事業承継・M&A

中小企業事業再編投資損失準備金とは|M&Aで取得価額の70%を損金算入できる要件と落とし穴【2026年】

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池田計画合同会社

公開日:2026年9月28日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「知り合いの会社を買わないかと言われています。税金が安くなる制度があると聞いたのですが」。買い手側としてM&Aを検討している社長から、こういう相談を受けることがあります。その制度の名前が、中小企業事業再編投資損失準備金です。

結論から言えば、中小企業事業再編投資損失準備金とは、経営力向上計画の認定を受けた中小企業が計画に沿って他社の株式を買ったとき、その取得価額の70%までを準備金として積み立て、その事業年度の損金に算入できる制度です。買った会社に簿外債務などが見つかって株式の価値が下がるリスクに、あらかじめ備えるための仕組みです。2027年3月31日(令和9年3月31日)までに経営力向上計画の認定を受けることが条件で、取得価額10億円以下の株式取得に限られます。

ただし、ここを勘違いすると資金計画を間違えます。この制度は税金を減らす制度ではなく、税金を払う時期を後ろにずらす制度です。据置期間が明けたあと、積み立てた金額は5年かけて益金に戻ってきます。私は元銀行員として法人融資の審査に携わり、いまは中小企業診断士として山梨で融資と経営計画の相談を受けています。県の事業承継・引継ぎ支援センターでの支援経験もあります。審査側にいた経験から言えば、買収資金を借入で用意した会社にとって、この「戻ってくる年」がどこに当たるかは、制度の中身そのものと同じくらい重要です。

この記事では、まず制度の骨格と「繰延べ」の意味を数字で押さえます。そのうえで対象になる会社・対象になるM&A・手続きの順番・取り崩しになる場面を、租税特別措置法56条と中小企業庁の手引き・Q&Aの原文で確認していきます。最後に、令和6年度税制改正で加わった拡充枠(中堅・中小グループ化税制)を中小企業が使えるのかどうかも整理します。

中小企業事業再編投資損失準備金とは何か?制度の骨格を4行で押さえる

制度の要点は4つです。中小企業庁の手引き(令和6年9月)と租税特別措置法56条の記載を並べると、次のようになります。

項目内容
何をすると使えるか事業承継等事前調査に関する事項を記載した経営力向上計画の認定を受け、その計画に沿って他社の株式・持分を取得する
いくら損金になるか株式等の取得価額(購入代価+購入手数料等)の70%を限度に、任意の金額
いつまでの制度か2027年3月31日(令和9年3月31日)までに経営力向上計画の認定を受けたもの
いつ戻ってくるか積み立てた事業年度末の翌日から5年の据置期間を経過した後、5年間の均等取崩しで益金算入

この制度は「経営資源集約化税制」と呼ばれる政策パッケージの一つで、中小企業庁のページでは中堅・中小グループ化税制という呼び名も併記されています。検索でこの3つの名前に出会って混乱する方が多いのですが、税法上の名前は租税特別措置法56条の「中小企業事業再編投資損失準備金」で、これが正式名称です。経営資源集約化税制にはほかに、中小企業経営強化税制のD類型(経営資源集約化に資する設備)も含まれます。

そして、入口はどちらも同じです。経営力向上計画の認定を受けていることが前提になります。計画の認定なしにこの準備金だけを使うことはできません。

なぜ「節税」ではなく「課税の繰延べ」なのか?10年分を数字で並べてみる

ここが、いちばん誤解されるところです。準備金を積み立てた年は損金が立ちますが、その分は据置期間のあとに益金として戻ります。条文はこう書いています。積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した金額について、「損金の額に算入された……金額に当該各事業年度の月数を乗じてこれを六十で除して計算した金額」を益金に算入する(租税特別措置法56条2項)。60で除する、つまり60か月=5年で均等に戻す、という意味です。

言葉だけでは実感が湧かないので、取得価額3億円のM&Aを例に10年分を並べます。以下は試算であり、制度が定めた数値ではありません。法人税・地方法人税・法人住民税・事業税を合わせた法定実効税率を約34%と仮定しています(実際の税率は資本金・所得水準・自治体によって変わります)。また買収資金3億円を10年元金均等で借り入れた場合の元金返済も並べました。

年度準備金の動き税負担への影響(試算)借入元金の返済(試算)
1年目(株式取得)2.1億円を積立・損金算入約7,140万円の軽減3,000万円
2〜5年目据置期間(動きなし)影響なし各年3,000万円
6〜10年目毎年4,200万円を益金算入各年 約1,428万円の増加各年3,000万円
合計積立2.1億円=取崩2.1億円±0(時期の移動のみ)3億円

