときは、金融機関からお金を借りて、一時的に全額立て替えないといけないんですね」といった説明を初回にしています。立替と納税の両方が同じ時期に来ることを、採択の喜びの前に一度お伝えしておくためです。
なお補助金の入金までのつなぎ資金については、補助金つなぎ融資の解説記事で相談先と進め方をまとめています。立替期間の資金計画は、資金繰り表に納税予定まで入れて可視化しておくと判断を誤りません。
ひとつ補足しておきます。事務局の手引きは「支払を受けた事業年度における収入として計上する」という簡潔な表現を使っており、法人税法・通達の「返還不要が確定した事業年度」という要件とは、書きぶりが一致していません。確定通知と入金が同じ事業年度に収まるケースがほとんどだからだと思われますが、決算日をまたぐ場合はどちらの年度で処理するかで税額が変わります。通知日・入金日・決算日の3つを並べて、顧問税理士と処理年度を確定させてから動くのが確実です。
仕訳はどう書く?直接減額方式と積立金方式の使い分け
圧縮記帳の経理方法は2つあります。損金経理で帳簿価額を直接減らす「直接減額方式」と、決算で積立金を積む「積立金方式」です。どちらも法人税法第42条第1項に規定があり、税務上の効果は同じです。
先ほどの例(機械1,000万円・補助金667万円)で仕訳を並べます。
直接減額方式
| 場面 | 借方 | 貸方 |
| 機械の取得 | 機械装置 10,000,000 | 現金預金 10,000,000 |
| 補助金の確定 | 未収入金 6,670,000 | 雑収入(補助金収入) 6,670,000 |
| 圧縮記帳 | 固定資産圧縮損 6,670,000 | 機械装置 6,670,000 |
帳簿上の機械装置は333万円になります。処理が単純で中小企業では使いやすい一方、貸借対照表の資産が実際の設備規模より小さく表示されます。
積立金方式
| 場面 | 借方 | 貸方 |
| 機械の取得 | 機械装置 10,000,000 | 現金預金 10,000,000 |
| 補助金の確定 | 未収入金 6,670,000 | 雑収入(補助金収入) 6,670,000 |
| 圧縮積立金の計上 | 繰越利益剰余金 6,670,000 | 圧縮積立金 6,670,000 |
こちらは機械装置を1,000万円のまま残し、純資産の部で調整します。設備の実際の規模が決算書に残るのが利点で、減価償却費も本来の100万円のまま計上されます。その代わり、毎期の積立金の取崩しを申告調整で管理し続ける必要があり、事務負担は重くなります。
どちらを選ぶかは、決算書を誰に見せるかで変わります。この判断は後ろの節で改めて触れます。
決算をまたいだら?特別勘定と、先に買ってしまった場合の扱い
返還不要が決算日までに確定しなかった場合は「特別勘定」を使い、確定した年度に圧縮記帳へ振り替えます。補助金より先に設備を買っていた場合も、圧縮記帳は使えます。
順に見ていきます。まず、設備は買って支払いも済んでいるのに、決算日までに額の確定通知が届かないケース。この場合は法人税法第43条により、補助金の額に相当する金額以下を特別勘定として経理すれば、その年度の損金に算入できます。そして翌年度以降に返還不要が確定した時点で、法人税法第44条により特別勘定を取り崩して圧縮記帳を行います。
次に、補助金の交付を受けた年度より前に固定資産を取得していた場合。法人税法第42条第1項のかっこ書きは、「その固定資産が当該事業年度前の各事業年度において取得又は改良をした減価償却資産である場合には、当該国庫補助金等の額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額」を圧縮限度額とする、と定めています。先に買っていたから使えない、ということはありません。すでに減価償却が進んだ分だけ圧縮できる金額が調整される、という構造です。
ここで一点、安心材料になる通達を挙げておきます。補助金の交付条件には、たいてい「条件に違反した場合は返還」「一定期間内に相当の収益が生じた場合は返還」といった文言が入っています。これを見て「返還不要が確定していないのでは」と迷う方がいるのですが、法人税基本通達10-2-1は、こうした一般的条件が付されていることは返還不要が確定しているかどうかの判定には関係がないとしています。収益納付の条項があっても、額の確定通知を受けていれば圧縮記帳の判定には影響しません。
