公開日:2026年7月13日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「決算は黒字なのに、通帳の残高は増えるどころか減っている」「銀行に運転資金を申し込みたいが、いくら頼めば妥当なのか分からない」。融資のご相談で、この2つは本当によく出てきます。しかも厄介なことに、売上が伸びている会社ほど、この症状は重くなります。

運転資金とは、仕入や人件費の支払いが先に出ていき、売上代金の入金は後から来る、その時間のズレを埋めるために、事業を続ける限り手元に置いておかなければならないお金のことです。銀行が使う言葉では、そのうち恒常的に必要な分を「経常運転資金(正常運転資金)」と呼び、売上債権+棚卸資産−仕入債務という式で測ります。

この記事では、決算書の3つの数字から必要額を計算する手順を実例で示したうえで、「月商の何ヶ月分」という目安の使いどころ、そして銀行が運転資金をどう見て、いくらまで、どういう貸し方で出すのかという審査側の実務までを扱います。私は元銀行員として法人融資の審査に携わり、いまは中小企業診断士として山梨県で資金繰りの相談を受けています。借りる前に「そもそもいくら要るのか」を自分で言えるようになることが、いちばんの近道です。


運転資金とは?なぜ黒字でもお金が足りなくなるのか

運転資金が必要になる理由は、利益ではなく「順番」です。仕入代金や外注費、人件費、家賃は先に出ていきます。売上代金が入るのは、その後です。この間、事業は現金を立て替え続けています。

たとえば掛売りの卸売業なら、6月に仕入れて7月に売り、代金の入金は9月末。仕入代金の支払いは8月末に来る。この1ヶ月のズレを埋めるお金がなければ、注文が取れていても事業は止まります。利益は「稼いだかどうか」の話で、運転資金は「立て替えられるかどうか」の話です。だから黒字でも金は足りなくなります。

実際、小売業の社長から「赤字ではないのに手元が苦しい」とご相談を受けたとき、まず見るのは損益計算書ではありません。現金がどこで寝ているかを順に確認します。仕入を優先して単価の高い在庫が積み上がっていないか。カード決済の比率が上がって入金が後ろ倒しになっていないか。顧客の支払いを立て替えていないか。この3ヶ所を潰していくと、たいてい「利益は出ている。ただ、その利益が在庫と売掛金に姿を変えて寝ている」という結論に行き着きます。この会社では、立て替え分だけで数百万円が滞留していました。

運転資金は、経理の細かい話ではなく、事業のかたちがそのまま出る数字です。だからまず、自分の会社にいくら寝ているのかを測ります。

運転資金はいくら必要?経常運転資金の計算式と決算書からの出し方

必要額の基本は、次の式で測れます。決算書(貸借対照表)の3ヶ所を見るだけです。

経常運転資金 = 売上債権(売掛金+受取手形)+ 棚卸資産(在庫)− 仕入債務(買掛金+支払手形)

この式は「在高方式」と呼ばれます。前の2つは現金が姿を変えて寝ているもの、最後の1つは支払いを待ってもらえている分、つまり取引先が立て替えてくれている金額です。だから差し引く。残りが、自分で用意しなければならない金額になります。

架空の食品卸(年商1億2,000万円・月商1,000万円)の決算書で、実際に出してみます。

決算書の項目金額意味
売上債権(売掛金)2,000万円売ったが、まだ入金されていない
棚卸資産(在庫)1,200万円仕入れたが、まだ売れていない
仕入債務(買掛金)△1,500万円仕入れたが、まだ払っていない
経常運転資金1,700万円事業を回す限り、常に寝ているお金

この会社は、月商1,000万円に対して1,700万円。およそ1.7ヶ月分の現金が、事業の中に沈んだままになっているということです。ここが出発点です。手元にこの1,700万円がなければ、どこかから調達するしかありません。

同じ数字は「回転期間方式」でも確認できます。各項目が月商の何ヶ月分かを出して足し引きする方法です。

項目計算回転期間
売上債権回転期間2,000万円 ÷ 月商1,000万円2.0ヶ月
棚卸資産回転期間1,200万円 ÷ 月商1,000万円1.2ヶ月
仕入債務回転期間1,500万円 ÷ 月商1,000万円△1.5ヶ月
合計2.0+1.2−1.51.7ヶ月分 = 1,700万円

