公開日:2026年8月2日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「仕事はあるんですよ。あるんですけど、金が回らない」。建設業の社長さんからこう切り出されることが、私は他の業種より明らかに多いと感じています。受注残は積み上がっている。赤字工事を掴んだわけでもない。それでも月末が来るたびに預金残高を見て息を止めることになる。
建設業の資金繰りが厳しくなる最大の理由は、材料費・外注費・人件費の支払いが先に来て、工事代金の入金が後から来るという立替構造にあります。売上が伸びるほど立替額が増えるので、忙しいときほど現金が薄くなる。この逆説が、建設業の資金繰りを他の業種より難しくしています。
この記事では、その立替構造が決算書のどこに表れて銀行にどう見えているのかを先に整理したうえで、ファクタリングに手を伸ばす前に使える公的な制度(公共工事の前払金・中間前払金と、国土交通省の出来高融資制度)を一次資料に沿ってまとめます。あわせて、公共工事を受ける会社にとっては死活問題である経営事項審査(経審)への影響も扱います。
私は元銀行員で法人融資の審査に携わり、いまは中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県を中心に建設業の資金繰りと融資のご相談に乗っています。審査する側にいたので、同じ「金が回らない」でも、決算書を見れば構造的な立替なのか採算の崩れなのかがだいたい分かる、という立場から書きます。
なぜ建設業の資金繰りは厳しいのか
建設業の資金繰りを難しくしているのは、工期の長さそのものではなく、支出と入金の順番が固定されていることです。着工前に材料を仕入れ、施工中に外注先と職人に払い、完成して検査を受けて、それから請求して、さらにその先に入金がある。この順番は現場の努力では動きません。
| 時点 | 出ていくお金 | 入ってくるお金 |
| 着工前・着工直後 | 材料費・仮設・重機の手配 | (公共工事なら前払金) |
| 施工中 | 外注費・労務費・現場経費が毎月 | (出来高部分払・中間前払金) |
| 完成〜検査 | 手直し・追加対応の費用 | なし |
| 請求〜入金 | — | ここで初めてまとまった入金 |
ここで一つ、誤解されやすい点を先にほどいておきます。「建設業も下請法で守られているから、支払いは早くなるはずでは」というご質問をいただくことがあるのですが、建設工事の下請負は下請法の適用対象外です。下請法は2026年1月1日施行の改正で「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(昭和31年法律第120号)に改称されましたが、同法第2条第4項は「役務提供委託」の定義から、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の全部または一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを明文で除いています(e-Gov法令検索・2026年8月時点)。建設業の下請取引を規律するのは、下請法ではなく建設業法のほうです。
その建設業法が定めている期日は、次の三つです。
- 検査は完成通知から20日以内。元請は下請から完成の通知を受けたら、20日以内でできる限り短い期間内に検査を完了しなければならない(建設業法第24条の4第1項)
- 元請が受け取ったら1月以内に下請へ。元請は出来形部分に対する支払または工事完成後の支払を受けたとき、その支払を受けた日から1月以内でできる限り短い期間内に、対応する下請代金を支払わなければならない(同法第24条の3第1項)
- 特定建設業者は申出の日から50日以内。特定建設業者が注文者となった下請契約の支払期日は、完成の申出の日から起算して50日を経過する日以前に定めなければならない(同法第24条の6第1項)
よく見ていただきたいのは、これらが守っているのは「元請が発注者から受け取った後」の話が中心だという点です。発注者から元請への入金が遅ければ、法定の期日を全部守っていても下請への入金は後ろに倒れます。つまり建設業法は下請いじめを防ぐ法律であって、立替期間そのものを短くする法律ではない。ここを取り違えると、「法律で守られているのになぜ苦しいのか」という話になってしまいます。
立替の重さは業態によってもかなり違います。以前ご相談を受けた戸建住宅の基礎工事業の会社は、生コンと鉄筋を自社で保有して現場を回すスタイルでした。段取りは速いし品質も安定するのですが、材料を自社で抱える分だけ立替額が常に大きい。累計400棟という実績があっても、受注が増えるたびに運転資金が足りなくなる。材料を自社で持つ業態は、それ自体が構造的な運転資金需要だと考えて、最初から借入枠を厚めに設計しておくほうが実務的です。
