【2026年最新】事業承継・M&A補助金(14次公募)を徹底解説|申請期限は4月3日
公開日:2026年2月17日 最終更新:2026年2月17日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「うちもそろそろ代替わりを考えないと……」
山梨県内の経営者の方と話していると、ここ数年でこうした声が本当に増えました。中小企業の経営者の高齢化が進むなか、事業承継は「いつかやること」ではなく「今すぐ動き始めるべきこと」になっています。
その第一歩を後押ししてくれる制度が、国の「事業承継・M&A補助金」です。
2026年1月30日、中小企業庁から14次公募の公募要領が公表されました。申請受付は2026年2月27日(金)から4月3日(金)17:00まで。約5週間の申請期間ですが、準備を含めると実質的な猶予はかなり限られます。
この記事では、元銀行員・中小企業診断士として事業承継の現場に携わってきた立場から、14次公募の制度全体像を枠ごとにわかりやすく整理し、申請前に押さえておくべきポイントをお伝えします。
事業承継・M&A補助金とは?──制度の全体像
事業承継・M&A補助金は、中小企業・小規模事業者が事業承継やM&Aに際して行う設備投資、専門家の活用、経営統合にかかる費用の一部を国が補助する制度です。
もともとは「事業承継・引継ぎ補助金」(1次〜10次公募)という名称で運用されていましたが、11次公募(令和6年度補正予算)から制度の枠組みと名称が見直され、現在の「事業承継・M&A補助金」に変わりました。枠の構成や補助上限にも変更が入っているため、以前の制度をご存じの方も改めて確認をお勧めします。
この制度の大きな特徴は、事業承継の「段階」に応じて4つの枠が用意されている点です。承継前の準備段階から、M&A成立後の経営統合、さらには廃業を伴うケースまで、幅広い場面をカバーしています。
なお、14次公募は令和7年度補正予算に基づいて実施されています。
14次公募のスケジュールと申請方法
14次公募の主なスケジュールは以下のとおりです(中小企業庁 2026年1月30日発表)。
公募要領公表日: 2026年1月30日(木)
公募申請受付期間: 2026年2月27日(金)〜 4月3日(金)17:00(予定)
申請方法: 電子申請(Jグランツ)のみ ※郵送・窓口での申請は不可
申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。取得には通常2〜3週間かかるため、まだ持っていない方は今日にでも手続きを始めてください。4月3日の締切から逆算すると、遅くとも3月上旬にはアカウント取得を完了しておく必要があります。
また、14次公募の説明会がオンラインで実施されます。申し込みは2月13日(金)に開始済みで、締切は3月4日(水)17:00です。初めて申請を検討される方は参加しておくとよいでしょう。
4つの枠を一つずつ解説
①事業承継促進枠──親族内・従業員承継をこれから行う方向け
事業承継促進枠は、公募申請期日から5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している中小企業者・個人事業主が対象です。承継にあたって必要となる設備投資や、店舗・事務所の改築費用などが補助されます。
補助率: 1/2以内(小規模事業者は2/3以内)
補助上限額: 800万円(一定の賃上げを実施する場合は1,000万円に引上げ)
主な補助対象経費: 設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用 等
補助上限の引上げには、事業場内最低賃金の引上げや給与支給総額の増加といった賃上げ要件を満たす必要があります。申請時に「賃金引上げ計画誓約書」などの書類を提出する必要があり、あとからの追加は認められません。
また、事業計画には付加価値額(=営業利益+人件費+減価償却費)の年率3%以上の向上を示す計画が求められます。銀行員時代の経験から申し上げると、審査する側が見ているのは「目標の高さ」ではなく「その数字に合理的な根拠があるかどうか」です。設備投資によって何がどう変わるのかを、具体的な数字で裏付けることが採択への近道になります。
②専門家活用枠──M&Aを進めている・これから着手する方向け
