中小企業の経営者の方とお話ししていると、こんなやり取りをすることが結構あります。

「来期の売上目標はいくらですか?」とお聞きすると、「6,000万円ぐらいですかね」と返ってくる。「なるほど。ちなみに、なぜ6,000万円なんですか?」と聞くと、少し間があって「うーん、なんとなく……」と。

これは、珍しいことじゃないんですよね。多くの中小企業が、売上目標を「前年比ちょっと上」とか「キリのいい数字」で決めている。でも、その数字に根拠がないと、達成できてもできなくても「なぜか」が分からないままになってしまうんです。

私は元銀行員(法人融資担当)で、いまは中小企業診断士として、山梨を中心に経営や資金繰りのご相談に乗っています。融資の現場でも、根拠のない売上目標はすぐ見抜かれます。そこで私がよくお伝えしているのが、固定費から逆算して“生存売上”を先に決めるという考え方です。式にすると、生存売上=毎月必ず出ていくお金÷限界利益率。まずはこの一本の式を頭に入れておいてください。

そしてもう一つ、この記事を通してお伝えしたいのが、会社の数字は「率」ではなく「単価×数量」で捉えたほうが、現場でずっと使えるようになるということです。順を追って説明していきますね。

会社の数字は「5つのブロック」でできている

いきなり「粗利率が何%で……」と率の話から入ると、頭の中で数字がふわっとして掴みどころがなくなります。私がおすすめしているのは、会社の数字を**5つのブロック(積み木)**として、目に見える形で並べてみることです。

まず、記号を5つだけ覚えてください。難しくありません。

  • P(単価):商品やサービス1つあたりの販売単価
  • V(変動費):それを1つ売るたびに出ていくコスト(材料費・外注費・仕入など)
  • m(1個あたりの限界利益):m = P − V。1つ売って手元に残る「粗利のもと」
  • Q(数量):売れた個数・件数
  • F(固定費):売れても売れなくても毎月出ていくお金(人件費・家賃・返済など)

この5つを組み合わせると、会社の利益はたった一本の式で表せます。

売上高は P×Q、そこから変動費 V×Q を引いた残りが限界利益 m×Q。その限界利益で固定費 F を賄って、最後に残るのが利益 G です。式にすると、

利益 G = m×Q − F

これを絵にすると、こうなります。

売上 P×Q 変動費 V×Q 限界利益 m×Q −F 固定費 F 利益 G 利益 G = 限界利益 m×Q − 固定費 F

こうやってブロックで見ると、いくつか大事なことが「絵」で分かります。

一つは、利益(G)は、分解していった最後に残る、いちばん薄い積み木だということ。売上という大きな棒の、ほんの一部です。だからこそ、土台の変動費や固定費が少し崩れるだけで、上の利益は簡単に吹き飛びます。

もう一つ、値引きの怖さもこの絵で分かります。「1割値引き」は、Pを1割下げるのではなく、mを直撃するんです。たとえばP=1,000円・V=700円なら、m=300円。ここで100円値引きするとP=900円になり、mは200円まで、なんと3分の1も減ってしまう。値引きは「売上の1割」ではなく「利益の素の3分の1」を削っている——この感覚は、率で見ているとなかなか出てきません。

損益分岐点は、割り算一つで出る

さて、5つのブロックが分かると、「じゃあ、いくつ売れば赤字にならないの?」という問いに、すぐ答えが出せます。

利益がちょうどゼロになる点——これが損益分岐点です。式は先ほどの G = m×Q − F。これをゼロと置くと、

m×Q − F = 0 → Q₀ = F ÷ m

これだけです。固定費を、1個あたりの限界利益で割る。 損益分岐点「販売数量」は、たった一回の割り算で出ます。率もパーセントも要りません。

具体例で見てみましょう。ある弁当店を想像してください。

  • 販売単価 P = 800円
  • 1食あたりの変動費(食材・容器など) V = 320円
  • 1食あたりの限界利益 m = 800 − 320 = 480円
  • 月の固定費 F = 96万円

すると、損益分岐点は、

Q₀ = 96万円 ÷ 480円 = 月2,000食

これを絵にすると、こういう関係です。

金額 数量 Q 固定費 F 総費用 F+V×Q 売上 P×Q 損益分岐点 Q₀ = F ÷ m 損失 利益 Q₀=2,000食 弁当店の例:Q₀ = 96万円 ÷ 480円 = 2,000食/月