結果は同じ1,700万円ですが、回転期間で見るとどこを直せば必要額が減るのかが分かります。この会社なら、回収を2.0ヶ月から1.5ヶ月に縮めるだけで必要額は500万円減ります。在庫を1.2ヶ月から1.0ヶ月に絞れば、さらに200万円。借りる前にできることが、数字で見えるわけです。

なお、国が公表している経営分析ツール「ローカルベンチマーク」でも、6つの財務指標のひとつとして営業運転資本回転期間=(売上債権+棚卸資産−買入債務)÷月商が採用されています(経済産業省「ローカルベンチマークについて」2026年7月13日確認)。金融機関との対話でも使われる、共通言語だと思ってください。

「月商の3ヶ月分」という目安は使えるのか

「運転資金は月商の3ヶ月分」とよく言われます。この目安は、手元にいくら現金を置いておくかという「余裕資金」の話としては有効ですが、必要額の計算としては粗すぎます。先ほどの食品卸の必要額は1.7ヶ月分でした。同じ月商でも、現金商売の飲食店なら0.5ヶ月分を切ることもあれば、支払いが先行する建設業なら4ヶ月分を超えることもあります。業種ではなく、回収と支払いの条件で決まるからです。

目安が生きるのは、季節変動がある業態です。宿泊業の社長から融資のご相談を受けたときは、繁忙期の3ヶ月分を基準に運転資金を組みました。繁忙期に入る前に仕入と人件費が膨らみ、売上の入金はその後に来る。年平均の月商で計算すると、いちばん苦しい山を越えられません。季節変動のある事業は、年平均ではなく「いちばん資金が出ていく3ヶ月」で必要額を見る。これは実務の鉄則です。

許認可が必要な事業の創業も同じ発想です。運送業のように許可が下りるまで数ヶ月売上が立たない業種では、その期間の家賃・リース料・保険料・人件費がまるごと運転資金になります。ここを過小に見積もると、開業直後に資金がショートします。

まとめると、こういう使い分けになります。

  • 必要額の計算=経常運転資金の式(売上債権+棚卸資産−仕入債務)で出す
  • 手元に置く余裕=月商の1〜3ヶ月分を目安に、季節変動がある業態は「繁忙期の3ヶ月」で見る
  • 創業時=売上が立つまでの期間の固定費を、別枠で積む

銀行は運転資金をどう見ているのか?「正常運転資金」は前向きな資金

ここからは審査する側の話です。銀行員は、運転資金の申込みを見たときに、まず「その金額は事業の実態から説明がつくか」を確かめます。経常運転資金の範囲内であれば、それは業績悪化の穴埋めではなく、事業を回すために必ず必要な資金だと説明できます。この区別は、審査の入口として決定的です。

この考え方には、公的な裏づけもあります。かつて金融庁が示していた「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」(平成27年1月)の事例20には、次のように書かれていました。

債務者が正常な営業を行っていく上で恒常的に必要と認められる運転資金(正常運転資金)に対して、「短期継続融資」で対応することは何ら問題なく、妥当な融資形態の一つであると認められる。

出典:金融庁「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」事例20(PDF

ここで正確に申し添えておきます。この金融検査マニュアルは2019年12月18日に廃止されています。ですから「いまも金融庁がこう言っている」という書き方は正しくありません。ただし考え方そのものは生きていて、現行の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和8年7月)にも、書替えを続けている手形貸付であっても正常運転資金であれば貸出条件緩和債権には該当しない旨が明記されています(監督指針PDF・2026年7月13日確認)。つまり銀行にとって、正常運転資金への融資を続けることは、いまも不良債権扱いにはならない正常な融資です。