専門家活用枠は、M&Aによって経営資源を譲り受ける、あるいは譲り渡す予定の中小企業等が対象です。M&Aに関する専門家費用が補助されます。「買い手支援類型」と「売り手支援類型」に分かれています。
<買い手支援類型>
補助率: 2/3以内 ※100億企業要件を満たす場合は、1,000万円以下の部分が1/2、1,000万円超の部分が1/3
補助上限額: 600万円(DD費用を申請する場合は+200万円で上限800万円)。100億企業要件を満たす場合は上限2,000万円
<売り手支援類型>
補助率: 1/2以内(①赤字決算、または②営業利益率の低下に該当する場合は2/3以内)
補助上限額: 600万円(DD費用を申請する場合は+200万円で上限800万円)
補助対象となる主な経費は、FA(ファイナンシャルアドバイザー)や仲介にかかる費用、デューデリジェンス費用、セカンドオピニオン費用、表明保証保険料などです。ただし、FA・仲介費用についてはM&A支援機関登録制度に登録された事業者に支払うものに限られる点に注意が必要です。
また、原則として2者以上から見積を取得することが求められます。見積書には発行者・金額内訳・業務受託期間・受託業務の範囲の記載が必要です。
③PMI推進枠──M&A成立後の経営統合に取り組む方向け
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後に行われる経営統合のプロセスのことです。この枠は「PMI専門家活用類型」と「事業統合投資類型」の2つに分かれます。
<PMI専門家活用類型>
補助率: 1/2以内 補助上限額: 150万円
統合方針の策定等に関して専門家を活用する取組が対象です。
<事業統合投資類型>
補助率: 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) 補助上限額: 800万円(賃上げ実施で1,000万円に引上げ)
会計・受発注システムの統合や、拠点集約に伴う設備投資などが対象です。
注意点として、PMI専門家活用類型と事業統合投資類型には前後関係があり、同一公募回での同時申請はできません。まず統合方針の策定(専門家活用類型)を行い、次の公募回以降に設備投資等(事業統合投資類型)に進む流れが想定されています。
④廃業・再チャレンジ枠──事業整理を伴うケースに
事業承継やM&Aに伴い既存事業を廃業する場合、あるいはM&Aが成約に至らず新たな取組に挑む場合に使える枠です。
補助率: 2/3又は1/2以内 ※他の枠と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従います。
補助上限額: 300万円 ※他の枠と併用申請する場合は、それぞれの補助上限に加算されます。
主な補助対象経費: 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、土壌汚染調査費 等
この枠の特徴は、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠と併用申請ができることです。たとえば事業承継促進枠(賃上げ要件あり・上限1,000万円)と併用すれば、最大1,300万円の補助を受けられる計算になります。
単独で申請する「再チャレンジ申請」の場合は、M&Aで事業を譲り渡せなかった中小企業等の株主や個人事業主(法人の場合は株主、個人事業主の場合は本人)が、新規事業に取り組むために既存事業を廃業するケースが対象となります。
過去の採択実績──「6割」の背景を読む
14次公募の結果はまだ出ていませんが、事業承継・M&A補助金事務局から直近3回の採択実績が公表されています。
11次公募(専門家活用枠のみで実施): 申請590件 → 採択359件(採択率 約60.8%)
12次公募(全4枠で実施): 申請742件 → 採択453件(採択率 約61.1%) 内訳──事業承継促進枠:250→152件、専門家活用枠:436→266件、PMI推進枠:55→34件、廃業・再チャレンジ枠:1→1件
13次公募(全4枠で実施): 申請481件 → 採択293件(採択率 約60.9%) 内訳──事業承継促進枠:182→111件、専門家活用枠:267→163件、PMI推進枠:32→19件
いずれの回も、全体の採択率はおおむね60〜61%で推移しています。一見すると「6割も通るなら出してみよう」と思えるかもしれませんが、そう単純な話ではありません。