金色の売上線が紺色の総費用線を追い越す、その交点が損益分岐点。ここより左が「損失」、右が「利益」です。

面白いのはここからです。「月2,000食」と言われると、多いのか少ないのか分かりませんよね。でも、月25営業日で割ってみると、1日80食。これなら現場の感覚で「いける/いけない」が即座に判断できます。ランチのピークに何食さばけるか、テイクアウトを何食足せばいいか。「月の売上金額」を「1日の個数」に翻訳した瞬間、数字が経営から現場の言葉に変わるんです。

これが、率ではなく「単価×数量」で数字を掴む最大のメリットです。社長だけでなく、現場のスタッフさんとも共有できる目標になる。「今日はあと10食」と声を掛け合えるようになります。

ちなみに、この式は「赤字にならない点」だけでなく、「狙った利益を出す点」にもそのまま使えます。たとえば月30万円の利益(目標利益)を残したいなら、固定費に目標利益を足して割るだけ。必要数量 =(F + 目標利益)÷ m です。弁当店の例なら、(96万円 + 30万円)÷ 480円 = 月2,625食、1日あたり105食。「赤字を避けるライン」と「欲しい利益を得るライン」を同じ物差しで並べられるので、目標が一気に具体的になります。

固定費を“見える化”するだけで景色が変わる

考え方が分かったところで、実際の会社の数字でやってみましょう。まず最初にやっていただきたいのは、月々の固定費(F)を全部書き出すことです。

たとえば、ある建設業の経営者さんのケースでは、こんな数字が出てきました。

  • 役員報酬:月30万円
  • 従業員の給与:月20万円
  • 事務所の家賃:月15万円
  • 借入金の返済(元金+利息):月25万円
  • 社会保険料:月8万円
  • 通信費・光熱費・保険料など:月10万円

合計すると月108万円。年間で約1,300万円です。

ここで一つ補足しておくと、厳密に言えば「借入金の元金返済」は会計上の固定費ではありません。損益計算書には出てこない、キャッシュフロー上の支出です。でも、経営者にとっては毎月確実に出ていくお金であることには変わりないですよね。この記事では「毎月必ず出ていくお金=固定費」とシンプルに捉えています。会計の正確さよりも、社長が実感として「毎月いくら必要か」を掴むことの方が、現場では大事だと思っているからです。

この方は売上3,500万円ほどでしたが、「月にいくら固定費がかかっているか」を一覧にしたのは実は初めてだったそうです。会計ソフトのデータを見れば出てくる数字なんですが、意外とこの「全体像」を把握していない経営者の方は多いんですよね。

書き出すときに一つだけ迷いやすいのが、「変動費なのか固定費なのか、どっちとも言えない費用」の扱いです。たとえば水道光熱費は、基本料金の部分は固定的で、稼働に応じて増える部分は変動的。パートさんの人件費も、シフトを繁忙に合わせて動かしているなら変動費に近くなります。ここは神経質になりすぎず、「売上がゼロの月でも出ていくか?」で仕分けるとスッキリします。ゼロの月でも出るなら固定費、売れたときだけ出るなら変動費。厳密な会計処理は税理士さんに任せて、経営判断に使う積み木としてはこのくらい割り切って大丈夫です。

必要売上の計算は、実はシンプル

固定費(F)が見えたら、次はそこから必要な売上を逆算します。ここで、先ほどの弁当店では「個数(Q₀)」で出しましたが、建設業のように一件ごとの単価がバラバラな業種では、金額ベースで出したほうが実務的です。式はこうです。

必要売上 = 固定費 ÷ 限界利益率

限界利益率というのは、売上のうち何割が限界利益(m×Q)として残るか、つまり m ÷ P のことです。世間でいう「粗利率」とほぼ同じ意味だと思ってください。個数で割るQ₀=F÷m と、金額で割るこの式は、実は同じことを別の単位で言っているだけです。

