公開日:2026年7月2日 更新日:2026年7月12日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「補助金と助成金って、何が違うんですか?」。山梨県内の中小企業の経営者から、補助金のご相談を受けるときに、いちばん最初に聞かれる質問のひとつです。ニュースやチラシでは同じように使われていますが、実は仕組みも、もらいやすさも、相談する専門家までも違います。

結論を先にお伝えします。補助金は主に経済産業省・自治体などが税金を財源に公募し、審査で選ばれた事業者だけが受け取れる制度です。一方、助成金は主に厚生労働省が雇用保険などを財源とし、決められた要件を満たせば原則として受け取れる制度です。つまり「補助金=競争して勝ち取る」「助成金=条件を整えて受け取る」という性格の違いがあります。

私は元銀行員として法人融資の審査に長く携わり、いまは中小企業診断士として補助金の計画づくりを支援しています。審査する側とされる側の両方を見てきた立場から、両者の違いと使い分けを実務目線で整理します。


補助金と助成金の違い【比較早見表】

まず全体像を一覧で示します。細かい要件は制度ごと・年度ごとに変わるため、代表的な傾向としてご覧ください。

比較項目補助金助成金
主な所管経済産業省・中小企業庁、各省庁・自治体主に厚生労働省(雇用・労働関係)
主な目的設備投資・販路開拓・新事業など事業の発展雇用の維持・創出、労働環境の改善、人材育成
主な財源国・自治体の予算(税金)事業主が納める雇用保険料(雇用保険二事業)※雇用関係の場合
もらいやすさ公募制・予算や採択件数に上限。審査で採択(不採択あり)要件を満たせば原則受給。ただし予算枠のある制度は達すると受付終了
主な相談先中小企業診断士・認定経営革新等支援機関、商工会議所・商工会社会保険労務士、労働局・ハローワーク
公募・受付公募回ごとに締切あり(募集期間は数週間のことも)通年で受け付ける制度が多い(予算の範囲内)

補助金と助成金は何が違う?──所管・財源・審査の3点

言葉は似ていますが、成り立ちがそもそも違います。ポイントは「所管省庁」「財源」「審査の性質」の3つです。

1つめは所管(どの役所が担当か)。補助金は、事業の発展や産業振興を後押しするもので、主に経済産業省・中小企業庁や各自治体が担当します。ものづくり補助金や持続化補助金がその代表です。一方、助成金は雇用や労働環境に関わるものが中心で、主に厚生労働省が担当します。「事業を伸ばす」のが補助金、「人を雇い・守り・育てる」のが助成金、というのが大まかな住み分けです。

2つめは財源(お金の出どころ)。補助金の原資は、国や自治体の予算=税金です。だから予算の枠があり、募集する件数にも限りがあります。これに対して、厚生労働省の雇用関係助成金の多くは、事業主が納めている雇用保険料(雇用保険二事業)を財源としています。雇用保険二事業は事業主だけが負担する保険料でまかなわれており、いわば「事業主みんなで積み立てたお金を、条件を満たした事業主に返す」構造です。ここが、補助金と助成金のもらいやすさの違いに直結します。

3つめは審査の性質。補助金は予算・採択件数が限られているため、事業計画の中身を審査して、優れた申請から順に採択します。当然、落ちることがあります。一方の助成金は、あらかじめ決められた要件(対象者・取り組み内容・書類など)を満たしていれば、原則として支給されます。「他社と比べて選ばれる」補助金と、「基準を満たせば受け取れる」助成金、と覚えておくとわかりやすいでしょう。

助成金は「要件を満たせば原則もらえる」って本当?

ほぼ本当です。ただし、いくつか注意点があります。

第一に、助成金にも予算枠があります。たとえば設備投資をともなう業務改善助成金のように予算枠のある制度は、申請が予算に達すると年度の途中でも受付を終了することがあります。「要件さえ満たせば、いつでも確実に」というわけではない点に注意してください。

第二に、労務まわりの土台が整っていることが前提です。雇用関係の助成金では、労働保険(雇用保険・労災保険)にきちんと加入していること、就業規則や賃金台帳・出勤簿などの労務書類が整っていることが求められます。ふだんの労務管理がずさんだと、そもそも申請の入り口に立てません。ここは、直近の確定申告や決算書が整っていないと申請そのものが成り立たない補助金と、発想が似ています。

第三に、審査(要件確認)と不正受給のチェックは年々厳しくなっています。私が支援の現場で感じるのも、助成金の要件確認や実地調査が以前より丁寧になっているということです。「要件を満たせばもらえる」制度だからこそ、書類や実態が要件どおりに整っているかを、きちんと確認して申請することが欠かせません。

補助金の審査と、融資の審査は同じ?