実務的な意味は、こうです。1,700万円の経常運転資金は、事業を続ける限り決してゼロになりません。返済しても、翌月にはまた同じだけ必要になります。本来「毎月少しずつ返して消していく性質のお金」ではないのです。それを無理に分割返済にすると、返済のたびに現金が抜け、抜けた分をまた借りる、という循環に入ります。だから正常運転資金の範囲は、期日一括返済の手形貸付や当座貸越で対応し、期日に業況を確認して継続の可否を判断する、というのが理屈に合った貸し方になります。

ただし現実には、この形で応じてもらえるかは取引実績と業況によります。「経常運転資金は1,700万円で、内訳はこの3つです」と自分の口で説明できる社長と、「500万円ほど運転資金を」とだけ言う社長とでは、銀行の受け取り方はまったく違います。前者は、その場で貸し方の相談ができる相手として扱われます。

運転資金はいくらまで借りられるのか?返済可能性から逆算する

必要額が分かっても、その全額を借りられるとは限りません。銀行が最後に見るのは、返せるかどうかだからです。ここは希望額から考えるのではなく、返済能力から逆算します。

私が融資のご相談で最初に出すのは、次の順序です。

  1. 簡易キャッシュフロー = 営業利益 + 減価償却費 を出す(これが1年間に返済に回せる原資)
  2. そこから役員の生活費など、事業外に必要な支出を引く
  3. 年間の返済元金が、簡易キャッシュフローの5割程度に収まるかを見る

年間返済元金が簡易キャッシュフローの9割を占めるような状態だと、追加の融資はまず厳しくなります。返済が原資を食い尽くしていて、不測の事態に耐えられないからです。5割に収まっていれば、その事業は「借りても回る」と説明できます。

先ほどの食品卸で試します。営業利益400万円、減価償却費100万円なら、簡易キャッシュフローは年500万円です。必要額1,700万円を借りるとして、返済期間で年間の負担がどう変わるかを並べます。

借入額返済期間年間の返済元金簡易CF500万円に対する割合評価
1,700万円3年約567万円113%返済が原資を超える。組めない
1,700万円5年340万円68%返せるが、余裕は乏しい
1,700万円7年約243万円49%5割以内。他の借入も検討できる

同じ金額でも、期間の取り方で「通る計画」にも「無理な計画」にもなります。すでに他の借入がある会社は、その返済元金も合算して5割の枠を見てください。ここまで自分で計算しておくと、面談で「いくら要りますか」と聞かれたときに、金額と期間と根拠をセットで答えられます。私が銀行にいたころ、それができる社長は多くありませんでした。

運転資金は短期と長期、どちらで借りるべきか

「運転資金は7年で借りられると聞いた」というお話をよくいただきますが、ここは正確に押さえてください。日本政策金融公庫の一般貸付(国民生活事業)の場合、公式サイトの表記は運転資金「5年以内(特に必要な場合7年以内)<うち据置期間1年以内>」です(日本政策金融公庫 一般貸付・2026年7月13日確認)。原則は5年で、7年は「特に必要な場合」の上限。最初から7年前提で組み立てると、話が食い違います。

主な借り方を整理すると、こうなります。

形態返し方向いている資金
手形貸付(短期)期日に一括返済し、書替えで継続経常運転資金(恒常的に寝ている分)
当座貸越枠内で出し入れ自由季節変動・一時的な資金需要
証書貸付(長期)毎月元金を分割返済設備資金、赤字補填を含む長期資金

理屈でいえば、消えない性質の経常運転資金は短期継続で、返済によって効果が積み上がる設備資金は長期分割で。この使い分けが本来の姿です。ただし、短期で借りるということは「期日ごとに継続を判断される」ということでもあります。業況が悪化すれば書替えを断られ、一括返済を迫られる可能性がある。そのリスクを避けたい、資金繰りを固定したいという理由で、あえて長期の証書貸付を選ぶ会社もあります。どちらが正解というより、自社の業況と銀行との関係で選ぶものだと考えてください。プロパー融資と信用保証協会付き融資の違いは「プロパー融資とは|信用保証協会付き融資との違い」で詳しく整理しています。

参考までに、信用保証協会の一般保証の限度額は、無担保保険8,000万円と普通保険2億円を合わせた2億8,000万円です(全国信用保証協会連合会「ご利用条件」・2026年7月13日確認)。中小企業の運転資金で、この枠が問題になる場面はまずありません。制約になるのは枠ではなく、返済能力のほうです。