10年を通した税負担の合計は変わりません。動くのは時期だけです。にもかかわらずこの制度に意味があるのは、M&Aの直後は統合コストがかかり、買った会社の利益がまだ乗ってこない時期だからです。その一番苦しい年の税負担を軽くして、余力を統合に回せる。これが制度の趣旨です。

そのうえで、審査側にいた人間として1つ申し上げます。表の右2列を見比べてください。6年目から10年目は、元金返済3,000万円に加えて、繰延べた税が年1,428万円ずつ戻ってくる年に当たります。買収した事業の利益が計画どおり乗っていれば問題ありません。逆にシナジーが出ず利益が横ばいのままだと、この5年間は「返済+戻ってくる税」の二重の資金負担になります。私が融資の稟議を見る立場だったら、必ずこの6年目以降の資金繰りを確認します。積むか積まないかを決める前に、戻ってくる年の資金繰り表を作ってみてください。

もう一つ、当たり前ですが見落とされやすい点です。損金算入は所得があって初めて効きます。その期が赤字なら、準備金の積立は繰越欠損金を増やすだけで、手元のお金は1円も変わりません。

自社は対象になるのか?会社側の要件は2本立てになっている

この制度の対象者は、法律が2つ重なっているため確認が2段階になります。中小企業庁の手引きは「①②両方の要件を満たす必要あり」と明記しています。

  • ①中小企業等経営強化法の「特定事業者等」……常時使用する従業員数が2,000人以下の法人または個人、協同組合等。経営力向上計画を提出できるのはこの範囲です
  • ②租税特別措置法上の「中小企業者」……資本金または出資金の額が1億円以下の法人、資本・出資を持たない法人のうち従業員1,000人以下の法人。税制の適用を受けるにはこちらも必要です

そして、ここに2つの除外があります。中小企業庁のQ&Aは、大企業の子会社等に該当する法人と、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は、資本金1億円以下でも本税制の対象にならないとしています(条文上は「適用除外事業者」)。青色申告書を提出していることも条件です。

個人事業主は対象外です。Q&Aは譲受け側の制限として「個人事業主は対象外となります」と明記しています。買う側は法人でなければなりません。一方で、売る側(譲渡し側)は個人事業主でも構いません。①の特定事業者等に「法人または個人」と書かれているとおりです。この非対称は覚えておくと役に立ちます。

どのM&Aなら使えるのか?対象外の線引きが実務の山場になる

実務でいちばん引っかかるのは会社の規模ではなく、M&Aのやり方です。中小企業庁のQ&Aと手引きから、対象・対象外を整理します。

論点対象になる対象にならない
取引の形他の特定事業者等の株式または持分の取得(購入)事業譲渡、合併、株式交換
取得する割合結果として議決権等の50%以上を持つことになる株式取得50%未満にとどまる取得。段階取得の場合は50%以上になる回だけが対象
取得価額10億円以下10億円を超えるM&A
相手先との関係実質的に他社の経営資源を引き継ぐM&Aグループ内(議決権の過半数を同一の主体が直接・間接に保有)、親族内(オーナー経営者同士に三親等以内の親族関係または婚姻関係がある)
相手先の所在国内の特定事業者等外国法人の株式取得
タイミング認定計画に従って取得する株式すでに取得した株式(計画の申請そのものができない)

「事業譲渡は対象外」は、特に気をつけてください。中小企業のM&Aでは、簿外債務を引き継ぎたくないという理由で事業譲渡を選ぶことが少なくありません。その判断自体は正しいのですが、事業譲渡を選ぶとこの準備金は使えなくなります。株式取得と事業譲渡のどちらにするかは税制で決めるべき話ではありませんから、まず取引の形を決め、そのうえで使える制度を選ぶ——順番はこちらです。

親族内が対象外という点も、相談の現場ではよく効いてきます。息子さんの会社が父親の会社の株を買う形にすれば承継が進むのではないか、という発想は自然に出てきます。しかし三親等以内の親族関係があればこの制度は使えません。親族内の承継で税負担を考えるなら、事業承継税制など別の制度を検討する場面です。