労務費の重さも侮れません。とび・土工中心で年間400〜500件の工事をこなしている会社では、公共工事の人工が1人あたり約29,700円という感覚で原価を組んでいました。ここに材料費と運搬費が乗ります。作業員が40数名いれば、1日動くだけで100万円を超える現金が出ていく計算になる。入金が1ヶ月ずれることの意味が、月商ベースで見るより重く効いてくるのはこのためです。
建設業の資金繰りは、決算書のどこに表れるのか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。建設業の資金繰りの状態は、感覚ではなく決算書の四つの勘定科目に必ず表れます。建設業許可の財務諸表は建設業法施行規則の様式で作りますから、一般の会社とは科目名が違います(勘定科目の分類は国土交通大臣の定める分類によります)。
| 科目 | 位置 | 中身 | 私が見るポイント |
| 未成工事支出金 | 資産 | まだ完成していない工事につぎ込んだ原価 | 立替の総額そのもの。前期比で急に膨らんでいたら理由を必ず聞く |
| 完成工事未収入金 | 資産 | 完成したが未回収の工事代金 | 滞留していないか。特定の1社に偏っていないか |
| 工事未払金 | 負債 | 外注先・材料屋への未払い | これで資金繰りを埋めていないか |
| 未成工事受入金 | 負債 | 前払金など、先に受け取ったお金 | 実は資金繰りの味方。これが厚い会社は前払金を使えている |
審査する側にいたときの感覚をそのまま書きます。建設業の決算書を開いて最初に見るのは、売上でも利益でもなく未成工事支出金の残高と前期比です。ここが売上の伸び以上に膨らんでいるとき、可能性は二つに絞られます。一つは受注が増えて立替が増えただけという健全なケース。もう一つは、赤字工事の原価がここに溜まっていて、まだ損として表に出ていないケースです。
後者は決算書の上では利益が出ているように見えてしまうので、数字だけ眺めていると見抜けません。だから面談では必ず「この未成工事支出金の中身を、工事ごとに分けて見せてください」とお願いします。工事別の実行予算と実際原価を突き合わせて、赤字が確定している工事がどれだけ含まれているか。ここが説明できる会社は、多少残高が膨らんでいても銀行の評価は落ちません。逆に「工事台帳はあるんですが、まとめては出せなくて」となると、健全な立替まで疑いの目で見られてしまう。もったいない話です。
もう一つ、完成工事未収入金と工事未払金の関係も見ます。完成工事未収入金が積み上がっているのに工事未払金も同じだけ積み上がっている会社は、入金の遅れを外注先への支払い遅延で吸収している状態です。これは資金繰りの改善ではなく、下請への転嫁でしかありません。建設業法第24条の3に照らしても望ましくないですし、外注先が離れれば施工能力そのものを失います。数字の上では回っているように見えるので、経営者本人が気づいていないことも珍しくありません。
公共工事なら、前払金と中間前払金で先に6割受け取れる
ここからは打ち手の話です。公共工事を受注している会社には、民間工事にはない強力な制度があります。前払金です。
国や地方公共団体などの発注機関は、工事の円滑・適正な施工を支援するため、請負代金額の一定割合(通常は4割)を前払いする制度を整備しています。この前払金は、公共工事を受注した建設業者が工事を続行できなくなった場合に発注者が支出した前払金が損失にならないよう、前払金保証事業会社が保証する仕組みになっています(「公共工事の前払金保証事業に関する法律」に基づく制度。国土交通省 関東地方整備局・2026年8月時点)。
さらに、あまり知られていないのが中間前払金です。当初の前払金(請負代金の4割)に加えて、工期半ばで2割を追加して受け取れる制度で、合計6割を工事の完成前に受け取れることになります。要件は次の四つです。
- 当初の前払金が支出されていること
- 工期の2分の1を経過していること
- 工期の2分の1を経過するまでに実施すべき作業が行われていること
- 工事の進捗出来高が請負金額の2分の1以上に達していること
この制度の何がありがたいかというと、借入ではないという一点に尽きます。利息もつかなければ、貸借対照表の負債にも載りません(受け取った分は未成工事受入金として計上されます)。資金繰りに効く打ち手のなかで、これほどコストの低いものは他にありません。
それでも「うちは使っていない」という会社が実際にあります。理由を伺うと、手続きが面倒そう、前払金の使途監査が厳しいと聞いた、という答えが返ってくることが多い。たしかに前払金には使途の制限があり、保証事業会社による監査があります。ただ、その手間と、資金が足りずに高い金利で借りる、あるいは工事代金を割り引いて現金化することの差を並べてみると、まず前払金から検討するのが順番として自然です。発注機関によって取扱いが異なる部分があるので、受注時に契約担当窓口で中間前払金の可否を必ず確認してください。
ファクタリングの前に、国の出来高融資制度を検討したか
