公開日:2026年7月1日 更新日:2026年7月12日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「チラシや看板、ホームページに補助金を使えると聞いたが、うちのような小さな店でも対象になるのか。いくらまで出るのか、申請書はどう書けばいいのか」。山梨県内の小規模事業者の経営者から、いちばん多くいただくご相談のひとつが、この小規模事業者持続化補助金です。
結論から言えば、小規模事業者持続化補助金は、従業員が数人までの小規模な事業者が、販路開拓(新しい客を増やす取り組み)に使える国の補助金です。2026年時点の一般型・通常枠は、基本の補助上限が50万円、補助率は3分の2。インボイス特例や賃金引上げ特例を使うと上限は最大250万円まで広がります。ただし、申請すれば必ずもらえる制度ではありません。近年の採択率はおおむね5割前後(第17回51.1%、第18回48.1%)で、以前より競争が厳しくなっており、書き方ひとつで通ったり落ちたりします。
はじめにお断りしておくと、融資の審査と補助金の審査は別物です。融資は「貸したお金がきちんと返ってくるか」を、補助金は「その取り組みに政策的な意義と実現性があるか」を見るもので、評価する主体も基準もまったく違います。ただ、どちらにも共通して効くのは「計画に書かれた数字に根拠があるか」を厳しく問う目です。私は元銀行員として長く事業計画を審査する側にいました。その経験と、中小企業診断士として実際に持続化補助金の申請を支援してきた現場から、「落ちない申請のつくり方」をお伝えします。
小規模事業者持続化補助金とは(2026年版)
小規模事業者持続化補助金(通称:持続化補助金)は、小規模事業者が自ら経営計画を立て、地域の商工会議所・商工会の支援を受けながら行う販路開拓の取り組みを国が後押しする制度です。ものづくり補助金が大きな設備投資を対象にするのに対し、持続化補助金は「チラシ・ホームページ・店舗の小規模改装・展示会出展」といった、身近な集客・販路開拓の経費が中心です。小規模事業者にとって、最初の一歩として使いやすい補助金といえます。
2026年7月時点で最新は、一般型・通常枠の第20回公募です。公募要領は2026年5月27日に公開され、申請受付は2026年11月5日から12月15日17時まで(予定)となっています。回によって要件が変わるため、申請する際は必ずその回の正式な公募要領を確認することが出発点です。
山梨の事業者が対象になる条件
「小規模事業者」に当てはまるかどうかは、常時使用する従業員の数で決まります。業種によって基準が違います。
| 業種 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(下記2つを除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 20人以下 |
ここでいう「常時使用する従業員」には、会社の代表者や個人事業主本人、役員、家族専従者、パート・アルバイト(一定の短時間勤務者)は原則として含めません。数え方を誤ると、対象なのに諦めてしまったり、逆に対象外なのに申請してしまったりするので、迷ったら申請前に商工会議所・商工会で確認してください。個人事業主も、法人も対象になります。
いくらもらえる?補助上限と補助率
一般型・通常枠の基本は、補助上限50万円、補助率3分の2です。つまり75万円の取り組みなら、3分の2の50万円が補助される計算です。そこに、条件を満たすと上限を上乗せできる「特例」が用意されています。
| 区分 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 基本(通常枠) | 50万円 | 2/3 |
| +インボイス特例 | +50万円 | 2/3 |
| +賃金引上げ特例 | +150万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) |
| 両方を併用した最大額 | 250万円 | 2/3(同上) |
インボイス特例は、免税事業者などから適格請求書発行事業者(インボイス登録)に転換した事業者が対象で、上限が50万円上乗せされます。賃金引上げ特例は、従業員一人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上引き上げるなどの条件を満たすと、上限が150万円上乗せされ、さらに赤字事業者であれば補助率が4分の3に上がります。
ここで一点、元銀行員としての注意です。賃金引上げ特例は「上限が増える」という魅力の裏で、達成できなければ補助金の返還につながる約束です。手元の賃金台帳で過去の推移を見て、3.0%の引き上げを本当に続けられるかを冷静に確かめてから使ってください。上限の大きさに引っ張られて無理な約束をするのは、後で自分の首を絞めます。
※補助上限・補助率・特例の要件・締切は公募回ごとに変わります。数値は、申請する回の正式な公募要領で必ずご確認ください(本記事は2026年7月時点・第20回公募をもとにしています)。
対象になる経費・ならない経費
持続化補助金の対象は「販路開拓(または販路開拓とあわせて行う業務効率化)」の経費です。代表的な区分は次のとおりです。