そして手続き面。法人税法第42条第3項は、圧縮記帳は「確定申告書に…損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」と定めています。これが別表十三(一)「国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書」です。同条第4項に、記載がなかったことにやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは適用できるという規定はありますが、これを当てにする話ではありません。申告書を作る前に、経理担当者と顧問税理士の間で「今期は別表十三(一)がある」と共有しておくのが実務です。
【元銀行員の視点】圧縮記帳をした決算書を、銀行はどう読むか
圧縮記帳をすると、貸借対照表の資産と自己資本が実態より小さく表示されます。融資審査は決算書の数字から入るので、説明がないと会社を過小評価されることがあります。
この論点は、税務の解説記事ではほとんど扱われていません。私が調べた範囲では、検索上位の解説のうち決算書の見え方に触れているのは1本だけで、融資審査への影響まで書いているものはありませんでした。会計ソフトのベンダーと税理士事務所が書き手の中心なので、当然といえば当然です。ただ、審査する側にいた立場からは、ここを外すと片手落ちだと感じます。
直接減額方式で667万円を圧縮すると、何が起きるか。
- 総資産が667万円小さくなる。1,000万円の設備を導入したのに、決算書には333万円の機械しか載りません
- 自己資本が667万円小さくなる。圧縮損が費用として利益を消すため、その分だけ利益剰余金が積み上がりません
- 減価償却費が年100万円から33.3万円に減る。簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)で返済力を見る場合、見かけの返済原資が小さくなります
- 翌期以降の利益は大きく見える。償却負担が軽いので、経常利益は本来より良く出ます
自己資本比率を重視する評価では、初年度に自己資本が薄く出る点が効いてきます。設備投資をして体力をつけたはずの会社が、決算書の上では「投資したのに資産も自己資本も増えていない会社」に見えるわけです。担当者が圧縮記帳を織り込んで読んでくれれば問題はありませんが、そこまで丁寧に見てもらえる前提で決算書を出すのは、少し楽観的だと思います。
対処は難しくありません。決算書を金融機関に出すときに、圧縮記帳の事実と金額を口頭ではなく紙で添えることです。私はお客さまに、「補助金○○万円を受領し、機械装置△△万円について圧縮記帳を適用しています。圧縮前の取得価額は□□万円です」の3行を、決算報告の資料に入れることをおすすめしています。金融機関に出す計画書は厳しめの数字で作って余裕を見せるほうが信用されますが、それは数字を小さく見せることと、実態を伝えないことは別だからです。
決算書を見せる相手が金融機関中心で、かつ設備投資の規模を評価してほしい局面なら、事務負担を引き受けてでも積立金方式を選ぶ判断はあり得ます。純資産の部に圧縮積立金が並び、機械装置は取得価額のまま残るので、実態が読み取りやすくなるからです。銀行の見え方については、経営分析のやり方で指標ごとの見られ方を整理しています。
圧縮記帳をしない方がいい場合は?欠損金と設備投資減税の落とし穴
赤字や繰越欠損金がある年、そして設備投資減税の取得価額要件を狙っている年は、圧縮記帳をしないほうが有利になることがあります。
ひとつ目は繰越欠損金です。もともと赤字が出ている年、あるいは繰越欠損金を抱えている年は、補助金の利益をぶつけても税金が出ません。ここで圧縮記帳をしてしまうと、使えたはずの欠損金を温存したまま、将来の課税所得だけが増えます。繰越欠損金には期限があるため、切り捨てになる分が出れば損です。補助金の全額ではなく一部だけを圧縮する(圧縮限度額の範囲内で金額を選べます)という調整も条文上は可能です。