限界利益率は業種によって相場観がかなり違います。おおまかな目安を並べると、こんなイメージになります。

業種限界利益率の目安
飲食業55〜70%
小売業20〜40%
サービス業70〜90%
製造業30〜50%

あくまで大まかな相場観で、同じ業種の中でも扱う商品や仕入れの仕方でかなり幅が出ます。自社の値は、直近の決算書で「(売上高−変動費)÷売上高」を実際に計算して確かめるのが確実です。

ここで大事なポイントが一つあります。「限界利益率(粗利率)」の計算で使う「原価」に何を含めるか、という話です。

たとえば建設業であれば、材料費や外注費は現場ごとに変わりますよね。受注が増えれば材料費も増えるし、受注がなければゼロになる。こういう「売上に連動して増減するコスト」、つまり変動費(V)だけを原価として扱います。一方で、社員さんの毎月の給与は、現場があってもなくても基本的に同じ金額が出ていく。だから給与は固定費(F)側に入れるわけです。

整理するとこういうことです。

  • 原価(変動費 V):材料費、外注費など → 売上に連動して増減する
  • 固定費(F):人件費、家賃、返済、保険料など → 売上に関係なく毎月出ていく

この区分ができると、限界利益率が出せます。「売上から変動費を引いたものが限界利益。その限界利益で固定費を賄えるか?」という、あの積み木の構造そのものです。

先ほどの建設業の例だと、限界利益率がだいたい30%。そうすると、

108万円 ÷ 0.30 = 360万円/月(年間約4,320万円)

これが、利益ゼロでギリギリ会社が生き残れるライン、つまり「生存売上」です。図で言えば、あの損益分岐点をちょうど通過する売上高にあたります。

もう一歩だけ踏み込みます。実は、経営者にとっての「本当に必要なライン」は、会計上の損益分岐点より少し高いところにあります。なぜなら、さっきの借入金の元金返済のように、損益計算書には出てこないのに現金は確実に出ていく支出があるからです。そこで私は、こう定義しています。

生存売上の求め方 毎月必ず出ていくお金 (固定費+返済など損益外の支出) ÷ 限界利益率 (m ÷ P) 生存売上

ここまでだと「生きていくだけ」なので、もう一歩踏み込みます。たとえば役員報酬をいまの月30万円から50万円に上げたいなら、固定費は128万円に増える。必要売上は月427万円、年間で約5,100万円です。さらに、将来の設備更新に向けて月20万円ずつ積み立てておきたいなら、毎月出ていくお金は148万円。必要売上は月493万円、年間で約5,900万円になります。先ほどの「なんとなく6,000万円」が、実は「役員報酬50万円と将来への備えを確保するための、根拠ある目標だった」と、初めてストーリーが繋がるわけです。

創業時にも「生存売上」の視点は使える

この考え方は、既存の事業者だけでなく、これから創業する方にも非常に有効です。むしろ実績がない分、「何人来れば生き残れるか(Q₀)」を数字で言えることが、そのまま融資の説得力になります。

たとえば、フランチャイズで小規模サロンを開業したいという方のご相談では、初期投資550万円、月の固定費が約13万円という試算でした。サブスク型で月額5,000円のサービスで、しかも会員が増えても追加コストがほとんどかからない業態なので、月額の5,000円がほぼそのまま限界利益(m)になります。

ということは、これはまさに Q₀ = F ÷ m の出番です。固定費13万円を1人あたりの限界利益5,000円で割ると、13万円 ÷ 5,000円 = 月26人。つまり、ほぼ1日1人来てくれれば採算が取れる計算です。

「月26人」と聞くと、なんだかいけそうな気がしますよね。こうやって具体的な数字に落とし込むと、金融機関に融資を申し込む際にも「この事業は月26人来れば生き残れます」と説明できる。審査する側としても、根拠がある数字を見せてもらえると判断しやすくなります。弁当店の「1日80食」も、サロンの「1日1人」も、やっていることは同じで、大きな金額の目標を、現場が毎日追える小さな数に翻訳しているんです。

どのレバーを引くか——P・V・Q・F、動かすなら何から

生存売上が見えると、次の悩みは「じゃあ、利益を増やすには何を変えればいいのか」です。ここでも積み木で考えると、動かせるレバーは4つ(P・V・Q・F)しかないことが分かります。しかも、それぞれ効き方が全然違うんですよね。