手続きはいつ、何をするのか?順番を間違えると取り返しがつかない

手続きは3ステップですが、順番に一度きりの関門があります。中小企業庁の手引きは、フロー図の下に「※既に株式譲渡を行っているM&Aについては、計画の申請はできません。(本制度の対象となりません。)」と注記しています。株を買ってから制度を知った、という順番では使えないということです。

  1. 基本合意の後、最終合意の前に経営力向上計画を申請し、認定を受ける……計画の「6 経営力向上の内容」に株式取得を含め、「10 事業承継等事前調査に関する事項」に予定するデューデリジェンスの内容を記載します。添付は事業承継等事前調査チェックシート、基本合意書等の相手方の合意を示す資料、事業承継等に係る誓約書です
  2. 株式取得を実行したら、主務大臣に報告して確認書の交付を受ける……様式第4(事業の承継報告書)に、株式譲渡契約書の写しと、承継した事業に従事する従業員の配置の状況を記載した書類、チェックシートを添付します
  3. 税務申告で損金算入する……申請書・認定書・確認書の写しを添付します。損金算入できるのは、株式を取得した日(契約書に記載された譲渡の効力発生日)が属する事業年度です

デューデリジェンスをいつやるかについては、令和6年度税制改正で運用が改善されました。改正前は「認定を受けてからDD」の順番が必要で、基本合意から最終合意まで70日程度かかっていました。改正後は認定の前にDDを実施してもよく、認定後にDDを開始しても構いません。ただし条件が1つあります。事前調査は最終合意の前に終えていなければなりません。中小企業庁の資料では、この改善により50日程度への短縮が見込まれるとしています。

M&Aの現場では、基本合意から最終合意までの期間を短くしたいという要請が強く働きます。売り手の気持ちが変わる、従業員に漏れる、他の買い手が現れる。時間が延びるほど話は壊れやすくなります。標準処理期間が30日ある認定手続きをこの期間に挟むのは、正直なところ簡単ではありません。使うつもりなら、基本合意の前から計画の下書きを始めておくくらいの前倒しが必要です。

事業承継等事前調査(DD)はどこまでやればいいのか?

計画に書くDDの範囲について、Q&Aは明快です。法務に関する事項と財務・税務に関する事項は必須記載、その他の調査は任意記載。つまり最低限、法務DDと財務税務DDの2本は計画に書く必要があります。

費用をどこまでかけるかは、別の判断です。私の実務では、弁護士を早い段階から入れるかどうかは「当事者間に対立があるか」の一点で切り分けています。敵対的な株主がいる、承継に反対している役員や親族がいる、株主間でもめている——こういう案件は、契約書の巧拙ではなく合意形成そのものが破断点になるので、書面を作る段階で弁護士に入ってもらっても手遅れです。逆に対立のない円満な案件で最初からフルスコープの法務DDを組むと、小規模案件では費用倒れになって成約自体が遠のきます。この場合は契約書のリーガルチェックと、必要に応じた法務DDで足ります。

自社でDDを実施することもできます。Q&Aは、チェックシートの内容を満たす調査であれば自社実施でも対象になるとしています。ただし調査の実施主体が有資格者(法務DDは弁護士、財務・税務DDは税理士または公認会計士)でない場合、事業承継等の報告時に、作成した調査報告書と、報告書とチェックシートの対応関係を示す資料を追加で添付しなければなりません。自社実施は「報告の手間が増える」という形で跳ね返ってくる、と理解しておくのが実務的です。

調査の中身について、1つだけ現場の経験を書きます。譲り受ける事業のヒアリングでは、数字より先に人の在籍と役割から入ってください。私は施設や店舗を引き継ぐ案件で、まず「この現場のキーパーソンは誰で、いまいるのか」を確認します。帳簿の数字は後から追えますが、誰が何を担っていて、その人が残るのかは、聞かないと絶対にわかりません。そして偶然ではないのですが、報告書の添付資料として求められるのも「承継した事業に従事する従業員の配置の状況を記載した書類」です。制度が見ているところと、M&Aが失敗する原因は、だいたい同じ場所にあります。

どんなときに準備金を取り崩すことになるのか?