ふたつ目が、意外な落とし穴です。中小企業経営強化税制などの設備投資減税には「機械装置は160万円以上」といった取得価額の要件があります。ここでいう取得価額は、圧縮記帳をした場合どちらの金額になるのか。租税特別措置法関係通達42の12の4−5が答えを書いています。
その機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備又はソフトウエアが法第42条から第49条までの規定による圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、その圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行うものとする。
判定は圧縮後の金額で行われます。200万円の機械を買って補助金で100万円を圧縮すると、税務上の取得価額は100万円になり、160万円の要件を満たさなくなります。即時償却や税額控除を当て込んでいた計画が、圧縮記帳によって崩れることがあるということです。設備投資減税との併用を考えている場合は、経営力向上計画の申請段階から、圧縮記帳をするかどうかを含めて試算しておく必要があります。
どちらが有利かは、その年の所得・欠損金・設備の金額で変わります。ここは私の領域ではなく税理士の領域なので、「圧縮記帳をする前提で計画を組まない」とだけお伝えしています。補助金の申請支援をしていると、採択の前から節税額まで織り込んだ資金計画を見せられることがありますが、決めるのは決算の直前でよい話です。
消費税と償却資産税はどうなる?
消費税では、補助金で買った設備の消費税相当額は、あらかじめ補助対象経費から差し引かれます。償却資産税(固定資産税)では、圧縮記帳は認められません。
まず消費税です。補助金そのものは対価性がないため課税の対象外ですが、課税事業者が補助金で設備を買うと、その仕入れにかかった消費税は仕入税額控除で戻ってきます。国から補助を受け、さらに消費税も還付されると二重に得をすることになるため、補助金の側で調整が入ります。ものづくり補助金の手引きは次のように書いています。
補助事業者が課税事業者(免税事業者及び簡易課税事業者以外)の場合、本事業に係る課税仕入に伴い、消費税及び地方消費税の還付金が発生することになるため、この還付と補助金交付が重複しないよう、課税仕入の際の消費税及び地方消費税相当額について、原則としてあらかじめ補助対象経費から減額しておくこととします。この消費税及び地方消費税相当額を「消費税等仕入控除税額」といいます。
実務上の意味はシンプルで、補助金は税抜金額に対して計算され、消費税分は自己負担になるということです。1,000万円(税込1,100万円)の設備で補助率2/3なら、補助金は税抜1,000万円の2/3で667万円。手出しは差額の333万円に消費税100万円を足した433万円です。この100万円を見落とした資金計画を、私は何度か拝見しています。
次に償却資産税です。こちらは見落とされやすいのですが、市町村に申告する償却資産では圧縮記帳が認められていません。自治体が公表している国税との比較表では、圧縮記帳の制度について固定資産税(償却資産)は「認められません」とされ、注記で「国庫補助金等で取得した資産で取得価額の圧縮を行ったものについては、圧縮前の取得価額としてください」と明示されています。
つまり法人税では333万円に圧縮した機械でも、償却資産の申告では1,000万円で申告します。固定資産税は財産に対する課税なので、実際の資産価値で評価するという考え方です。償却資産の評価額には取得価額の5%という下限もあり、法人税のように備忘価額1円まで落ちることはありません。「圧縮記帳をしたから償却資産税も減る」ということはないと覚えておいてください。
採択後にやることを、申請の段階で決めておく
ここまでの内容を、判断の順番に並べ直します。
- 申請の段階:補助対象経費のうち固定資産になる部分がいくらかを把握する。設備投資減税を併用する予定があれば、取得価額要件と圧縮記帳の関係を先に確認する
- 交付決定から実績報告まで:立て替える金額(税抜の自己負担+消費税全額)と、その資金の手当てを決める
- 額の確定通知が届いたら:通知日・入金予定日・決算日の3つを並べ、どの事業年度で処理するかを顧問税理士と確定させる
