公開日:2026年6月29日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「人手が足りない。設備を入れて省力化したいが、カタログにある製品では自社の現場に合わない」——そんな山梨県内の経営者から増えているのが、省力化投資補助金の一般型に関するご相談です。
結論から言えば、一般型は「カタログにない、自社専用の省力化設備・システムをオーダーメイドで導入したい中小企業」のための枠です。補助上限は従業員規模に応じて最大1億円、補助率は中小企業1/2・小規模事業者2/3。カタログから選ぶだけの「カタログ注文型」と違い、自分で事業計画を作って審査を受けるのが大きな特徴です。第7回公募は2026年7月1日に受付が始まり、締切は7月31日17:00です。
はじめにお断りしておくと、融資の審査と補助金の審査は別物です。融資は「貸したお金が返ってくるか」を、補助金は「その事業に政策的な意義と実現性があるか」を見るもので、評価する主体も基準も異なります。ただ、どちらにも共通して効くのは「計画の数字に根拠があるか」を厳しく問う目です。私は元銀行員として長く法人融資の審査に携わってきました。その目線から、特につまずきやすい賃上げ要件と、採択される計画のつくり方を実務目線で整理します。
省力化投資補助金「一般型」とは|カタログ注文型との違い
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業がIoT・ロボット・AIなどを活用した省力化設備を導入する費用を補助する、国の制度です。この補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型があります。
カタログ注文型は、事務局があらかじめ登録した汎用製品の「カタログ」から選んで導入する、手続きの簡単な型です。これに対して一般型は、カタログに載っていない設備や、自社の現場に合わせたオーダーメイド(セミオーダーメイドを含む)の設備・システムを導入できる型です。その代わり、自社で事業計画書を作り、審査を受ける必要があります。
| 比較項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 対象設備 | カタログ登録済みの汎用製品 | オーダーメイドの専用設備・システム |
| 事業計画 | 簡易(製品を選んで申請) | 3〜5年の事業計画書を作成し審査 |
| 補助上限 | 製品・従業員数による | 750万円〜最大1億円 |
| 向いている事業者 | 定番の省力化機器で足りる | 自社の工程に合わせた自動化が必要 |
判断の目安はシンプルです。カタログに載っている製品をそのまま導入できるならカタログ注文型、自社の業務に合わせた設計が必要なら一般型です。なお公募要領上も、カタログに掲載されている製品はまずカタログ注文型での申請が原則とされています。ただし、その製品を導入環境に応じて周辺機器や機能を変えて導入する場合などは、一般型の対象になります。カタログ注文型の補助上限・要件は省力化投資補助金 カタログ注文型の解説記事で詳しく解説しています。
補助上限・補助率【従業員規模別の早見表】
一般型の補助上限は、従業員数によって変わります。カッコ内は「大幅賃上げの特例」を満たした場合の引き上げ後の上限です。
| 従業員数 | 補助上限(通常) | 大幅賃上げ特例の適用時 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は、中小企業が1/2、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3です(NPO・社会福祉法人・歯科医業を営む医療法人は、従業員20人以下なら2/3)。さらに「最低賃金引き上げに係る特例」の要件を満たす中小企業は、補助率が2/3に引き上げられます。
ここで一点、注意があります。以前の公募回にあった「1,500万円までは1/2、超過分は1/3」といった段階的な補助率は、第7回の公募要領には記載がありません。古い解説記事の数字をそのまま信じないよう、必ず最新の公募要領で確認してください。
そのほかの基本条件は次のとおりです。
- 対象経費:機械装置・システム構築費(必須)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費。うち、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必ず1つ以上必要です。
- 事業実施期間:交付決定日から18か月以内(採択発表日からは20か月以内)。
