公開日:2026年6月28日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「山梨でものづくり補助金を使いたいが、自社が対象になるのか、いくらもらえるのか、そもそも通るのか」——設備投資を考える山梨県内の経営者から、よくいただくご相談です。

結論から言えば、「ものづくり補助金」は山梨県の中小企業・小規模事業者であれば製造業に限らず利用できる制度でした(現在は後継制度に引き継がれています)。第23次時点の通常類型(製品・サービス高付加価値化枠)は、従業員規模に応じて補助上限750万〜2,500万円、補助率は中小企業1/2・小規模事業者2/3。申請すれば通る制度ではなく、近年の採択率はおおむね3〜5割で推移し、半数前後は不採択になっていました。

はじめにお断りしておくと、融資の審査と補助金の審査は別物です。融資は「貸したお金がきちんと返ってくるか」を、補助金は「その事業に政策的な意義と実現性があるか」を見るもので、評価する主体も基準も異なります。ただ、どちらにも共通して効くのは「計画の数字に根拠があるか」を厳しく問う目です。私は元銀行員として長く法人融資の審査に携わり、事業計画を見送る側の立場を数多く経験してきました。その目線から、補助金審査でも評価される「落ちない申請のつくり方」をお伝えします。

【現在の位置づけ】単独の「ものづくり補助金」の公募は第23次(申請締切2026年5月8日)で終了し、新事業進出補助金と統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に引き継がれました。第1回公募は2026年8月31日〜9月30日18:00の受付です。これから申請を検討する方は、本記事は制度の背景・審査の考え方を知るための参考情報とし、申請の実務は新制度の解説記事をご覧ください。


ものづくり補助金とは(2026年版・沿革)

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者が革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援してきた、国の代表的な補助金です。山梨県内でも製造業を中心に利用実績が多い制度でした。

直近では第23次公募(申請締切2026年5月8日)が受付を終了し、単独の公募はここで終了しました。2026年度からは中小企業新事業進出補助金と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として再編されています。以下の枠・補助率・審査の考え方は第23次時点のものですが、審査で評価される計画の作り方や落ちる典型パターンは新制度でも共通する部分が多く、参考になります。新制度の枠組み・補助上限・申請の流れは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の解説記事で解説しています。

山梨の事業者が使えた事業枠(第23次時点)

第23次時点の制度では、主に次の2つの枠がありました(かつての「省力化(オーダーメイド)枠」は廃止されていました)。

  • 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型):新製品・新サービスの開発に必要な機械装置・システム導入を支援。山梨の事業者が最も使う中心的な枠です。
  • グローバル枠:海外展開を通じて国内の生産性向上を図る事業が対象。補助上限は従業員数にかかわらず最大3,000万円(大幅賃上げ特例適用時4,000万円)。

補助率・補助上限(従業員数別)

通常類型の補助上限は、従業員規模で変わります。大幅賃上げ特例(給与支給総額を年平均+6%、かつ事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上とする等)を満たすと、上限が上乗せされます。

従業員数補助上限(通常)大幅賃上げ特例適用時
5人以下750万円850万円
6〜20人1,000万円1,250万円
21〜50人1,500万円2,500万円
51人以上2,500万円3,500万円

補助率は中小企業が1/2、小規模事業者・再生事業者は2/3です。この差は大きく、たとえば1,500万円の設備投資なら、1/2では750万円、2/3では1,000万円と、250万円もの差になります。

そして見落とされがちなのが、賃上げ要件です。第23次では、給与支給総額の年平均+3.5%以上の増加が原則要件となっており(従来の総額ベース2.0%から強化)、未達の場合は補助金の返還を求められることがあります。申請前に、この賃上げが自社で本当に実現可能かを必ず確認してください。

※補助率・上限・賃上げ要件・締切は公募回ごとに変わります。具体的な数値は、申請する回の正式な公募要領で必ずご確認ください

対象になる経費・ならない経費

ものづくり補助金は「設備投資」が中心です。何が対象で何が対象外かを取り違えると、申請の組み立てが崩れます。

  • 対象になりやすい:機械装置・システム構築費(本体)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費 など
  • 対象にならない・注意:単なるパソコンやスマホ等の汎用設備、土地・建物の取得、運転資金、申請前に発注・契約した経費(交付決定前の支出は原則対象外)

特に「Webサイト制作費」のような経費は、PR目的か、生産性を上げるシステムの一部かで、補助の扱いも金額も大きく変わります。対象経費の線引きは、計画段階で支援機関と詰めておくのが安全です。


審査員はここで落とす──不採択になる典型7つと回避策

ここからが本題です。前述のとおり融資と補助金では審査の目的も基準も違いますが、「審査する側が確認したい点に、的確に答えが返ってくるか」で評価が決まるという一点は共通します。融資審査と補助金支援の両方に関わってきた経験から、補助金で落ちる申請に繰り返し現れる7つの型を挙げます。

① 解決できない課題まで書いてしまう

経営課題を並べるとき、今回の補助事業で解決できる課題だけを書くのが鉄則です。職人不足や立地の悪さのような構造的課題まで正直に書くと、審査員に「この事業者は大丈夫か」という不安を与え、逆効果になります。

② 主張に数字の裏付けがない

「リピーターが多い」「顧客ニーズがある」だけでは審査員は信じません。「何人」「何%」と概数でいいので数字を入れる。一部にデータや図表を入れるだけで、計画のリアリティは大きく変わります。