ここは誤解が多いところなので、はっきりお伝えします。補助金の審査と、銀行や日本政策金融公庫の融資審査は、まったくの別物です。

融資審査で見られるのは、突きつめれば「貸したお金がきちんと返ってくるか」——返済可能性です。売上や利益、資金繰り、担保・保証、経営者の姿勢などから、返済の確からしさを判断します。私が銀行で審査に携わっていたときも、最後に問うのはいつもそこでした。

これに対して補助金の審査で問われるのは、「その事業に政策的な意義があるか」「計画が本当に実現しそうか」「他社より優れているか(加点)」です。返すお金ではなく、政策目的にかなう取り組みを後押しするものなので、評価の物差しがそもそも違います。さらに助成金は、そうした優劣の競争ではなく「要件を満たしているか」の確認が中心です。融資・補助金・助成金は、審査の目的も基準も三者三様だと考えてください。

唯一、共通して効いてくるのは「計画の数字に根拠があるか」を問う目です。売上の見込み、投資の効果、返済や自己負担の計画。どの制度でも、根拠のない数字は見透かされます。融資審査を見てきた経験がそのまま補助金に使えるわけではありませんが、「数字の裏づけを問う」という一点だけは、どの審査にも共通します。補助金の採択率を上げる具体的なコツは、補助金の採択率を上げる3つのことで詳しく解説しています。融資審査については日本政策金融公庫の審査で落ちる人の共通点と対策をご覧ください。

山梨の中小企業が使える代表的な助成金は?

助成金は種類が多いですが、山梨県内の中小企業が関わりやすいのは、厚生労働省の雇用関係助成金です。代表的なものを挙げます(内容・金額・要件は年度で変わるため、最新は厚生労働省の各制度ページでご確認ください)。

  • キャリアアップ助成金:有期雇用の従業員を正社員に転換するなど、非正規雇用の処遇改善に取り組む事業主向け。
  • 業務改善助成金:事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った場合に、その費用の一部を助成。上限額や助成率は、引上げ額・対象人数・引上げ前の賃金によって変わります。
  • 人材開発支援助成金:従業員に職業訓練などを実施した事業主向けの、人材育成を後押しする助成金。
  • 両立支援等助成金:育児・介護と仕事の両立支援に取り組む事業主向け。
  • 65歳超雇用推進助成金:高年齢者が長く働ける環境づくりに取り組む事業主向け。

これらは厚生労働省の雇用関係助成金一覧(厚生労働省)で確認できます。「人を雇う」「賃金を上げる」「研修をする」といった、人に関わる前向きな取り組みには助成金が用意されていることが多い、と覚えておくとよいでしょう。

山梨の中小企業が使える代表的な補助金は?

補助金のほうは、設備投資や販路開拓、新事業に使えるものが中心です。山梨県内でよく使われる代表例は次のとおりです(金額・補助率は公募回で変わります。2026年時点の代表的な値です)。

  • ものづくり補助金:革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善のための設備投資に。
  • 小規模事業者持続化補助金:チラシ・看板・ホームページなど、小規模事業者の販路開拓に。
  • 中小企業省力化投資補助金:人手不足を解消する自動化・省力化の設備投資に。
  • 中小企業新事業進出補助金:新しい分野・事業への進出に。
  • デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金):ITツール・ソフトウェアの導入による業務効率化に。2026年度からIT導入補助金より名称変更されました。詳しくはIT導入補助金2026の解説記事をご覧ください。

国の制度から山梨県・市町村独自の制度まで、使える補助金を一覧で確認したい方は、山梨県の中小企業が使える補助金・助成金一覧【2026年度版】にまとめています。

結局どっちを使えばいい?相談先の違いにも注意

「補助金と助成金、どちらを使うべきか」は、やりたいことで決まります。設備を入れたい・販路を広げたい・新事業を始めたいなら補助金、人を雇いたい・賃金を上げたい・研修をしたいなら助成金、という切り分けが基本です。もちろん、両方を組み合わせて活用できる場面もあります。