- 収益納付:求められません。
対象になる事業者・ならない事業
補助対象者は、中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人(NPO)、社会福祉法人、そして第7回から加わった歯科医業を営む医療法人です。資本金・常勤従業員数が業種ごとの中小企業の範囲内であることが条件になります。
一方で、次のような事業は補助の対象外です。一般型の趣旨を外すと不採択になるので、自社の計画が当てはまっていないか確認してください。
- 汎用設備やパッケージソフトを、オーダーメイド性なく単体で導入するだけの事業
- 事業の主たる課題の解決そのものを、他社へ外注・委託する事業
- 将来の対外販売を前提とした設備・システムの開発を含む事業
- 利用者に有償で提供する設備・システム・サービスの開発・改良を含む事業
また、応募申請時に従業員が0名の事業者、または後述する「1人当たり給与支給総額の対象となる従業員」が0名の事業者は、この補助金に応募できません。
【最重要】賃上げ要件の考え方|ここでつまずく人が多い
一般型でいちばん多いご質問が、賃上げ要件です。「労働生産性」より、むしろ1人当たり給与支給総額のほうが、対象者・基準年度・達成期限がわかりにくく、悩まれる方が多い部分です。順番に整理します。
まず、一般型では次の基本要件をすべて満たす3〜5年の事業計画を作る必要があります。
- ① 労働生産性の年平均成長率を+4.0%以上とすること
- ② 1人当たり給与支給総額の年平均成長率を+3.5%以上とすること
- ③ 事業場内最低賃金を、事業実施都道府県の最低賃金+30円以上の水準とすること
- ④ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表(従業員21名以上の場合のみ)
「1人当たり給与支給総額」の対象になるのは誰か
ここが最初の関門です。1人当たり給与支給総額の計算で対象になる従業員は、「基準年度およびその算定対象となる各事業年度において、全月分の給与等の支給を受けた従業員」です。つまり、その年度の途中に入社した人や、途中で退職した人は、全月分の給与を受け取っていないため、その事業年度に限って計算の対象から外す必要があります。1年を通して在籍し、毎月給与を受けている人だけで「1人当たり」を計算する、という考え方です。
算定対象となる給与等は、給料・賃金・賞与と、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当)など、給与所得として課税対象になるものです。福利厚生費・法定福利費・退職金は含みません。また、産前産後休業・育児休業・介護休業などで時短勤務になっている従業員は、計算から除くことができます。なお個人事業主の場合、事業主本人や専従者の給与は「1人当たり給与支給総額」には含めません。
基準年度はいつになるのか
基準年度は、応募申請時の直近の決算期です。ここを起点に、事業計画の最終年度までの伸び率を見ます。応募申請時の1人当たり給与支給総額は、指定様式の「1人当たり給与支給総額の確認書」を使って算出します。
いつまでに賃上げすればいいのか(最大の誤解ポイント)
「毎年3.5%ずつ上げ続けないといけないのか」と心配される方が非常に多いのですが、そうではありません。公募要領のFAQでも明確にされていますが、ここでいう「事業計画終了時点」とは、3年計画なら3年後、5年計画なら5年後を指します。そしてその最終年度に、基準年度と比べて年平均成長率(CAGR)で3.5%に達していればよく、途中の年度で目標の増加率に届いていなくても、返還を求められることはありません。
年平均成長率はあくまで「最終的な伸び」で見るため、3年計画で3.5%を目標にする場合、3年後に基準年度比で約10.87%以上(5年計画なら約18.8%以上)増えていればよい、という計算になります。毎年きっちり3.5%ずつ、という意味ではありません。
一方で、混同しやすいのが基本要件③の事業場内最低賃金(+30円)です。こちらは「毎年」クリアし続ける必要があり、補助事業完了の翌年度以降、毎年3月末時点で水準を満たしていないと、補助金の返還対象になります。「給与支給総額は最終年度で達成すればよい/最低賃金は毎年維持」。この違いを取り違えないことが大切です。
| 要件 | 達成のタイミング |
|---|---|
| 1人当たり給与支給総額 +3.5%(年平均) | 事業計画の最終年度に達成すればよい(途中年度の未達は不問) |
| 事業場内最低賃金 +30円以上 | 毎年維持(毎年3月末時点で確認) |