売上が伸びているのに苦しいのはなぜか?増加運転資金の落とし穴

いちばん見落とされやすいのが、ここです。売上が増えると、必要な運転資金も同じ比率で増えます。売掛金も在庫も、売上に比例して膨らむからです。

先ほどの食品卸で、売上が2割伸びて月商が1,200万円になったとします。回収・支払いの条件が変わらなければ、必要な運転資金は1.7ヶ月分のままなので、

1.7ヶ月 × 月商1,200万円 = 2,040万円。つまり340万円の現金が、追加で事業に飲み込まれます。年商が1億2,000万円から1億4,400万円へ伸びる、その成長の裏で、340万円の現金が先に出ていく計算です。

これが「増加運転資金」です。受注が増えて喜んでいるうちに現金が細り、いちばん忙しい時期に資金がショートする。成長は、現金を食います。大口の受注が決まったときや、新規出店を決めたときは、利益の計算と同時に「回収と支払いのズレがいくら増えるか」を必ず計算してください。

銀行から見ても、増加運転資金は前向きな資金需要です。ただし、売上が伸びる根拠(受注書、契約、実績の推移)を示せることが条件になります。「これから伸びる見込みなので」だけでは、審査は動きません。数字の裏づけを持って先回りで相談に行くと、話は驚くほど早く進みます。

運転資金が足りないとき、借りる前に確認すること

資金が足りないとき、反射的に借入を考える前に、確認していただきたいことが3つあります。

1つ目は、回収と支払いの条件です。先ほど見たとおり、回収を0.5ヶ月縮めるだけで、必要額は月商の0.5ヶ月分減ります。月商1,000万円の会社なら500万円です。同じ500万円を借りれば利息がかかりますが、条件交渉で生み出せば利息はゼロです。取引先との力関係で簡単でないのは承知のうえで、それでも先に検討する価値はあります。

2つ目は、在庫です。「念のため」で積み増した在庫、売れ筋でなくなった商品。そこに現金が姿を変えて寝ています。在庫の圧縮は、資金繰りの改善としては最も即効性があります。

3つ目は、いまの返済負担そのものです。営業利益は出ているのに、既存借入の返済で現金が目減りし続けている会社は少なくありません。この状態で運転資金を追加で借りると、返済額がさらに増え、次の資金不足が早く来ます。借りて返すスパイラルです。こういうときは、追加借入ではなく返済条件の見直し(リスケジュール)で原資を作り、その資金で収益力を回復させてから返済を再開するほうが、結果的に会社は残ります。計画的なリスケに、ペナルティは基本的にありません。ただし、この判断は「営業利益が出ている(または回復の見込みがある)」ことが前提です。赤字体質のまま返済を止めても、現金は残りません。この場合は「経営改善計画書の書き方」を先にお読みください。

そして、これらを見つけるための道具が資金繰り表です。ただ、正直に申し上げると、資金繰り表は結果であって、改善策そのものではありません。作っていても「こんなにお金が足りない」と分かっているだけで、手が打てていない会社を何度も見てきました。必要なのは、外から「ここがおかしい」と指摘される仕組みです。月次で数字を確認する相手を持つ。それだけで、資金の谷は数ヶ月前に見つかります。表の作り方は「資金繰り表の作り方(無料テンプレート付き)」に、将来の数字を動かして試算する方法は「財務モデルの作り方」にまとめました。

運転資金の計算は「借りる前」に終わらせておく

最後に、要点を3行にまとめます。

  • 必要額は売上債権+棚卸資産−仕入債務で測る。「月商の3ヶ月分」は余裕資金の目安であって、必要額の計算式ではない。
  • 銀行にとって正常運転資金の範囲は前向きな資金。ただし借りられる上限は、年間返済元金が簡易キャッシュフロー(営業利益+減価償却費)の5割に収まるかで決まる。
  • 売上が伸びれば運転資金も同じ比率で増える。借りる前に、回収条件・在庫・既存の返済負担の3つを確認する。