据置期間の途中でも、次の事由に当たると準備金は取り崩して益金に算入します。中小企業庁のQ&Aと手引きが挙げる事由は次のとおりです。

取崩事由取り崩す額
経営力向上計画の認定を取り消された全額
取得した株式を売却等して所有しなくなった全額または相当分
合併により合併法人へ当該株式を移転した全額
取得した株式を発行する会社が解散した全額
取得した株式の帳簿価額を減額した(減損)相当分
株式を取得した法人自身が解散した全額
青色申告書の提出の承認を取り消された、または取り止めた全額
支払限度額が5億円を超える表明保証保険契約を締結した全額

最後の行は、上位の解説記事でもほとんど触れられていない要件です。表明保証保険は、売主の表明内容が事実と違っていたときに買主の損害を補填する保険で、M&Aの実務では普及してきています。この保険の支払限度額が5億円を超えていると、そもそも準備金を積み立てられません(条文は「特定保険契約を締結している場合を除く」として1項の適用から外しています)。積立後に締結した場合は全額取崩しです。減損リスクに備える制度なので、保険で備えているなら準備金は要らない、という整理です。

ただし例外が1つあります。Q&Aは、M&A仲介会社等が保険料を負担して保険会社と契約し、経営力向上計画の申請者がその被保険者になっている場合(いわゆる仲介サービス組み込み型)は、申請者が表明保証保険契約を締結している場合には当たらないとしています。仲介手数料にパッケージで含まれている保険なら、準備金は使えるということです。ここは仲介会社に契約形態を確認してください。

売却したときの扱いも、押さえておくと安心です。一部売却なら相当部分だけを取り崩し、残りは当初積立額の5分の1ずつ取り崩していきます。据置期間が明けた後の均等取崩期間中に売却した場合は、その時点で残額の全額が取崩しになります。

拡充枠(中堅・中小グループ化税制)は中小企業でも使えるのか?

令和6年度税制改正で、この準備金にもう一つの枠が加わりました。産業競争力強化法の特別事業再編計画に基づくもので、積立率が上がり据置期間も長くなります。経済産業省の資料と条文を突き合わせると、従来枠との違いはこうなります。

項目従来枠拡充枠(中堅・中小グループ化税制)
必要な認定計画経営力向上計画(中小企業等経営強化法)特別事業再編計画(産業競争力強化法)
積立率取得価額の70%認定計画内1回目は90%、2回目以降は100%
据置期間5年10年
取得価額10億円以下1億円以上100億円以下
過去のM&A実績不要過去5年以内に取得価額1億円以上のM&Aを実施していること
適用期限いずれも2027年3月31日(令和9年3月31日)までの計画認定

「拡充枠は中堅企業向け」と書かれていることが多いのですが、正確ではありません。経済産業省の認定要件では、申請事業者は中堅企業者または中小企業者(常時使用する従業員2,000人以下の者に限る)とされており、中小企業も申請できます。中堅企業の場合だけ「特定中堅企業者」であることが追加で必要になる、という構造です。

とはいえ、山梨の中小企業が現実的に使えるかというと、私はほとんどのケースで従来枠になると考えています。理由は積立率ではなく入口の要件です。拡充枠は取得価額1億円以上のM&Aに限られ、しかも過去5年以内に1億円以上のM&Aを実施済みでなければなりません。つまり2回目以降のM&Aで初めて使える枠です。加えて計画には、従業員1人当たり付加価値額9%向上・売上高1.2倍という成長要件、有利子負債/キャッシュフロー10倍以下・経常収入が経常支出を上回るという財務健全性要件、雇用者給与等支給額の年率2.5%上昇という賃上げ要件が課されます。初めて会社を買う中小企業が満たせる設計ではありません。

なお、経済産業省の資料は同一のM&Aについて拡充枠と従来枠を重複して適用することはできないと明記しています。どちらを使うかは選択です。

数字の細かい点で1つ注記します。積立率について「2回目が90%、3回目以降が100%」と書いている解説を見かけますが、条文の書き方は違います。租税特別措置法56条1項の表は、認定特別事業再編計画に従って行う最初の措置として取得した株式等を「百分の九十」、それ以外を「百分の百」としています。計画内の1回目が90%、2回目以降が100%です。二次情報で数えると1つずれます。

申請の窓口はどこか?認定後に忘れてはいけない報告もある

経営力向上計画の申請先は、その事業を所管する省庁(主務大臣)です。特別事業再編計画のほうは、経済産業省所管業種で資本金100億円以下であれば地方経済産業局が窓口になり、山梨県に本社がある事業者は関東経済産業局(地域経済部 地域企業支援室)の担当です。山梨は関東経済産業局の管轄で、同じ括りに茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・長野・静岡が入っています。地元の窓口で完結しないので、日程には余裕を見てください。