① 単価を上げる(P↑)——いちばん効く

値上げのすごいところは、上げた分がまるごと限界利益(m)に乗ることです。V(変動費)は1個あたり変わらないので、Pを100円上げれば、mも丸ごと100円増える。先ほどの「値引きは利益の素を削る」の裏返しで、値上げは利益の素をそのまま太らせる。一番小さな労力で一番効くレバーなのに、多くの社長さんが最後まで手をつけたがらない場所でもあります。ここは値上げで客を離さない方法と、値段はコストから決めるものじゃないで詳しく書いていますので、あわせて読んでみてください。

② 数量を増やす(Q↑)——効くが、コストも一緒に増える

「とにかく数を売る」は分かりやすい打ち手ですが、注意が一つ。Qを増やすと、限界利益(m×Q)と一緒に変動費(V×Q)も増える。売れば売るほど仕入も外注も増えるので、手元に残るのは増えた分の「m」だけです。しかも数量を追うと、残業や広告費といった形で固定費まで膨らみがち。増収なのに手取りが増えない、という会社はたいていここでつまずいています。

③ 変動費を下げる(V↓)——地味だが確実

仕入先の見直しや、内製と外注の切り替えでVを下げると、これも丸ごとmが増えます。①の値上げが「お客様に交渉する」のに対し、こちらは「仕入先に交渉する」。お客様を動かさずに利益を厚くできるので、値上げが難しい局面での有力な一手です。

④ 固定費を下げる(F↓)——即効性はあるが、限度がある

固定費を削れば、その月からそのまま利益が増えます。即効性は抜群です。ただ、家賃も人件費も削れる幅には限界があるし、削りすぎると事業の足腰まで弱ってしまう。Fの削減は「止血」、P・V・Qの改善は「体質改善」。順番を間違えないことが大事です。どのレバーを引いても生存売上に届かない事業については、赤字事業を畳むタイミングの物差しで撤退の判断基準を解説していますので、あわせてご覧ください。

生存売上のラインが見えたら、次は「どの強みで、その売上をつくるか」の整理です。打ち手の棚卸しには現場で機能するクロスSWOTの作り方が使えます。

数字で並べてみると、効き方の違いは一目瞭然です。先ほどの弁当店(P=800円・V=320円・m=480円・F=96万円)で、それぞれ「1割ぶん」動かしたときに損益分岐点Q₀がどう変わるか比べてみましょう。単価を1割上げると(P=880円・m=560円)、Q₀は96万円÷560円で約1,715食まで下がります。逆に固定費を1割削っても(F=86.4万円)、Q₀は86.4万円÷480円で1,800食。同じ「1割」でも、単価アップのほうが分岐点を大きく下げてくれる。値上げがいちばん効く、という話がここでも数字で裏づけられます。

どのレバーから引くかは会社の状況によりますが、私は「まず①と③で1個あたりの利益(m)を厚くしてから、②で数量を伸ばす」順番をおすすめすることが多いです。mが薄いまま数量だけ追うと、忙しくなるばかりで疲弊してしまいますから。

借入金の返済が終わると、見える景色がまた変わる

もう一つ面白いのが、「借入金の返済が終わった後」の数字を見ることです。

月25万円の返済がなくなると、固定費は月83万円に下がります。必要売上は月277万円、年間で約3,320万円。つまり、5年後に借入を完済すれば、今の売上水準でも十分に利益が残る体質になるということです。

こういう中長期の時間軸を持つだけで、「今は苦しいけど、この先どうなるか」が見えてくる。返済中は正直キツいんですけど、出口が見えているのといないのとでは、経営の判断が全然違ってきますよね。

ちなみに、お子さんの進学や仕送りなど生活費側の支出が重なる時期こそ、感情で焦って無理な安売りや借り入れの積み増しに走る前に、固定費の全体像から冷静に整理することが大事です。

「生存売上」がある経営は強い

この考え方のいいところは、毎月の実績を「生存売上ライン」と比較するだけで、今自分がどの位置にいるかが一目で分かることです。

達成率が100%を切っていたら、すぐに営業を強化するのか、コストを削るのか、具体的な判断に移れる。「売上が足りない気がする」というモヤモヤした不安が、「あと月20万円分の受注が必要だ」という明確な行動目標に変わるんですね。さらに単価が分かっていれば、「あと20万円」を「あと何件・何個」まで落とし込めます。ここまで来ると、もう不安ではなく、ただのToDoです。

