公開日:2026年6月29日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「省力化の補助金を使いたいが、自社で一から事業計画を作るのは負担が大きい」——そんな山梨県内の経営者に、まず検討していただきたいのが省力化投資補助金のカタログ注文型です。
結論から言えば、カタログ注文型は「あらかじめ登録された省力化製品のカタログから選んで導入する、手続きが簡単な枠」です。補助率は1/2以下、補助上限は従業員規模に応じて200万〜1,000万円(賃上げ達成で300万〜1,500万円)。自社専用の設備を一から設計する一般型と違い、定番の省力化機器・システムを、販売事業者と一緒に申請して導入できるのが特徴です。公募は2027年3月末頃まで随時受付されています(受付状況は変わるため、必ず公式サイトで最新の締切をご確認ください)。
本記事は2026年3月19日の制度改定を反映した内容です。この改定で随時受付の期間が延長された一方、補助上限額は見直され、従業員20人以下の区分では改定前より引き下げられています。改定前の上限額のまま解説している記事もまだ見かけるため、申請前には必ず改定後の数値で確認してください。
私は元銀行員として法人融資の審査に携わってきました。その目線で、カタログ注文型が「どんな事業者に向くのか」「申請でどこに気をつけるべきか」を実務目線で整理します。
カタログ注文型とは|カタログから選ぶ仕組み
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業がIoT・ロボット等の省力化設備を導入する費用を補助する国の制度で、「カタログ注文型」と「一般型」の2類型があります。
カタログ注文型は、事務局が省力化に効果があると認めた汎用製品を「製品カタログ」に登録し、その中から中小企業が必要な製品を選んで導入する仕組みです。製品は登録された販売事業者と共同で申請します。自社で省力化指数や複雑な事業計画を一から組み立てる必要がなく、導入する製品が決まれば手続きが進めやすいのが最大のメリットです。
製品カタログは公式サイト(製品カタログのページ)で随時更新されています。清掃ロボット、配膳ロボット、検品・自動倉庫システム、券売機・セルフレジなど、業種ごとの定番製品が登録されています。
補助率・補助上限【従業員規模別の早見表】
補助率は1/2以下です。補助上限は従業員数で変わり、カッコ内は大幅な賃上げを達成した場合に引き上げられる上限です。
| 従業員数 | 補助率 | 補助上限(通常) | 大幅賃上げ達成時 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 1/2以下 | 200万円 | 300万円 |
| 6〜20人 | 500万円 | 750万円 | |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
補助対象経費は、省力化製品の本体価格と、導入に要する費用(導入経費)です。補助上限は交付申請時点の従業員数で決まります。
あわせて覚えておきたいのが収益納付の扱いです。以前のカタログ注文型は、効果報告で本事業の成果による収益が認められると受領額を上限に収益納付を求められる仕組みでしたが、制度改定により、現在は収益納付は求められない扱いになっています。制度の細部は変更されることがあるため、最新の取り扱いは公式サイトの公募要領でご確認ください。
要件|労働生産性と賃上げの考え方
カタログ注文型でも事業計画は必要ですが、賃上げの位置づけが一般型とは異なります。
基本要件は「労働生産性の向上目標」です。補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比べて労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる計画を策定します(一般型は4.0%以上)。
そのうえで賃上げは、補助上限を引き上げたい場合の追加要件という位置づけです。具体的には、申請時と比べて(a) 事業場内最低賃金を3.0%以上引き上げ、(b) 給与支給総額を6%以上増加させることの両方を補助事業期間終了時点で達成する見込みの計画を立てた事業者は、上限がカッコ内の額に引き上げられます。この最低賃金の基準は2026年3月19日の改定で「45円以上」から見直されたものです。申請時に賃金引き上げ計画を従業員へ表明していることが条件で、達成できなければ引き上げ分は減額されます。
ここでいう給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)に支払った給与(所定内給与のみ。賞与・福利厚生費・法定福利費・退職金、役員報酬等は含まない)を指します。一般型の「1人当たり給与支給総額」とは対象範囲も定義も異なるので、混同しないよう注意してください。