そして、認定後の義務が1つあります。事業承継等事前調査の内容を記載して準備金またはD類型を活用した場合、毎事業年度の終了後、最大5年間にわたって事業承継等状況報告書を主務大臣に提出しなければなりません。計画の中身を変える経営力向上計画の変更申請とは別系統の手続きです。担当者が代わると引き継がれずに抜けることがあるので、認定書と一緒に報告時期をカレンダーに入れておくことをお勧めします。

最後に、相談先の話をします。買い手側としてM&Aを考えるとき、私はまず無料で相談できる公的窓口を入口に置くようお勧めしています。山梨県事業承継・引継ぎ支援センターは譲り渡し・譲り受けの両方の相談を無料で受け付けています(ただし買い手を約束する窓口ではありません)。地元の商工会議所・商工会も初期の相談先になります。候補先を探す段階では、センターだけに頼らないほうがいいというのが私の実感です。センターは後継者不在の案件が中心という制度設計なので、成長している会社の売却案件はあまり流れてきません。事業承継・引継ぎ支援センターと民間の仲介会社、金融機関からの紹介を並行して見ておくと、選べる案件の幅が変わります。譲受けにかかる費用には事業承継・M&A補助金が使える場合もあります。

よくある質問

準備金は必ず取得価額の70%を積み立てなければいけませんか?

いいえ。中小企業庁のQ&Aは「取得価額の70%を限度に、任意の金額を積み立てることができます」としています。70%は上限であって義務ではありません。その期の所得や、据置期間が明けた後の資金繰りを見て金額を決められます。所得が小さい期に満額を積んでも損金が効きませんし、取崩し期の負担だけが残ります。

会計処理はどうすればいいですか。仕訳は必要ですか?

租税特別措置法56条1項は、損金経理の方法で積み立てる方法と、その事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法の両方を認めています。つまり費用として計上する方法でも、剰余金処分で純資産の部に積立金として計上する方法でも損金算入できます。どちらを選ぶかは決算書の見え方に影響するので、顧問税理士と相談して決めてください。

株式を2回に分けて取得する場合はどうなりますか?

Q&Aは、株式を段階的に取得する場合(X年に50%、Y年に残り50%を取得する場合)は、全株式の50%以上を有することとなる株式取得、つまりX年の取得のみが対象になるとしています。50%を超えた後の買い増しは対象外です。したがって最初から50%以上を一度に取得する設計にしておくほうが、使える金額は大きくなります。

外国法人の株式を取得した場合も対象になりますか?

対象になりません。この制度の対象は他の特定事業者等の株式または持分の取得で、特定事業者等に外国法人は含まれないとQ&Aが明記しています。海外企業の買収には使えません。

不動産取得税の軽減措置や経営強化税制のD類型と併用できますか?

中小企業庁のQ&Aは「両者の要件をともに満たす場合には、適用対象となり得ます」としています。経営力向上計画という同じ計画から複数の支援措置に枝分かれする構造なので、併用は想定されています。ただし各措置の適用期限は別々に設定されているため、使おうとしている措置が現在も有効かどうかは、申請前に中小企業庁の該当ページで必ず確認してください。


会社を買うという判断は、税制から入るものではありません。ただ、買うと決めた後に「あの制度を使えたのに」と気づく順番は避けたいところです。この準備金は株式を取得する前に計画の認定が必要で、後から追いつけません。当社は融資を審査する側にいた元銀行員として、また認定経営革新等支援機関として、買収後の資金繰りまで含めて計画を組み立てています。融資・資金調達の支援サービスをご覧のうえ、無料相談はこちら(お問い合わせフォーム)からお気軽にご連絡ください。これまでの支援実績は採択・支援実績で公開しています。


監修:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査・経営改善支援に従事したのち、中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として山梨県で融資・補助金・経営計画の支援を行う。山梨県事業承継・引継ぎ支援センターでの支援経験を持つ。本記事の制度情報は、中小企業庁「中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)」、同「経営力向上計画に基づく中小企業事業再編投資損失準備金 概要・手引き」(令和6年9月)、同「中小企業事業再編投資損失準備金 Q&A」(令和6年9月2日更新)、経済産業省「事業再編の促進(産業競争力強化法)」および同「特別事業再編計画 概要資料」、租税特別措置法第56条(e-Gov法令検索)、国税庁「第56条《中小企業事業再編投資損失準備金》関係」を、2026年9月28日に確認して作成しています。記事中の10年間の試算は前提を置いた計算例であり、制度が定めた数値ではありません。制度の内容は改定されることがあるため、実際の申請前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。

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