- 対象になりやすい:チラシ・パンフレット・広告掲載費、ホームページ・ECサイト制作費、店舗の小規模改装、展示会・商談会の出展料、看板設置、新商品の開発費、機械装置等の購入 など
- 対象にならない・注意:既存商品の仕入れや在庫、車両など汎用性の高いもの、人件費や通常の運転資金、補助事業と関係のない経費、交付決定前に発注・契約した経費
特に注意していただきたいのが、ホームページ・ECサイトなどの「ウェブサイト関連費」です。ここは近年ルールが変わった、いちばん誤解の多いポイントです。以前は「補助金交付申請額の4分の1まで」という割合の上限でしたが、現行の第20回では、ウェブサイト関連費の上限は「30万円(税込)」の固定額に変わりました。しかも、インボイス特例や賃金引上げ特例で全体の補助上限が250万円まで増えても、ウェブサイト関連費だけは30万円のまま据え置きです。さらに、ウェブサイト関連費だけでの単独申請はできません。「補助金でホームページを作りたい」という動機で相談に来られる方はとても多いのですが、この30万円の枠を知らないまま100万円のサイト制作を前提に計画してしまうと、資金計画が大きく狂います。ホームページは30万円までと割り切り、チラシ・看板・展示会出展など、ほかの販路開拓の取り組みとセットで組み立てる——これが現行ルールでの鉄則です(金額・区分は公募回で変わるため、必ず最新の公募要領で確認してください)。
申請書(様式2・3)の書き方と審査で見られる点
持続化補助金で提出する中心の書類は、経営計画書(様式2)と補助事業計画書・経費明細表(様式3)です。特別な様式ではなく、決まった項目に沿って自分の言葉で書いていく形式です。経営計画書は、大きく次の4つの項目で構成されます。
- ① 企業概要:何を、誰に、どう売っている事業なのか
- ② 顧客ニーズと市場の動向:お客様が何を求め、周りの市場はどう動いているか
- ③ 自社や商品・サービスの強み:他店・他社と比べた自分の売り
- ④ 経営方針・目標と今後のプラン:これからどうしていきたいか
この4項目を書いたうえで、補助事業計画書(様式3)で「今回の補助金で具体的に何をやり、その結果どんな効果が出るのか」を書きます。文章量に制限はなく、要点を押さえて、箇条書きや図表も使いながらわかりやすく書くのが基本です。
審査で落ちる申請の型と回避策
ここからが本題です。前述のとおり融資と補助金では審査の目的が違いますが、「審査する人が確認したい点に、的確な答えが返ってくるか」で評価が決まるという一点は共通します。実際に第18回の不採択案件を分析した経験も踏まえ、持続化補助金で落ちる申請に繰り返し現れる型を挙げます。良い商売をしているのに書き方で損をしている方が、本当に多いのです。
① 解決できない課題まで書いてしまう
経営課題を書くとき、今回の補助事業で解決できる課題だけを選びます。「職人が足りない」「立地が悪い」といった構造的な課題まで正直に並べると、審査員に「この事業者は大丈夫だろうか」という不安を与え、逆効果です。「認知度が低くSNSのフォロワーがほとんどいない」→「だからSNS広告で改善する」のように、課題と解決策がセットになるものだけを書きます。
② 主張に数字の裏付けがない
「リピーターが多い」「地域で人気」と書くだけでは、審査員は信じません。「常連が全体の約6割」「1日あたり平均◯人」と、概数でいいので数字を入れる。正確でなくても構いません。数字がひとつ入るだけで、計画のリアリティは大きく変わります。図表を添えるときは、そのデータから何を言いたいのかを必ず一文で補い、出典も明記してください。表を貼っただけで説明がないと、かえって評価が下がります。
③ 経費が事業に合っていない
ネットで拾った他社の申請書を真似た「横並びの経費」は通りません。実際、内容の良い計画でも、事業者に合わない経費構成(広報費ばかりが並ぶ等)で不採択になった例を何度も見ています。経費は、その事業者の取り組みの必然性から逆算してカスタマイズするのが原則です。「この課題を解決するには、この経費が要る」という筋が通っているかを、審査員は見ています。
④ 現状→課題→解決策→効果のストーリーが切れている
評価される計画書は、現状分析→課題→解決策→効果が一本の線でつながっています。単なる「売上を◯◯万円増やしたい」という目標ではなく、その数字に至る筋道が勝敗を分けます。①〜③がバラバラに書かれていて、最後の効果とつながっていない申請は、読み手に届きません。
⑤ 「地域や社会への貢献」が書かれていない
持続化補助金は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者を応援する制度です。自店の売上を伸ばす話だけでなく、その取り組みが地域のお客様や商店街、雇用にどう役立つのかを一言添えるだけで、政策目的との相性が伝わり、印象が変わります。
⑥ AIに書かせた文章をそのまま貼っている
ChatGPTなどで下書きを作る方が増えましたが、そのまま貼り付けると審査員には見抜かれます。強調記号(アスタリスク)が残っている、出典のない統計が並ぶ、妙に整った定型句が続く——こうした痕跡は逆効果です。AIは構成案や市場データの調べものに使い、最後は自分の言葉で書き直す。それが結局、いちばん伝わります。