建設業の資金繰りを検索すると、上位に並ぶ記事のかなりの割合がファクタリングか、不動産担保ローンか、請求書のカード払いサービスの運営会社によるものです。書かれている内容が間違っているわけではありません。ただ、自社の商材が答えになる記事は、その手前にある選択肢を丁寧には書かない——これは構造上そうなります。
その手前にあるのが、国土交通省が中小・中堅建設企業の資金繰り対策として設けている出来高融資制度です。二つの制度からなります。
| 制度 | 仕組み | 特徴 |
| 地域建設業経営強化融資制度 | 発注者に対して持っている工事請負代金債権を担保に、事業協同組合等または一定の民間事業者から出来高に応じて融資を受ける。さらに保証事業会社の保証により、出来高を超える部分についても金融機関から融資を受けられる | 出来高を超える部分まで対応できる |
| 下請セーフティネット債務保証事業 | 工事の出来高部分までの融資 | 出来高分までが上限 |
地域建設業経営強化融資制度は平成20年11月4日から実施されており、令和13年3月31日まで期間が延長されています(国土交通省・2026年8月時点)。運用面のポイントは次のとおりです(一般財団法人 建設業振興基金・2026年8月時点)。
- 対象工事:国土交通省や地方公共団体等が発注する公共工事、および社会全体の効用を高める施設に関する民間工事
- 対象企業:資本金20億円以下または従業員1,500人以下の建設企業
- 融資金額:(工事請負金額 × 出来高 - 前払金 - 違約金相当額)× 担保掛目
- 担保・保証人:不要。金融機関の借入枠がない場合も対応可、必要書類が少なく、低金利で迅速
- 手続きの流れ:融資事業者へ相談 → 融資申込み → 発注者へ債権譲渡承諾申請 → 債権譲渡契約締結 → 融資実行
そして、公共工事を受ける会社にとって決定的に重要なのがここです。この制度で調達した資金は、経営事項審査の経営状況分析における「負債回転期間」の負債合計額から控除することができます(建設業振興基金の公表内容・2026年8月時点)。つまり資金繰りのために調達したことが、経審の点数を直接押し下げない設計になっている。通常の借入では、こうはいきません。
制度の性格が違うものとして、下請債権保全支援事業もあります。こちらは融資ではなく、下請建設企業や資材業者が元請建設企業に対して持っている債権(手形を含む)について、ファクタリング会社が支払保証を行うことで債権保全を支援する仕組みです。平成22年3月1日に開始され、令和9年3月末まで延長されています(国土交通省・2026年8月時点)。元請の信用に不安があるときの守りの一手として、頭の片隅に置いておく価値があります。
誤解のないように書いておくと、私はファクタリングを一律に否定しているわけではありません。急場をしのぐ手段としては機能します。ただ、手数料は年率に引き直すとかなりの水準になりますし、繰り返し使うと利益が削られて、その削られた利益が翌年の決算書に出て、それを見た銀行の評価が下がる、という循環に入ります。順番として、前払金 → 中間前払金 → 出来高融資制度 → 金融機関のプロパー融資や保証協会付き融資 → その先、と検討していくのが筋です。プロパー融資と信用保証協会付き融資の違いは「プロパー融資とは|信用保証協会付き融資との違い」で整理しています。
ここで一度つまずくのが、「うちの工事はこの制度の対象になるのか」という判定です。発注者の性格、工事の内容、債権譲渡の承諾が取れるかどうかで結論が変わりますし、融資事業者との事前相談も要ります。ここで止まってしまうくらいなら、外の目を入れて一緒に判定してしまったほうが早い。当社では融資・資金調達の支援のなかで、こうした制度の当てはめから金融機関への説明資料の組み立てまでお手伝いしています。初回のご相談は無料ですので、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
借入は経営事項審査(経審)にどう響くのか
公共工事を直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査を必ず受けなければなりません。資金繰りのための借入がこの点数にどう効くかを気にされる社長さんは多いのですが、意外と正確な話が出回っていないので、国土交通省の手引きに沿って整理しておきます。
総合評定値(P)は次の算式で決まります。
総合評定値(P)= 0.25(X1)+ 0.15(X2)+ 0.20(Y)+ 0.25(Z)+ 0.15(W)
このうち財務内容が効くのが経営状況(Y)で、ウエイトは0.20、最高点1,595点・最低点0点、審査は登録経営状況分析機関が行います。Yを構成するのは次の8指標です(国土交通省 経営事項審査の手引き・2026年8月時点)。
| 区分 | 指標 |
| ①負債抵抗力 | 純支払利息比率/負債回転期間 |