どんな製品が選べるのか——業種別のカタログの見方
「自社の業種で、そもそも何が導入できるのか」。ここが一番知りたいところだと思います。製品カタログは事務局が公表している「製品カテゴリ」のPDFと検索ページで確認できます。2026年7月時点では大きく3つの系統に分かれ、全体で約190の製品区分が登録されています(登録数は随時更新されるため、最新は公式サイトの製品カタログでご確認ください)。
| 系統 | 主な製品カテゴリの例 | 想定される業種 |
|---|---|---|
| 主に非製造業向け | 清掃ロボット、配膳ロボット、券売機、自動精算機、自動チェックイン機、スチームコンベクションオーブン、自動フライヤー、業務用自動食器類洗浄機、電子棚札システム、美容トリートメント機器 | 飲食サービス業、宿泊業、小売業、生活関連サービス業 ほか |
| 非製造業・製造業に共通 | 無人搬送車(AGV・AMR)、検品・仕分システム、自動倉庫、パレタイズロボット、食品スライサ・カッタ、産業用枚葉デジタル印刷機、測量機、パワーアシストスーツ | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業、建設業 ほか |
| 主に製造業向け | 5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、ローダ付きNC旋盤、自動裁断機、CNC三次元測定機、AI外観検査用画像処理システム、成形品取出しロボット、アーク溶接ロボット | 製造業(加工・生産・検査) |
業種ごとに、実際にどう組み合わせるかを想定例で見てみます。いずれも上に挙げた実在のカテゴリだけで構成しています。
- 飲食店(想定例:席数40のラーメン店):入口に券売機か自動精算機を置いて注文と会計を無人化し、厨房のスチームコンベクションオーブンや自動フライヤーで調理を標準化。ホールに配膳ロボット、洗い場に業務用自動食器類洗浄機を組み合わせると、ピーク時の人手が集中する工程を面で軽くできます。
- 宿泊業(想定例:客室20室のビジネスホテル):フロントに自動チェックイン機を入れて受付とチェックインを省人化し、客室・共用部の清掃に清掃ロボット。リネン類自動供給装置(フィーダー)まで含めれば、洗濯・仕上げの工程まで手が回るようになります。
- 製造業(想定例:従業員15名の金属加工業):工程間の運搬を無人搬送車(AGV・AMR)に任せ、機械加工を複合加工機やローダ付きNC旋盤へ集約。仕上がりの検査をCNC三次元測定機やAI外観検査用画像処理システムに置き換えると、熟練者に依存しがちな検査工程の負担を下げられます。
ひとつだけ注意をお伝えしています。カタログを開くと製品名がずらりと並んでいるので、つい「この機械が良さそうだ」と製品から入ってしまいがちです。ですが私が相談の場でおすすめしているのは逆の順番です。まず自社の一日の作業を工程に分け、どの工程に一番人手と時間がかかっているかを洗い出す。そのうえで「その工程の人手を減らす製品はカタログのどこにあるか」と探すと、同じカタログでも見え方が変わります。同じ飲食店でも、詰まっているのが会計待ちなら自動精算機、調理の属人化ならスチームコンベクションオーブンと、選ぶべきカテゴリは変わります。製品ありきではなく「どの工程の人手を減らすか」から逆算することが、補助金を「導入はしたが効果が薄い」で終わらせないための最初の分かれ道です。
一般型との違い|どちらを選ぶべきか
「カタログ注文型と一般型、どちらを選ぶべきか」は最も多いご質問です。判断軸はシンプルで、導入したい設備がカタログに載っているかどうかです。
| 比較項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 対象設備 | カタログ登録済みの汎用製品 | オーダーメイドの専用設備・システム |
| 補助上限 | 200万〜1,500万円 | 750万〜1億円 |
| 補助率 | 1/2以下 | 1/2〜2/3 |
| 労働生産性の目標 | 年平均+3.0%以上 | 年平均+4.0%以上 |
| 賃上げ | 上限引き上げ用の追加要件 | 基本要件(1人当たり給与支給総額+3.5%) |
| 収益納付 | なし(制度改定により撤廃) | なし |
| 手続きの負担 | 比較的軽い | 事業計画書の作成が必要で重い |