もう一つ、健康診断のように使える物差しが損益分岐点比率です。これは生存売上÷現売上で計算し、いまの売上が損益分岐点からどれくらい離れているかを見るもの。ちょうど、さきほどの「達成率」を裏返した数字にあたります。一般的な目安では、80%以下なら余裕あり、90%を超えると危険水域、100%を超えていれば今の売上では固定費を賄いきれていない状態、と読みます。先ほどの建設業さんに当てはめてみましょう。生存売上は月360万円、現売上は3,500万円を12で割っておよそ月292万円。損益分岐点比率は360÷292でおよそ123%です。100%を超えている、つまり今の売上水準では固定費にまだ届いていない、ということ。この社長さんが固定費の全体像を初めて一覧にしたのには、そういう切実な背景がありました。まずは自分の数値がどのゾーンにあるかを知る。健康診断と同じで、そこがすべての出発点になります。

季節変動がある業種の場合は、累積で追いかけるのもおすすめです。建設業なら下期が強い傾向がありますから、上期のうちに営業先行投資をしておいて、下期で一気に回収する、という戦略も立てやすくなります。

よくある質問

損益分岐点(生存売上)はどうやって出すのですか?

二通りあります。個数で出すなら Q₀ = 固定費 ÷ 1個あたりの限界利益(m)。金額で出すなら 必要売上 = 固定費 ÷ 限界利益率。どちらも中身は同じで、単位が違うだけです。限界利益(率)は、売上から材料費・外注費などの変動費を引いた残りで求めます。役員報酬をいくら取りたいかを固定費に足せば、「その手取りを確保するための売上」も同じ式で出せます。

「率」と「単価×数量」、どちらで考えるべきですか?

両方使えるのが理想ですが、現場で動かすなら単価×数量をおすすめします。「限界利益率30%」より「1食あたり480円、月2,000食」のほうが、スタッフさんと共有でき、日々の行動に落とせるからです。金額全体を掴むときは率、現場の目標に翻訳するときは単価×数量、と使い分けてください。

借入金の元金返済は固定費に入れていいのですか?

会計上は固定費(費用)ではなく、損益計算書には出てきません。ただ、経営者にとっては毎月確実に出ていくお金です。「会社が毎月いくら稼げば資金がもつか」を実感として掴むには、元金返済も含めて「毎月出ていくお金」として捉えるほうが、現場では役に立ちます。生存売上の式の左側を「固定費+返済など=毎月必ず出ていくお金」とひとまとめにしているのはそのためです。この記事の建設業の例(月108万円)のように、返済まで含めて固定費を数えているなら、その数字をそのまま限界利益率で割ればOKです。

まとめ:数字は「積み木」で捉える

難しい財務分析は後でいいんです。まずやっていただきたいのは、会社の数字を5つのブロック(P・V・m・Q・F)に分けて、月々の固定費を一覧にすること。それだけで、「自分の会社はいくつ/いくら売れば生き残れるのか」が、Q₀ = F ÷ m という一回の割り算で見えてきます。

会計ソフトを使っている方は科目別の集計を出せばすぐ分かりますし、手書きでもA4一枚に書き出せば十分です。大事なのは、率のパーセントで眺めるのではなく、「1個あたりいくら残って(m)、何個売れば固定費を超えるか(Q₀)」という積み木の形で掴むこと。そうすれば、値上げも、数量も、コスト削減も、どのレバーを引けば利益がどう動くかが、絵として見えるようになります。

根拠のある売上目標は、経営者の自信にもなりますし、融資の事業計画書に書いても「現実的で達成可能」と評価されやすい。逆に言えば、根拠のない数字を計画書に書いても、金融機関の方にはすぐ見抜かれてしまいます。

ぜひ一度、試してみていただければと思います。


生存売上が見えたら、次は「その売上をどう値段に乗せるか」です。値段はコストから決めるものじゃないもあわせてどうぞ。創業融資を具体的に検討されている方は、元銀行員が教える日本政策金融公庫の審査が参考になります。

「うちの生存売上を一緒に出してほしい」という方は、お気軽にご相談ください。融資の現場を見てきた元銀行員として、そして中小企業診断士として、御社の数字を一緒に整理します。