| ②収益性・効率性 | 総資本売上総利益率/売上高経常利益率 |
| ③財務健全性 | 自己資本対固定資産比率/自己資本比率 |
| ④絶対的力量 | 営業キャッシュ・フロー/利益剰余金 |
8指標のうち、借入が直接効いてくるのは①の二つです。借りれば負債が増えて負債回転期間は伸び、支払利息が増えて純支払利息比率も悪化する。つまり資金繰りのための借入は、経審の点数という意味では確かに逆風になります。だからこそ、前払金・中間前払金という「借入ではない」手段が先に来るべきですし、出来高融資制度が負債合計額から控除できることの意味も大きいわけです。
ただ、ここで順番を間違えないでいただきたい。経審の点数を守るために資金繰りを危うくするのは、完全に本末転倒です。8指標には営業キャッシュ・フローと利益剰余金という絶対的力量の枠もありますから、無理に借入を圧縮して現場を止めるより、利益を出して剰余金を積むほうが本筋の点数対策になります。私は「経審のために借りない」ではなく「経審に説明できる借り方をする」とお伝えするようにしています。
建設業の資金繰り表は、普通の資金繰り表と何が違うのか
資金繰り表そのものの作り方は「資金繰り表の作り方」にエクセルのテンプレートつきでまとめてあるので、ここでは建設業だけの違いに絞ります。ポイントは一つ、月単位の集計だけでは足りず、工事別の軸が要るということです。
一般的な資金繰り表は、月ごとに入金と支出を並べて残高を追います。建設業でこれをやると、複数の工事の入出金が月の欄で混ざってしまい、「今月は苦しいが、来月あの現場の入金が入るから大丈夫」という感覚的な判断しかできなくなる。実際には、その入金が検査の遅れで半月ずれるだけで資金がショートします。
ですので、次の三つを足してください。
- 工事別の入金予定日。契約書の支払条件そのままではなく、検査・請求・締め日を踏まえた実際の着金日で置く
- 工事別の出来高と原価の進捗。未成工事支出金がどの工事にいくら溜まっているかを月次で把握する
- 前払金・中間前払金の入金予定。受け取れる時期を先に埋めておくと、借入の要否そのものが変わる
手前味噌になりますが、これは工事台帳をそのまま資金繰り表に接続する作業です。多くの会社では工事台帳は現場と経理が原価管理のために作っていて、資金繰り表は社長が別に作っている。この二つが繋がっていないことが、建設業の資金繰り管理でいちばんよく見る詰まりどころです。
資金繰りを立て直す順番はどうなるか
最後に、実際にご相談を受けたときにお伝えしている順番をまとめます。上から順にやってください。下のほうほどコストが高く、選択肢を狭めます。
| 順番 | やること | 効き方 |
| 1 | 工事別に未成工事支出金を洗い出し、赤字工事を特定する | 止血箇所の特定。ここを飛ばすと以下が全部効かない |
| 2 | 公共工事の前払金・中間前払金を取りきる | 借入ではない。利息ゼロ・負債にならない |
| 3 | 回収日と支払日をずらす | コストゼロ。同じ日に集中させない |
| 4 | 出来高融資制度を検討する | 低金利・担保保証人不要・経審の負債から控除可 |
| 5 | 金融機関へ運転資金を相談する | 説明資料の質で条件が変わる |
| 6 | 債権の早期現金化を検討する | 手数料が重い。繰り返さない前提で |
3番の「回収日と支払日をずらす」は地味ですが、コストがゼロなのに効きます。回収が月末締め翌15日入金で、労務費の支払いが25日なら間に合いますが、これが逆になっているだけでショートします。入金は早く、支出は遅く。手持ち資金が厚い会社ならそこまで神経質にならなくてよいのですが、立替の重い建設業では効きが大きい部分です。
5番で金融機関に相談するときの目安も書いておきます。私は運転資金は繁忙期3ヶ月分、年間の返済元金は簡易キャッシュフロー(営業利益+減価償却費)の5割程度までを一つの物差しにしています。これは公的な基準ではなく、審査の現場で見てきた感覚を数字にしたものですが、返済がキャッシュフローの9割を占めるような状態になると追加の融資はまず難しくなります。必要額の考え方は「運転資金の計算方法」に、相談先ごとの違いと回る順番は「融資の相談はどこにする?」にまとめています。
それから、資金繰りの相談として来られたのに、実は受注の問題だったというケースもあります。公共工事を主力にしている地方の建設会社で伺った話ですが、総合評価の点数も工事成績も良いのに、技術者が足りずに取れる仕事を取りきれていませんでした。測量から丁張り、出来形管理、写真、帰社後の書類までを一人で通せる技術者が育つのに5年から10年かかる。有資格でそこまでできる若手は人件費も高い。資金繰りが苦しい原因が、実は売上機会の取りこぼしだった。このパターンは建設業で本当によく見ます。数字の表面だけで判断せず、なぜ現金が足りないのかを一段掘ってから打ち手を選んでください。
よくある質問
ファクタリングを使うと、銀行の評価は下がりますか?