公募要領上も、カタログに掲載されている製品は原則カタログ注文型で申請することとされています。定番の省力化機器で課題が解決できるならカタログ注文型、自社の工程に合わせた設計が必要なら一般型、というのが基本の選び方です。両制度の判断軸をさらに整理したい方はものづくり補助金と省力化投資補助金の違い|どっちを選ぶもあわせてご覧ください。詳しくは省力化投資補助金 一般型の解説記事もどうぞ。
カタログから選ぶ際に、診断士として実務でお伝えしていること
カタログ注文型は手続きが軽い分、「カタログに載っているから」という理由だけで製品を決めてしまいがちです。中小企業診断士として申請のご相談を受けるなかで、事前に確認いただきたい点を3つに整理しました。
- 現場の動線まで含めて課題が解決するか:カタログ製品はあくまで汎用品です。導入後の設置スペース、既存設備との連携、操作を担う人員まで含めてシミュレーションしないと、「導入したのに稼働率が上がらない」という結果になりかねません。
- 投資回収を自分の数字で計算する:収益納付が撤廃されたとはいえ、補助金はあくまで導入コストの一部を軽くする制度です。補助を差し引いた自己負担分を、削減できる工数や増える処理能力でどれだけの期間で回収できるかは、公募要領とは別に自社で試算しておくべきです。
- 販売事業者の実績と保守体制を確認する:カタログ注文型は販売事業者との共同申請が前提です。導入後の保守・トラブル対応まで含めて任せられる相手かどうかは、製品スペックと同じくらい重要な判断材料になります。
迷ったときの一般的な目安は、投資額が数百万円規模で、汎用品で課題が解決できるならカタログ注文型、オーダーメイドの設計や大型投資が必要なら一般型です。判断に迷う典型ケースはものづくり補助金と省力化投資補助金の違いでも具体例つきに解説しています。
申請の流れと注意点
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。大まかな流れは、①製品カタログから導入製品と販売事業者を選ぶ → ②販売事業者と共同で交付申請 → ③審査・採択 → ④製品導入・支払い → ⑤実績報告 → ⑥補助金の入金、です。公募は2027年3月末頃まで随時受け付けられる見込みです(2026年3月19日の改定で従来の2026年9月末頃から延長されました。受付状況は変わるため、最新の締切は必ず公式サイトでご確認ください)。
元銀行員の立場から一点お伝えすると、補助金は原則「後払い」です。製品代金はいったん自社で立て替えるため、つなぎ資金の準備まで含めて計画してください。資金繰りの考え方は融資審査の視点とあわせて設計すると安定します。採択率を上げる準備は補助金の採択率を上げるために申請前にやるべき3つのことで解説しています。
池田計画合同会社では、自社に合う制度の診断から申請・実績報告までワンストップで支援しています。AI補助金診断・補助金支援サービスもご活用ください。山梨県内の他の補助金は山梨県の中小企業が使える補助金・助成金一覧でも確認できます。
カタログに載っている製品で自社の課題が解決できそうか、上限額をどう見込めばよいか——判断に迷う段階でも構いません。お問い合わせいただければ、決算書や現場の状況を伺いながら、カタログ注文型が向くのか一般型が向くのかを一緒に整理します。
よくある質問
カタログ注文型と一般型はどちらが簡単ですか?
一般的にはカタログ注文型のほうが手続きの負担は軽いです。登録済みの製品をカタログから選び、販売事業者と共同で申請する仕組みのため、自社で省力化指数や詳細な事業計画を一から組み立てる必要がある一般型より進めやすいです。
カタログ注文型の補助率と上限はいくらですか?
補助率は1/2以下です。2026年3月19日の改定後は、補助上限は従業員5人以下で200万円、6〜20人で500万円、21人以上で1,000万円。大幅な賃上げ(事業場内最低賃金+3.0%かつ給与支給総額+6%)を達成すると、それぞれ300万円・750万円・1,500万円に引き上げられます。
カタログ注文型でも賃上げは必須ですか?
基本要件は労働生産性を年平均3.0%以上向上させることで、賃上げは上限を引き上げたい場合の追加要件という位置づけです。賃上げが基本要件になっている一般型とは扱いが異なります。
収益納付はありますか?
制度改定により、現在は収益納付は求められない扱いになっています。以前は効果報告で本事業の成果による収益が認められる場合に受領額を上限とした収益納付が求められていましたが、現在この仕組みはありません。制度は今後も見直される可能性があるため、最新の取り扱いは公式サイトの公募要領でご確認ください。
いつまで申請できますか?
カタログ注文型は2026年3月19日の改定で受付期間が延長され、2027年3月末頃まで随時受付の見込みです。製品カタログへの登録は受付終了の一定期間前で締め切られます。受付状況は変わることがあるため、最新の締切は必ず公式サイトでご確認ください。