なお、目標値そのものは自社で設定し、交付申請時までに全従業員(または従業員代表)と役員に対して「賃金引き上げ計画の表明書」で表明する必要があります。賃上げは「申請して終わり」ではなく、実行が前提の約束だということです。
大幅賃上げの特例で上限を引き上げたい場合
補助上限を引き上げる「大幅賃上げの特例」を使うには、基本要件に加えて次の両方が必要です。
- ① 1人当たり給与支給総額の年平均成長率を、基本の+3.5%にさらに+2.5%上乗せした+6.0%以上とすること
- ② 事業場内最低賃金を、都道府県の最低賃金+50円以上の水準とすること
これを満たすと、従業員5人以下で+250万円、6〜20人で+500万円、21〜50人で+1,000万円、51〜100人で+1,500万円、101人以上で+2,000万円、上限が上乗せされます。ただし未達なら引き上げ分の返還を求められるので、実現可能性のある数字に限って狙うべきです。
元銀行員として正直に申し上げると、賃上げ計画が「絵に描いた餅」だと、審査でも実行段階でも必ず詰まります。付加価値額の増加と給与原資の増加が数字としてつながっているか。ここが審査で見られるポイントです。売上や粗利の裏付けがないまま賃上げ率だけ高く書いても、説得力は生まれません。
審査で評価される事業計画のつくり方
一般型はカタログ注文型と違い、事業計画の中身で採否が決まります。公募要領で示されている審査の視点を、現場の言葉に置き換えると次のようになります。
- 付加価値額の年平均成長率が高く、その算出根拠が妥当であること
- 賃上げ(労働生産性・1人当たり給与支給総額)の目標値に実現可能性があること
- 省力化指数(どれだけ業務量が削減されるか)と投資回収期間が根拠資料とともに示されていること
私がこれまで多くの計画を見送る側として見てきた経験から、申請前に必ずお伝えしているのは次の3点です。融資審査と補助金審査は別物ですが、「数字に根拠があるか」を問う目線は共通します。
- 解決できる課題だけを書く。自社で解決しきれない大きな課題まで広げて書くと、計画の実現性が疑われます。
- 主張には必ず数字の裏付けを。「省力化できる」ではなく、何時間の作業が何時間に減り、その工数をどんな付加価値(増産・新サービス・受注対応)に振り向けるのかまで落とし込む。
- 経費は自社の事業に合わせてカスタマイズする。私が関わったある補助金の不採択分析でも、事業内容自体はしっかりしているのに、事業者に合わない経費構成(汎用的な広告費が多いなど)で落ちた例がありました。テンプレートのような経費の並べ方は、事業との整合性を欠いて見えます。
「現状→課題→解決策→効果」のストーリーで書く
採択される計画書に共通するのは、設備の説明から入らず、ストーリーで読ませることです。具体的には次の流れで組み立てます。
- 現状:今の生産量・人員・稼働状況・受注に対する処理能力を、数字で示す
- 課題:どの工程がボトルネックで、人手不足が何を妨げているのか
- 解決策:その課題を解くために、なぜこの省力化設備が必要なのか(汎用品では足りずオーダーメイドが要る理由)
- 効果:導入後に削減できる工数と、その工数で生み出す付加価値・売上・賃上げ原資
審査員が見るのは「設備が高機能か」ではなく、この会社ならこの計画を実現できそうかです。「認知が不足」ではなく「新規受注の○%が紹介経由で、営業に手が回っていない」というように、一段具体的に書けるかで説得力が変わります。
省力化を「人減らし」と書かない(最大の落とし穴)
これは省力化投資補助金で特に多い失敗です。「人件費を○○万円削減できる」を主目的に書くと、かえって弱い計画になります。中小企業の現場では、省力化しても実際に人を減らせるケースは多くありません。減らした人件費が現金として浮くわけでもありません。本制度の目的も「人手不足の解消と、付加価値・賃上げにつなげること」です。
ですから訴求の着地点は、「浮いた工数を、これまで手が回らなかった付加価値の高い仕事(増産対応・新規受注・新サービス)に振り向ける」という前向きな成長ストーリーに置きます。削減ではなく、同じ人数でより多くを生み出す——この描き方が、付加価値額の成長目標とも自然につながります。
加えて、第7回では機械装置・システムの仕様や積算根拠の資料がより重視されます。システム構築費を計上する場合は、積算根拠が明確な見積書と仕様書の提出が求められます。「システム開発一式」のような曖昧な見積では通りません。1件あたり50万円(税抜)以上の発注は、原則として相見積もりが必要です。見積書は業者任せにせず、補助対象・対象外の区分、日付、有効期限まで入れた雛形を作って業者に渡すのが確実です。現場の業者は補助金様式に不慣れなことが多く、ここでのつまずきが意外と多いためです。