利用したこと自体が信用情報に記録されるわけではありませんが、決算書には表れます。売上に対して支払手数料や売上債権売却損が不自然に大きければ、担当者は必ず理由を聞きます。そのときに「一時的にこの現場の立替が重なったため」と工事別の数字で説明できるかどうかで受け止め方が変わります。隠すより先に説明したほうが、結果として印象は良くなります。継続的に使っている場合は、資金繰りの構造そのものを見直す相談として持ち込むほうが建設的です。
民間工事にも前払金の制度はありますか?
公共工事の前払金保証制度は法律に基づく仕組みで、民間工事には同じ制度はありません。民間工事で着手金を受け取れるかどうかは、あくまで発注者との契約交渉次第です。ただ、契約書に着手金・中間金の条項を入れておくかどうかで資金繰りはまったく変わりますので、受注時の交渉項目として価格と同じ重さで扱うことをおすすめします。国土交通省の出来高融資制度についても、社会全体の効用を高める施設に関する民間工事は対象に含まれています。
手形で受け取った工事代金は、資金繰り表にいつ計上すればよいですか?
入金として計上するのは満期日です。受取日ではありません。ここを受取日で入れてしまうと、資金繰り表が実態より2〜3ヶ月ぶん楽に見えてしまいます。なお建設業法第24条の6第3項は、特定建設業者が一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならないと定めています。割引が難しい手形を渡された場合は、その時点で取引条件そのものを見直す材料になります。
経営事項審査のY点は、借入を減らせばすぐ上がりますか?
負債回転期間と純支払利息比率は改善しますが、Yは8指標で構成されているため、借入圧縮だけで大きく動くとは限りません。自己資本比率や利益剰余金、営業キャッシュ・フローも見られます。また経審は決算数値をもとに審査されるので、効果が出るのは次の決算を経てからです。決算日直前に一時的に借入を返しても、事業に必要な資金を削っただけで終わることがあります。年間を通した利益の積み上げのほうが確実です。
資金繰りの相談は、税理士と中小企業診断士のどちらにすべきですか?
顧問税理士がいるなら、まず決算と試算表の話としてご相談ください。日々の数字をいちばん把握しているのは税理士です。そのうえで、金融機関にどう説明するか、どの制度を使うか、事業の構造をどう変えるかという段階になったら、審査する側の見方を知っている専門家を入れると話が早くなります。役割が違うので、どちらか一方という選び方をする必要はありません。公的な相談窓口としては商工会議所・商工会も入口として使いやすい相手です。
建設業の資金繰りは、根性や気合いで乗り切る話ではなく、立替構造をどう先回りして埋めるかという設計の話です。前払金を取りきり、工事別に数字を見て、公的な制度を順番に当てていけば、同じ受注量でも手元に残る現金はまったく変わります。当社は審査する側の視点を知っている元銀行員として、建設業の資金繰りと金融機関への説明を支援しています。これまでの支援実績は支援実績のページでご確認いただけます。まずは融資・資金調達の支援サービスをご覧いただき、無料相談はこちら(お問い合わせフォーム)からお気軽にご連絡ください。
監修:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査・経営改善支援に従事し、事業計画や決算を「審査する側」として100件超を見てきた経験を持つ。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県で融資・補助金・経営計画の支援を行う。本記事の制度情報は国土交通省・e-Gov法令検索・一般財団法人建設業振興基金の公表内容(2026年8月時点)に基づきます。制度の要件・限度額・期間は改定されることがあるため、実際の利用前に各公式サイトおよび発注機関・融資事業者の窓口で最新の取り扱いをご確認ください。
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