意外と見落とされがちなのが、相談する専門家が違うという点です。補助金の事業計画づくりは、中小企業診断士や認定経営革新等支援機関、商工会議所・商工会が支援します。一方、労働・社会保険に関わる助成金の申請代行は、社会保険労務士(社労士)の業務です。制度の性格が違うので、担い手も分かれているのです。

現場で感じるのは、助成金の中には「手間の割に報酬が見合わない」といった理由で、本来の担い手が積極的には扱わない制度もあるということです。だからこそ、どの制度が自社に合うのかを入り口で見極め、必要に応じて適切な専門家につなぐ「交通整理」に価値があります。私自身も、補助金の計画づくりを軸にしつつ、助成金が向いているケースでは社労士と連携してご案内するようにしています。まずは「自社は補助金と助成金のどちらが向いているのか」を整理するところから始めるのがおすすめです。

まとめ──「勝ち取る補助金」と「整えて受け取る助成金」

補助金と助成金は、名前は似ていても中身は別物です。補助金は税金を財源に、審査で選ばれた事業者が受け取る「勝ち取る」制度。助成金は主に雇用保険を財源に、要件を満たせば受け取れる「整えて受け取る」制度です。そして、補助金の審査は融資審査ともまったく違う——この3つの区別がつくだけで、制度選びはぐっとラクになります。

池田計画合同会社では、「そもそも自社にはどの制度が合うのか」というご相談から承っています。事業の内容やこれからやりたいことをおうかがいしたうえで、補助金・助成金のどちらを・どう使うのが得かをこちらからご提案し、補助金であれば経営計画書の作成から申請、実績報告までワンストップで支援します。まずは補助金支援サービスをご覧ください。

「うちの場合、補助金と助成金のどちらを先に動かすべきか分からない」という段階でも構いません。お問い合わせフォームから事業の内容を教えていただければ、使える制度と進める順番をこちらからご提案します。

筆者:池田哲郎。元・八十二銀行にて法人融資の審査に長く携わり、山梨県事業承継・引継ぎ支援センターを経て独立。中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県内の中小企業・小規模事業者の補助金・融資・経営計画を支援しています。


よくある質問

補助金と助成金の違いを一言でいうと?

補助金は税金を財源に、審査で選ばれた事業者だけが受け取れる「競争して勝ち取る」制度です。助成金は主に雇用保険を財源に、決められた要件を満たせば原則として受け取れる「条件を整えて受け取る」制度です。所管も、補助金は主に経済産業省・自治体、助成金は主に厚生労働省と分かれています。

助成金は要件を満たせば必ずもらえますか?

原則として要件を満たせば受給できますが、「必ず」ではありません。予算枠のある助成金は、申請が予算に達すると年度の途中でも受付を終了することがあります。また、労働保険への加入や就業規則・賃金台帳などの労務書類が整っていることが前提で、要件確認や実地調査も年々丁寧になっています。

補助金の審査と融資の審査は同じですか?

別物です。融資審査で見られるのは「貸したお金が返ってくるか」という返済可能性です。補助金の審査で問われるのは「事業に政策的な意義があるか」「計画が実現しそうか」「他社より優れているか」で、評価の物差しが違います。共通して効くのは「計画の数字に根拠があるか」という一点だけです。

給付金は補助金・助成金とどう違いますか?

給付金は、一定の条件に当てはまる人や事業者へ、原則として審査による優劣をつけずに支給されるお金を指すことが多い言葉です(コロナ禍の各種給付金などが典型)。事業の計画を審査して採択する補助金とは性格が異なります。ただし制度ごとに呼び方や仕組みは異なるため、名称だけで判断せず、各制度の要領で確認してください。

補助金と助成金は両方もらえますか?

目的が異なれば、両方を活用することは可能です。たとえば設備投資に補助金を使い、その事業で人を雇う・賃金を上げる部分で雇用関係の助成金を使う、といった組み合わせも考えられます。ただし、同じ経費に対して複数の制度から重複して受け取ることは原則できません。自社の計画に合わせて、どう組み合わせるかを設計することが大切です。