まずは直近の決算書を開いて、売掛金・在庫・買掛金の3つの数字を式に入れてみてください。そこに出た金額が、御社が事業を続ける限り立て替え続けているお金です。その数字を自分の言葉で説明できるようになれば、銀行との会話は「お金を貸してください」から「この資金需要にどう応じますか」に変わります。


執筆:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査に従事し、運転資金の資金需要を「審査する側」として見てきた経験を持つ。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県で財務・資金繰り・融資の支援を行う。「必要額の計算が自社のケースで合っているか確かめたい」「銀行にどう説明すればいいか整理したい」という段階でも構いません。創業融資(日本政策金融公庫)の進め方もあわせてご覧いただくか、初回無料の経営相談からお気軽にご連絡ください。毎月の数字を見る仕組みづくりは「経営ダッシュボード」でご支援しています。公的な窓口としては、地元の商工会議所・商工会も相談の入口として使えます。本記事の計算例は架空の食品卸によるもので、数値はすべて見本用の仮の条件です。制度の内容は2026年7月13日時点の公表内容に基づきます。融資条件は改定される場合があるため、利用前に必ず各金融機関の公式情報をご確認ください。

運転資金の計算でよくある質問

納税資金や賞与資金は運転資金に含まれますか?

経常運転資金の計算式(売上債権+棚卸資産−仕入債務)には含まれません。納税や賞与は、毎月ではなく特定の月にまとまって出ていく資金なので、経常運転資金とは別に手当てします。銀行実務でも「納税資金」「賞与資金」は使いみちを明示した別の融資として扱われることが多く、決算月や賞与月に合わせた短期の借入で対応するのが一般的です。いずれも資金繰り表で「いつ、いくら出るか」を先に把握しておけば、慌てて調達する事態は避けられます。

つなぎ資金と運転資金の違いは何ですか?

つなぎ資金は、入ることが決まっているお金が入るまでの期間を「つなぐ」ための一時的な資金です。補助金の入金待ち、大口の売上代金の入金待ち、不動産の売却代金待ちなどが典型で、入金があれば返済されて消えます。一方、経常運転資金は事業を続ける限り消えません。ここが決定的な違いです。とくに補助金は原則あと払い(精算払い)なので、採択されても支払いは自社が先に行います。この立替期間の資金をつなぎ資金として用意しておかないと、採択されたのに実行できないという事態が起こります。

運転資金の計算結果がマイナスになったのですが、問題ありますか?

問題ないどころか、資金繰りの面ではむしろ優良な状態です。計算がマイナスになるのは、仕入債務(買掛金)が売上債権と在庫の合計より大きい場合、つまり入金が支払いより先に来ているということです。現金商売の飲食店・小売店や、前受金で受け取るビジネスがこれにあたります。この場合、運転資金の借入は本来不要です。ただし、売上が急に落ちると支払いだけが残るため、手元資金の余裕(月商1〜2ヶ月分)は別途確保しておいてください。

補助金を運転資金に使うことはできますか?

基本的にできません。補助金は、設備投資や販路開拓など特定の使いみちに対して交付されるもので、人件費や仕入といった日常の運転資金は原則として対象外です。融資と補助金は、目的も審査も別物だと考えてください。融資は「返せるか(返済可能性)」を審査し、補助金は「政策的な意義と実現性」を審査します。運転資金が必要なら、素直に融資で調達するのが正攻法です。両者を混同した資金計画は、どちらの審査でも評価されません。

創業前で決算書がありません。運転資金はどう見積もればいいですか?

決算書がないので、計画上の数字で組み立てます。想定する回収サイト(売上代金が何ヶ月後に入るか)と支払サイト(仕入代金を何ヶ月後に払うか)、必要な在庫水準を置いて、同じ式に当てはめてください。加えて創業時は、売上が軌道に乗るまでの固定費(家賃・人件費・リース料)を別枠で積みます。許認可が必要な業種なら、許可が下りるまでの期間の固定費もまるごと必要です。この見積もりが甘いと開業直後に資金が尽きるため、売上は控えめに、必要資金は厚めに置くのが安全です。