山梨での進め方──商工会議所・商工会の「様式4」が必須
持続化補助金には、他の補助金と違う大事な特徴があります。それは、申請前に地域の商工会議所または商工会から「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらう必要があるという点です。これは、自分の経営計画を地元の支援機関に見てもらい、助言を受けたうえで申請するという制度の建て付けによるものです。
山梨県内であれば、事業所のある地域を管轄する商工会議所または商工会が窓口になります。どちらが担当かは地域によって決まっているため、まずは自社の所在地を管轄する窓口を確認してください。この様式4の発行には日数がかかり、締切も申請本体より早い(第20回では申請締切の11日前)ため、ぎりぎりに動くと間に合いません。まず経営計画書の骨子を作り、早めに地元の商工会議所・商工会に相談するのが、山梨で持続化補助金を使うときの基本的な進め方です。
採択率そのものを底上げする準備については、補助金の採択率を上げるために申請前にやるべき3つのことで詳しく解説しています。
申請から入金までの流れ
持続化補助金も、採択されて終わりではありません。全体像は次のとおりです。
- 事前準備:経営計画書の骨子作成、GビズIDエントリーの取得、賃金要件の確認
- 商工会議所・商工会に相談 → 事業支援計画書(様式4)の発行
- 電子申請(Jグランツ)で申請書を提出
- 採択発表 → 交付決定(ここで初めて発注・支払いが可能に)
- 補助事業の実施(チラシ作成・改装・出展など)
- 実績報告 → 補助金の入金(後払い)
補助金は原則「後払い」です。チラシ代も改装費も、いったんは自分で立て替え、実績報告のあとに入金されます。小規模な事業者ほど、この立て替えの資金繰りが負担になりがちです。手元資金が心もとない場合は、日本政策金融公庫の融資とあわせて考えると、無理のない計画になります。
まとめ──小さく確実に、最初の一歩に
持続化補助金は、山梨の小規模事業者が「新しいお客様を増やす」ための、いちばん身近な補助金です。上限は最大250万円まで広がりますが、多くの方にとっては基本の50万円でも、チラシ・看板・ホームページといった一歩を踏み出す十分な後押しになります。大切なのは金額の大きさより、現状→課題→解決策→効果の筋が通った、自分の言葉で書かれた計画書です。
池田計画合同会社では、「そもそも自社にはどの補助金が合うのか」というご相談から承っています。持続化補助金に限らず、事業の内容や設備投資の計画をおうかがいしたうえで、使える制度をこちらからご提案し、経営計画書の作成、商工会議所・商工会との調整、実績報告までワンストップで支援します。まずは補助金支援サービスをご覧ください。山梨県内で使える補助金を先に一覧で確認したい方は、山梨県の中小企業が使える補助金・助成金一覧もどうぞ。
経営計画書の書き方でつまずいている方、次回公募に向けて商工会議所・商工会との段取りから相談したい方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。現状の事業内容を拝見したうえで、申請の進め方をご提案します。
筆者:池田哲郎。元・八十二銀行にて法人融資の審査に長く携わり、山梨県事業承継・引継ぎ支援センターを経て独立。中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県内の小規模事業者の補助金・融資・経営計画を支援しています。
よくある質問
小規模事業者持続化補助金は誰でももらえますか?
いいえ。まず従業員数の要件(商業・サービス業は5人以下、製造業その他は20人以下など)を満たす小規模事業者であることが前提です。そのうえで審査があり、近年の採択率はおおむね5割前後(第17回51.1%、第18回48.1%)で、以前より競争が厳しくなっています。書き方によって採否が分かれます。
いくらもらえますか?
2026年の一般型・通常枠では、基本の補助上限が50万円、補助率は3分の2です。インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円が上乗せでき、両方を使うと最大250万円になります。金額・要件は公募回で変わるため、公募要領でご確認ください。
ホームページ制作だけに使えますか?
使えません。ウェブサイト関連費は単独では申請できず、現行の第20回では上限が30万円(税込)に変わりました。以前の「交付申請額の4分の1」から変更され、特例で全体上限が増えても30万円は据え置きです。チラシ・看板・展示会出展など、ほかの販路開拓の取り組みとあわせて申請する必要があります。
山梨ではどこに相談すればいいですか?
事業所のある地域を管轄する商工会議所または商工会が窓口です。申請には各機関が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、発行には日数がかかるため早めの相談が欠かせません。
補助金はいつ振り込まれますか?
原則として後払いです。補助事業(チラシ作成や改装など)を実施し、支払いを済ませ、実績報告が承認された後に入金されます。いったん立て替えが必要なため、つなぎ資金の準備も計画に含めてください。