採択率を底上げする加点項目も用意されています。事業承継・M&Aの実施、最低賃金や事業場内最低賃金の引き上げ、中小機構の「省力化ナビ」の活用、えるぼし・くるみん認定、健康経営優良法人、生産性向上支援センターの利用などです。自社で取れる加点は早めに準備しておきましょう。採択率を上げる準備の全体像は、補助金の採択率を上げるために申請前にやるべき3つのことで詳しく解説しています。
申請の流れと第7回スケジュール
申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。取得に時間がかかるため、まだお持ちでない方は今すぐ手続きを始めてください。第7回公募の日程は次のとおりです(2026年6月時点。最新は公式サイトでご確認ください)。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年6月5日(金) |
| 申請受付開始 | 2026年7月1日(水)10:00 |
| 申請締切 | 2026年7月31日(金)17:00 |
| 採択発表(予定) | 2026年11月中旬 |
大まかな流れは、①GビズIDプライムの取得 → ②事業計画書・見積書・賃金引き上げ計画の表明書などの準備 → ③申請ポータルから応募 → ④審査・採択発表 → ⑤交付申請 → ⑥設備導入・支払い → ⑦実績報告 → ⑧補助金の入金、です。補助金は原則「後払い」で、設備代金はいったん自社で立て替える必要があります。つなぎ資金の確保まで含めて計画することが欠かせません。資金繰りの設計は、融資審査の視点と合わせて考えると安定します。
ものづくり補助金との使い分け
「設備投資の補助金」としてよく比較されるのが、ものづくり補助金です。ざっくり整理すると、ものづくり補助金は革新的な製品・サービスの開発のための設備投資、省力化投資補助金(一般型)は人手不足の解消=省力化のための設備投資が主眼です。新製品開発が目的ならものづくり補助金、現場の自動化・省人化が目的なら一般型、という選び方が基本になります。判断に迷う場合はものづくり補助金と省力化投資補助金の違い|どっちを選ぶで判断軸を整理していますので、あわせてご覧ください。詳しくはものづくり補助金 山梨の解説記事もどうぞ。
池田計画合同会社では、自社に合う制度の診断から、事業計画書の作成、交付申請・実績報告までワンストップで支援しています。AI補助金診断・補助金支援サービスもあわせてご活用ください。山梨県内の他の補助金を横断で確認したい方は、山梨県の中小企業が使える補助金・助成金一覧もご覧ください。
賃上げ要件の試算や、カタログ注文型との比較で自社がどちらに向くかは、書面だけでは判断しにくい部分も多くあります。具体的な数字で相談したい方はお問い合わせください。決算書と設備投資の計画を伺いながら整理します。
よくある質問
カタログ注文型と一般型の違いは何ですか?
カタログ注文型は、登録済みの汎用製品をカタログから選んで導入する簡易な型です。一般型は、カタログにない設備や自社の現場に合わせたオーダーメイドの設備・システムを、3〜5年の事業計画書を作って審査を受けたうえで導入する型です。自社専用の設計が必要なら一般型を選びます。
賃上げは毎年3.5%ずつ必要ですか?
いいえ。1人当たり給与支給総額は、事業計画の最終年度に年平均成長率3.5%(3年計画なら基準年度比で約10.87%)に達していればよく、途中年度の未達では返還を求められません。ただし、事業場内最低賃金(都道府県最低賃金+30円以上)は毎年維持する必要があり、こちらは混同しないよう注意してください。
基準年度はいつですか?
応募申請時の直近の決算期が基準年度です。ここを起点に、事業計画の最終年度までの伸び率を計算します。
1人当たり給与支給総額の対象になる従業員は誰ですか?
基準年度およびその算定対象年度に、全月分の給与等の支給を受けた従業員です。年度途中の入社・退職などで全月分を受けていない人は、その年度に限り計算から除きます。個人事業主本人や専従者の給与は含みません。
第7回はいつまで申請できますか?
第7回公募の申請受付は2026年7月1日10:00開始、締切は7月31日17:00です。採択発表は2026年11月中旬の予定です。GビズIDプライムの取得に時間がかかるため、早めの準備をおすすめします。
個人事業主でも申請できますか?
中小企業者の要件(業種ごとの資本金・常勤従業員数)を満たせば、個人事業主も対象になります。ただし、応募申請時に対象となる従業員が0名の場合は応募できません。自社が対象になるか不安な場合はご相談ください。