③ 経費が事業に合っていない

同業他社の申請書を真似た「横並びの経費」は通りません。実際、内容の良い計画でも、事業者に合わない経費構成(プレスリリースばかり等)で不採択になった例を何度も見ています。経費はその事業者の事業内容に合わせてカスタマイズするのが原則です。

④ 売上実績ゼロの新事業を主役にする

審査では「すでに実績のある事業をさらに伸ばす」構図が有利です。売上実績がゼロの新規事業は「なぜこの事業をやるのか」「販路開拓の必然性」を示しにくく不利になります。経営者の経歴など、その事業をやる必然性を語れる材料を軸に据えてください。

⑤ 現状→課題→解決策→効果のストーリーが切れている

評価される事業計画は、現状分析→課題→解決策→効果が一本の線でつながっています。単なる「売上目標」ではなく、その数字に至る根拠のストーリーが勝敗を分けます。

⑥ 補助率の条件を確認せず資金計画が崩れる

補助率1/2と2/3では、数百万円単位で手元資金が変わります。提案を始める前に、過去の賃金履歴などで2/3条件に該当するかを先に確定させ、該当しないなら1/2前提で無理のない資金繰りを組むべきです。後から「思ったより自己負担が大きい」とならないために。

⑦ 形式不備で審査に乗らない

GビズIDプライムの取得、認定経営革新等支援機関の確認書、必要書類、申請枠の選択、補助率の記載——こうした初歩的なミスで門前払いになる例は後を絶ちません。GビズIDの発行には数週間かかることもあるため、早めの準備が必要です。

採択率そのものを上げる準備については、補助金の採択率を上げるために申請前にやるべき3つのことでさらに詳しく解説しています。


山梨の採択事例はどこで見られるか

自社の計画を組み立てる前に、同じ山梨県内でどんな事業が採択されているかを知ることは有効です。山梨県中小企業団体中央会が公表する「ものづくり補助金 成果事例集」では、県内製造業を中心とした採択事業の概要を確認できます。地域・規模の近い事例は、自社の計画の「現実的な落としどころ」を測る物差しになります。

申請から入金までの流れ

ものづくり補助金は、採択されて終わりではありません。全体像は次のとおりです。

  • 事前準備:GビズIDプライム取得、認定支援機関への相談、賃上げ・補助率要件の確認
  • 申請:事業計画書の作成・電子申請(公募締切まで)
  • 採択発表 → 交付申請・交付決定(ここで初めて発注・契約が可能に)
  • 事業実施(設備導入・支払い)
  • 実績報告 → 補助金の入金(後払い)
  • 事業化状況報告(採択後数年間の義務)

補助金は原則「後払い」です。設備代金はいったん自社で立て替える必要があり、つなぎ資金の確保まで含めて計画することが欠かせません。ここは融資とセットで考えるべき部分で、融資審査の視点と合わせて設計すると資金繰りが安定します。

申請代行・支援の料金はどう考えるか

「自分で出せるのか、専門家に頼むべきか」も多いご質問です。支援の費用は、着手金と成功報酬(採択額の10%前後が一つの目安)を組み合わせる形が一般的です。判断の基準はシンプルで、支援を受けることで採択率がどれだけ上がり、補助上限(最大2,500万円)にどれだけ近づけるかという費用対効果です。補助率1/2・2/3の判定ミスや経費区分の誤りひとつで数百万円が動く制度なので、初めての申請や過去に不採択を経験した方ほど、早めの相談に価値があります。

池田計画合同会社では、自社に合う制度の診断から、計画書の作成、交付申請・実績報告までワンストップで支援しています。AI補助金診断・補助金支援サービスもあわせてご活用ください。山梨県内の他の補助金を横断で確認したい方は、山梨県の中小企業が使える補助金・助成金一覧もご覧ください。

これから申請するなら、まず自社の投資が新制度のどの枠に当てはまるかを確認するのが最初の一歩です。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の解説記事とあわせて、お問い合わせいただければ、旧制度からの移行を踏まえた申請設計をご相談いただけます。


よくある質問

ものづくり補助金は山梨県の事業者でも使えますか?

単独の「ものづくり補助金」としての新規公募は第23次(申請締切2026年5月8日)で終了しています。現在は新事業進出補助金と統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が後継制度で、山梨県内の事業者も、製造業に限らず申請できます。詳しくは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の解説記事をご覧ください。

採択率はどのくらいですか?落ちる主な理由は?

近年はおおむね3〜5割で推移しています。落ちる主な理由は、解決できない課題まで書く、数字の裏付けがない、経費が事業に合っていない、形式不備など。本記事の「不採択になる典型7つ」をご確認ください。

補助金はいつ振り込まれますか?

原則として後払いです。事業を実施し、支払いを済ませ、実績報告が承認された後に入金されます。設備代金はいったん立て替えが必要なため、つなぎ資金の準備が重要です。

賃上げ要件は必達ですか?

第23次では給与支給総額の年平均+3.5%以上の増加が原則要件で、未達の場合は補助金の返還を求められることがあります。自社で実現可能かを申請前に必ず確認してください。

申請代行に頼むといくらかかりますか?自分で出せますか?

着手金+成功報酬(採択額の10%前後が目安)が一般的です。自力申請も可能ですが、補助率判定や経費区分の誤りで数百万円が動くため、初めての方は支援を受ける費用対効果が高い傾向にあります。