- 決算・申告:直接減額方式か積立金方式かを、決算書を見せる相手を踏まえて選ぶ。別表十三(一)の添付を確認する
- 金融機関への説明:圧縮記帳の事実・金額・圧縮前の取得価額を、決算報告の資料に書き添える
補助金の実務は、採択がゴールではなく、そこから交付申請・実績報告・税務処理・事業化状況報告と続きます。正直に申し上げると、この後半部分を申請の段階で説明されている事業者は多くありません。採択の前に「入るのは1年後で、その前に全額立て替えます」とお伝えすると、少し場の空気が変わります。それでも、あとから知るよりずっといいと思っています。
池田計画合同会社では、補助金の申請支援だけでなく、採択後の立替資金の設計、金融機関への説明資料の作り方、税理士との役割分担の整理までご一緒しています。税務処理そのものは顧問税理士の領域ですので、私の役割は「決算までに何を決めておく必要があるか」を先に洗い出しておくことです。制度選びの段階からご相談いただける場合は、補助金支援サービスをご覧ください。山梨県で使える制度の全体像は山梨県の補助金・助成金一覧にまとめています。
すでに採択が決まっていて、入金までの資金と税金の段取りに不安がある方は、お問い合わせフォームから、補助金の名称・交付決定額・決算月をお知らせください。初回のご相談は無料です。
よくある質問
個人事業主でも圧縮記帳はできますか?
できます。ただし法人税法ではなく所得税法第42条・第43条による「総収入金額不算入」という形になります。国または地方公共団体から固定資産の取得や改良に充てるための補助金を受け、その目的に適合した固定資産を取得した場合、その固定資産に充てた部分の金額を総収入金額に算入しないことができます。適用には「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付した確定申告書の提出が必要です。詳細は国税庁タックスアンサーNo.2202で確認してください。
別表十三(一)を確定申告書に付け忘れた場合、圧縮記帳は使えませんか?
法人税法第42条第3項は、確定申告書に損金算入に関する明細の記載があることを適用の条件としています。ただし同条第4項に、記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは適用できる、という規定があります。あくまで例外的な救済ですので、当てにせず申告時に添付してください。決算作業の前に、経理担当と税理士の間で「今期は補助金の圧縮記帳がある」と共有しておくのが確実です。
雇用調整助成金やキャリアアップ助成金も圧縮記帳の対象になりますか?
対象になりません。法人税法第42条が対象としているのは「固定資産の取得又は改良に充てるための」補助金・給付金です。人件費や雇用の維持に対する助成金は固定資産を取得するものではないため、受け取った年度に全額が益金となります。一方、業務改善助成金や自治体の設備投資型の補助金のように、賃上げや職場環境改善とセットであっても実際に固定資産を取得している場合は、その取得に充てた部分について判定されます。
市町村から工場誘致の奨励金をもらった場合も圧縮記帳できますか?
できない場合があります。法人税基本通達10-2-4は、工場誘致条例またはこれに準ずる条例に基づく補助金・奨励金が、実質的に税の減免に代えて交付されたものであることが明らかであると認められるときは、法人税法第42条第1項の国庫補助金等には該当しないとしています。逆に、地方公共団体から土地などを時価より著しく低い価額で取得した場合は、通達10-2-3により圧縮記帳をしたものとして取り扱われます。制度ごとに確認が必要です。
取引先の決算書を見て、圧縮記帳をしているかどうかは分かりますか?
直接減額方式の場合、損益計算書の特別損失に「固定資産圧縮損」が計上されているのが手がかりです。積立金方式の場合は、貸借対照表の純資産の部に「圧縮積立金」が並びます。いずれも法人税申告書の別表十三(一)を見れば確定します。金融機関に決算書を提出する際は、この事実と圧縮前の取得価額を書面で添えておくと、設備規模を過小に評価されずに済みます。
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