この補助金はそもそも準備のハードルが高く、GビズIDの取得、認定支援機関との調整、事業計画の策定、各種書類の準備を経て初めて申請に至ります。つまり「書類が整わなかった人は最初から母数に入っていない」のです。
裏を返せば、しっかり準備すれば十分に手が届く補助金だということです。「出せば通る」とは言えませんが、「丁寧に準備すれば通る確率は十分にある」──それがこの採択率の示す意味だと私は考えています。
申請前に確認すべき4つのポイント
14次公募に申請するうえで、特に注意してほしい点をまとめます。
(1)GビズIDプライムの取得は「今すぐ」始める
この補助金はJグランツでの電子申請のみ受付です。Jグランツを使うにはGビズIDプライムが必須で、取得に2〜3週間かかります。4月3日に間に合わせるには、今日から手続きを始めても決して早すぎではありません。
(2)認定経営革新等支援機関の確認書を早めに準備する
各枠の申請にあたっては、原則として認定経営革新等支援機関による確認書の提出が必要です。特に事業承継促進枠では必須となっています。確認書を取得するには、支援機関と事業計画の内容を相談しながら詰めていく工程が必要です。支援機関にも対応のキャパシティがありますから、締切間際に駆け込んでも対応してもらえない可能性があります。余裕をもって動いてください。
(3)自社がどの枠に該当するか見極める
4つの枠は対象者がそれぞれ異なります。親族内承継なら事業承継促進枠、M&Aの仲介費用なら専門家活用枠、M&A後のシステム統合ならPMI推進枠(事業統合投資類型)というように、状況に応じた選択が必要です。なお、枠によっては同一公募回での重複申請に制限がありますので、公募要領を必ずご確認ください。
(4)事業計画の数字に「根拠」を持たせる
銀行員時代に融資審査を担当していた経験から言えることですが、審査する側が見ているのは「売上が上がります」という願望ではなく、「この設備を入れるとこの工程がこう変わり、原価がこれだけ下がる」という因果関係です。付加価値額の年率3%向上を示す計画が求められますが、その数字の背景にある「なぜそうなるのか」を丁寧に書くことが、採択率を上げる最大のポイントです。
事業承継は「終わり」ではなく「次の始まり」
事業承継というと、どうしても「守りの経営判断」というイメージがつきまといます。しかし私は、事業承継こそ経営を立て直し、次の成長をつくるための最大の転機だと考えています。
山梨県事業承継・引継ぎ支援センターのサブマネージャーとして多くの承継案件を支援してきたなかで、うまくいった承継には共通点がありました。それは、「承継をきっかけに事業計画を一から見直し、必要な投資を行い、数字で経営を管理する仕組みをつくった」ということです。
補助金はそのための"起点"にすぎません。ですが、使える制度は賢く使うべきです。
14次公募の申請期間は約5週間。今から動けば、まだ間に合います。
お問い合わせ先一覧
事業承継・M&A補助金事務局
- 事業承継促進枠:050-3192-6274
- 専門家活用枠・廃業再チャレンジ枠:050-3145-3812
- PMI推進枠:050-3192-6228
- 受付時間:09:30〜12:00、13:00〜17:00(土日祝日を除く)
事業承継・M&A補助金 公式サイト: https://shoukei-mahojokin.go.jp/
GビズID 公式サイト: https://gbiz-id.go.jp/
中小企業庁 14次公募の発表ページ: https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260130001.html
本記事の情報は、中小企業庁の公表資料(2026年1月30日発表)および事業承継・M&A補助金事務局の公式サイト掲載内容に基づいています。補助金の詳細は必ず各枠の公募要領原文でご確認ください。
事業承継の補助金申請、ご相談ください
当社代表の池田は、金融機関で多くの中小企業の事業計画書を審査してきた経験があります。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、確認書の発行から事業計画の策定支援、採択後の交付申請・実績報告まで、補助金に関わる工程をワンストップで対応しています。
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